ボク、魔王軍の下っ端のさらにずっとずっと下っ端の雑魚でぇす! シリーズ
ボク、魔王軍の下っ端のさらにずっとずっと下っ端の雑魚でぇす!
書いてみたくなりました。
――ぎぃぃぃぃいぃぃぃいいい。
大きな大きなドアがそんな不気味な音を立てながら開いた。
んで、少しだけ開いた隙間から四人の男女が、緊張した顔で入ってくる。
よし。
ここはカッコよく決めてやろうじゃないか!
そう思って入ったら直ぐに見える階段に、黒いローブを着て、それについてるフードをしっかりかぶって立った。
え?
ボクが何者かって?
ボクは魔王様の部下の手下の、さらに手下。
つまり三下の手下の手下の、さらにさらにそれよりもーっと下の、下っ端の下っ端の下っ端。
つまり、雑魚なのだぁ~!
「えー、こんにちわ。第何十組目かそこらの勇者様御一行様~! えっと、ボク。さんだーにょと、もうしまひゅ!」
あ、噛んだ。
せっかく腰に手を当てて胸張っていったのになぁ……。
ま、どうでもいいや!
「どうでも良くねぇよ、ぐだぐだじゃねぇか! この馬鹿たれ!!」
――――スッコーーーーン!!!!、
こ、後頭部が、痛い……。
てか、フツー履いてた靴脱いで(靴底と踵が鋼鉄製)、しかもその踵で人の頭、力いっぱい叩く?
ボクが人間だったら即死だよ?
「痛いじゃん、雑魚タコ長!」
そう言いながら振り向けば、そこには般若の仮面をつけたかのような上官が!
「だーれが『雑魚タコ長』だ! ダガル隊長って呼べっていつも言ってるだろう!!」
って、言いながら持ってた靴を床に下ろして、履き履き。
かっこ悪……!
でもさ。
タコ長は、魔王様の手下の手下の、三下のてしたのさらに下の下っ端の下っ端隊長だずうぇ?
「タコ長が雑魚なのは今に始まったことじゃないでしゅよ?」
そうそう。
隊長が雑魚なのは千六百八年前から変わんないもんね~。
そういう意味を込めてボクは小首をかしげる。
あ、ちゃんとオプションで頬に人差し指をあてて、当てた方に首を傾けたよ?
もちろん噛んだことは無視だぞ!
「いつも言葉ははっきり発音しろと言っているだろう! それが無理ならちゃんと言い直さんかこの馬鹿が!!」
たこちょーは、顔を近づけて怒鳴って来てる。
そのせいでボクの顔とか服とかに、唾がめっちゃ飛んできてるし!
「ちょ、ちょっとタコのまゆ焼き長~。近いし、唾がかかるし、しかもきーたーなーいお~!」
「お前は言った傍から! 『タコのまゆ焼き』じゃなく、『タコの丸焼き』だろうが!」
いちいち細かいなぁ……。
その頭に生えてる赤くて無駄に長い髪の毛全部むしっちゃうぞ?
あ、でも、雑魚長は人間じゃなくて、ボクと同じ魔族だったわ~。
…………すぐに再生するからつまんないや……。
「おい、サンダニオ。お前今、俺の髪むしってやろうとか考えただろ」
うわぁ……。
正解!
もう、三下の下っ端の下っ端の癖に勘だけは魔王様の手下並みに鋭いんだから!
まぁ、そんな上の方、ボクは見たことないけどね!
あ。
サンダニオって、ボクの名前ね!
以後、よろしく。
「もう、雑魚雑魚魚類はうるさいなぁ……少し黙ったら?」
「お前が黙れこの馬鹿が! あと俺は魚類じゃねぇ、魔族だ!!」
う~~~。
だぁかぁら!
いっぱい唾が飛んでくるだって!!
よし、もうこうなったら!
「あー、そーソウダッタネ! てことで、ゆーしゃ達排除しまーすよっと!」
えいやっと!
ボクは軽く掛け声を上げて、階段の上から跳ぶ。
「あ、こら! お前はそうやってすぐに逃げる!!」
「あははは! 何のこと~?」
ボク、しーらないっと!
はい。
音もなく勇者達の前に着地成功!
おぉ、そろいもそろっと目ぇ見開いて驚いてら!
もっと脅かして脅かして逃がしちゃお~。
にししししし!!
『ダガル隊長、マイファス様がお呼びです! 『すぐに第五執務室に来るように』との事です!』
当然ボクとタコちょー、何十組目かの勇者達が居る、魔王城玄関ホールに響いた声。
多分、ボクらの隊のうちで、魔術が使える奴がやったんだと思う。
誰がやったかなんて知らないけどさ!
「チッ、こんな時に……。サンダニオ! サボんじゃねぇぞ!」
たこ雑魚ちょー。
マイファス様って言ったら、魔王様の手下の手下の手下の方だよ?
舌打ちって、どうなのかな……。
ボク的にやばいと思うんだけど。
ま、ゆでダコ長がどうなろうとボクの知ったことじゃないから、しらな~い!
それに、勇者たちってめんどくさいし、適当で逃がして良くね?
めんどくさいよ……。
「え~~~~! どうっしょっかなぁ~」
なんて言いながら、首を左右に傾ける。
でも、ゆでだこ長は気に入らなかったみたい。
だって、軽く振り返って、射殺すような目で睨んでくるんだもん。
お~怖!
ふぷぷぷ!!
「サボってやがったら晩飯抜きな」
あはは!
怒ってる!
てか、そんなに低くい声だしたって怖くないし~!
…………ん?
あれ。
さっき真っかっかの雑魚タコ隊長はなんてった?
『晩飯抜き』?
って。
「えぇぇぇぇ?! なんで!!」
ご飯抜きって!
そりゃないよ!!
ボクの夕方の楽しみを奪うっての?!
「あ? いやなら仕事しろ。いいな?」
う……。
そんなこと言ったって、こいつら魔族がはびこってる森を抜けて来てるんだよ?
いやまぁ、はびこってるのは城にも入れない超雑魚なんだけどさ。
でも、結構いるよ?
群れで来るの。
倒してもまたすぐ再生するの。
すっごくめんどくさくって、テキトーやったら再生のエンドレス。
そ、死なないんだよ。
あの雑魚たち……。
消す方法は細胞を残さず消すことができる巨大魔法ぐらいかな?
ま、扱おうと思えば扱えるけど、めんどくさくて嫌んなっちゃうもん。
てことで、結論。
こうやって城まで来た勇者組は、結構めんどくさい。
その上、無駄に諦め悪いし、ウザいんだよ。
それと、今ボクの目の前に居る勇者たちは、すっごく顔引きつってるし……。
はい。
ボクの一言。
「めんどくさい!」
「よし。飯抜き」
そういって 一つ頷いてさっさと歩き出したタコ雑魚くそ隊長。
あれ?
あいつ、今なんてった?
「……うわぁぁぁぁぁあああ! 待って待ってごめんなしゃいごめんなさい!! ちゃんと仕事します! 本気でふざけてすみませんでした!! だからご飯抜きだけはやだあぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
勢いよくその場から走り出して、ボクは隊長の前に行って土下座。
でも隊長はサッとよけて歩いてく。
「待って! 待って隊長!!」
ガシッと掴んで引き寄せたのは、ボクの横を通り過ぎようと隊長のだした足。
「うわ! この馬鹿!」
「へ……? あ……」
ぐらっと体が前に。
――ゴッ……。
あちゃぁ……。
隊長、ボクのすぐ横で両膝、したたかに打ったみたいだね。
顔は……うん。
手をついてガードしたっぽい。
残念……。
つまり、今隊長の体制はまさに腕立て伏せ!
やばい。
笑いが――。
「よほど飯抜きにされたいと見える……」
そう言ったのは無様に転んだ隊長。
あ。
本気で怒ってるっぽい、だって隊長から冷気漏れてるもん……。
目が、表情が、すっごく冷たいんだ!!
や、やばいよ?
本格的に、や・ば・い!!
「え? い、いやだな、隊長。じ、事故。そう! 事故ですよ!! ね? ね?」
「…………バイアズ! サンダニオの晩飯と明日の朝飯抜きだ!!」
『あ、隊長。了解ッス』
と、隊長の言葉に反応するだるそうな声。
この声はバイアズだな!
あ、彼はボクの友達で、料理がとってもおいしい。
だから、ボクらの隊の食事を用意してくれる。
ん?
てことは、隊長が直接バイアズに言ったってことは……。
「うわぁぁぁぁぁぁ! 了解するなよ、バイアズぅぅぅううぅ!!」
『じゃ、なんか馬鹿が言ってるみたいッスけど、切るッスね?』
「あぁ。頼んだ」
「いやだぁあぁぁぁあ! ボクの日々楽しみが、生きがいがぁぁぁぁぁぁあああ!!」
ぢぐしょぉぉぉおお!
――ドンドンドン!
こいつらは有言実行なんだよぉぉぉぉ!!
やるっていったら絶対やるんだ!
うわぁぁぁぁああぁぁああ!!
もう、床がヒビだらけになっても知らないんだからなぁ!
うわぁぁぁああぁん!!
「行かないでぇ! ボクのごはん~~~~~!!」
そう言って隊長が羽織ってるマントに手を伸ばすけど、掴めなくて、さっさと隊長の姿は見えなくなった。
――結局、ボクは部屋に置いといたお菓子を頬張って、お昼まで我慢しました。
泣きそうだ……。
しかも、勇者たちは逃げたっぽい。
え?
なんで知ってんのかって?
食堂でお昼ご飯食べ終わって。
るんるん気分で廊下歩いてたら、隊長とばったり会って。
今、三時間目に突入した鬼タコ雑魚隊長の説教を受けてるからさ!
まったく、舌が良く回るよね。
隊長って。
二枚舌なのかな?
うわぁ、ぶっきみぃい!
「サンダニオ……?」
あれ?
さっきまでと比べたらすっごく声が低くなったよ?
冷気も出てるの。
なんで?
「は、はいなんでしょしゅか、体調」
「あ?」
うわわわ!
噛んだし、間違えた!!
冷気がさらに冷たくなったよ?!
ここは素直に!
「はい、なんでしょうか。隊長」
「……何百回も言っているが、お前は魔術、剣術、体術。すべてにおいて優れているんだ。だからしっかり仕事しろ。良いな?」
うぇ……。
めんどくさぁ……。
でも、伊達に何百回も怒られてないもんね!
だからここは素直にうなずくのさ!
「はい。すみませんでした」
「次からは気をつけるように。行ってよし」
「はい……。ありがとうございました」
イヤッホーイ!
さっさと離れて持ち場につこっと。
それに、勇者ってあんまりこっちまで来ないんだよね……。
外で皆頑張ってくれてるから、ボクはすっごく楽ちんさ!
さて。
ヤなこと忘れて玄関ホールでお昼寝だ!
楽しんでいただけましたでしょうか?
ついでに、この物語はとっさに書きたくなって書きました。
それと、
書いてて主人公が馬鹿すぎる気がすっごくしました。(笑)
感想か何かあれば嬉しいです!
以上。
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございました。