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猫とまぐろ。

作者: Aru


僕のご主人は今日も仕事でいない。


僕の大好物はまぐろ。

ご主人は一ヶ月に一度まぐろのお刺身を買ってくる。僕はいつもそれを楽しみに待っている。


あの艶やかな赤身、

あの鼻をくすぐる様なにおい。

考えるだけでお腹が空いてくる。




最近はご主人の帰りが早い。

僕はそれも楽しみにしている。


ご主人は早くに帰ってくると、僕と遊んでくれる。


でも、ご主人は僕と遊んでいるときも暗い顔をしている。


僕はそんなご主人の笑う顔が見たくて

色んなことをしてみたけど、ご主人はずっと暗い顔のままだった。



そんな状態が数ヶ月続いた。



ご主人は、まぐろを買わなくなった。

それに、ご主人の家の郵便受けは

隙間ひとつ感じさせないくらい紙が詰まっていた。


ご主人は、数ヶ月前に比べてとても細くなっていた。僕のことを見てはうわごとのように


「ごめんな。」


そう呟くだけだった。



ある日、ご主人は僕に言った。

「久し振りにまぐろ、買いにいくか?好きだよな。」



嬉しかった。


ご主人が前みたいに僕に笑いかけてくれたことが。



久し振りの外は異様に緊張する。

ご主人はまぐろをいつもよりも少し多めに買っていた。


そして、車に乗って家に帰る。



……はずだった。



ご主人は、まぐろを買いに来たときの時間よりも


少し長く車を走らせていたような気がする。



僕がうつらうつらしているとき、

ご主人は僕のことを優しく抱き上げた。

僕のことをたくさん撫でてくれた。


僕もご主人の手や顔を舐めたり

体を擦り付けたりした。



しばらくして、ご主人は

僕の食器とまぐろを出した。

あらかじめ持ってきた水とまぐろを僕の食器にいれた。



久し振りのまぐろに僕は夢中でかぶりついた。



ふと、車のエンジン音で我に返った。






ご主人がいない。




周りを見渡してみても、人の影すら見当たらなかった。



捨てられた。


そう理解するのに時間はかからなかった。



それでもご主人は

きっといつか迎えに来てくれる。


そう信じていたかった。



でもご主人は、一週間以上経っても迎えに来てくれない。



僕の体はもう、手も、足もうごかせなくなっていた。

目の前が少しずつぼやけてきた。


それに寒くなってきたな。

雨が降ってきたせいかもしれない。




ご主人と初めて会ったときもこんな雨が降っていたな。




きっともうすぐでご主人が迎えに来てくれる。




あの時みたいに。








この話を読んでくださってありがとうございました。


この話を読んで、生き物を飼う責任感をもっと強くもってもらえたらな、と思います。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 改行が多過ぎる [一言] 猫の視点からの描写ですが、世界観がわかりやすく とても切なくなりました ただ、後書きがない方が主張は伝わると思います
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