●求人誌
後ろからの声に二人はビックリした。後ろを向くとそこには山本先生が立っていた。ちなみに体育教師並みの体系をしているので、ガッチリしていて大柄だが、担当科目は意外にも国語。
『バイト、したいんで、許可ください。』
一斗がためらいもなく言う。
『ダメ。』
即答の返事に一斗は。
『どうしてですか?』
『バイトなんかする必要ないだろう。学生は勉強が一番だからな。』
『先生。オレ、学年1位ですけど……』
母の教育のおかげで頭はイイ一斗。
『ん……なら、明日、書類を用意しておくから、書いて提出しなさい。それから許可をもらうまでは絶対にするなよ。』
自分で思い描いていた通り、あっさり担任の許可を得た一斗だった。
あっさり許可を得た一斗はルンルン気分だった。
『一斗、嬉しそうだな。まだ正式に決まっていないのに。』
『いやいや、決まったも同然だけどな。』
許可をもらったかのような浮かれようだ。
『オレのおかげだな。』
好意をよせている先輩に話しかけるきっかけをもらった側なのに、自分のおかげで、許可をもらえたかのような発言をする眞一郎。
『ま、一応そうなるか。それにしてもお前、ホント年上好きだよな。』
『それは気のせいだ。単なる偶然。あ、求人誌いるだろう?』
話しの内容を変えたかった眞一郎はコンビニを指差しして聞く。
『一応、取って帰って、どんなものがあるかチェックしといた方がいいか。』
『取って来てやるよ。外で待ってな。』
眞一郎は小走りでコンビニに入って行った。一斗はゆっくり歩いて数メートル先のコンビニに向かった。すると、二人乗りをしたオートバイが一斗を抜いて行き、コンビニの前で停まった。そして、後ろに乗っていた人が降り、コンビニに入って行った。
バーンっと、大きな音が辺りに響き渡る。一斗は、立ち止まり、辺りを見渡した。そして、オートバイのナンバープレートが無いことに気づき、コンビニへと走った。すると、黒の鞄を抱えた先ほどのオートバイの人が出てきた。そして、警報が鳴り、鞄を持った人はオートバイに乗り、走り去った。一斗も急いで中に入ると、眞一郎がレジ付近で倒れていた。
『シン。大丈夫か?』
駆けよる一斗。そして、眞一郎の身体を揺さぶると、白いシャツが赤く染まっているのに気づいた。すると、中にいたコンビニ客がケータイで、救急車を呼んでいた。
『キミ、この子の友達?』
と、尋ねられた。しかし、目の前の状況に同様してか、必死に眞一郎に話しかけることしかできず、答えることができない。
『シン、どうしたんだよ。この血。』
『わ、りぃ…きゅう、じ、ん、よごし、ち、まっ、た……』
必死に声を絞り出す眞一郎。手には大事に求人誌が握られていた。次第に顔色も悪くなっていくのがわかり、一斗はさらに取り乱す。
『求人誌なんかどうでもいい。もう、喋るな。気をしっかり持て。』
必死に声をかけ続けた。