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○決心

 父は母の悲鳴にあわてて一斗の部屋から飛び出した。一斗は気にすることなくベットに寝転がった。父の言葉があまりにも予想外だったため、頭の中が少し混乱している。その時、部屋の戸がノックされた。部屋の戸は開いているままだったので、一斗が視線を向けると執事が立っていた。

『なに?』

『一斗様。本日、子犬を連れて帰りませんでしたか。』

一斗は執事の質問に先ほどの母の悲鳴の意味を理解した。そして、ベットから起き上がり、部屋から出た。

『で、どこにいるの?』

『はい。キッチンに。』

『ありがとう。』

一斗はキッチンへと向かった。また、ガミガミ言われると、思いながら。


 一斗がキッチンに着くと、母が父に抱きついていた。そして、メイドが子犬を抱きかかえていた。一斗はそのまま子犬をメイドから引き取ると、その場を跡にしようとした。

『一斗。どこに行くの。何か言うことがあるんじゃない。無断でそんな汚いものを家に入れて。』

母の言葉に一斗は立ち止まる。汚いものと言われ、頭にきたが、グッと我慢をして、また、無言のまま歩き出した。

『待ちなさい。』

母は一斗を追った。そして、一斗の前に立つと、一斗の左頬を叩いた。バチーンっと言う音が響く。しかし、一斗は母を見ることなく自分の部屋へと歩きだした。しかし、母はまたしても、一斗を追い越し、前に立った。

『なぜ、何も言わないの?何か言いなさい。子どもじゃないんだから自分のしたことぐらい分かるでしょ。』

『………………うるさい。』

一斗は小声で呟く。

『なに?聞こえないわよ。』

『落ち着け。あんまりガミガミ言うな。』

父が母を止めに入る。

『あなたは黙ってて。一斗、はっきり言いなさい。』

『黙れ。オレのすることに口だすなって言っただろ。こんな家、今すぐに出て行ってやる。』

一斗は子犬を抱えたまま走り出した。

『待ちなさい。』

母も一斗を追おうと走りだそうとしたが父が止めた。

『わたしに任せて。』

そして、父が一斗を追った。


 一斗は子犬を抱えたまま家の近くにある公園へ来ていた。ベンチに座り、星を眺めた。すると、子犬は一斗に抱かれたままだったので、一斗の手をペロペロと舐め、地面へと飛び降りた。一斗は子犬を目で追った。そして、誰かが近づいてきた。辺りは薄暗かったので誰なのか分からない。子犬は近づいてくる人へと走ってかけよった。一斗はその人を睨みつけた。

『やっと見つけた。』

その人は子犬を抱きかかえて一斗に近づいた。一斗の目の前に現れたのは父だった。

『手ぶらでは何かと不便だろう。これをお前に貸してやる。』

父は銀行の預金通帳とカード、ハンコ、家の鍵らしきものを目の前にだした。

『何コレ。』

『見ての通りだ。お前のことだ。やるって言っても受けとらんだろう。だから貸してやる。まぁ、返さなくてもかまわないがな。』

なぜか嬉しそうに言う。

『借りるだけだからな。』

一斗がテレながら受け取ろうとすると、上にあげた。

『ただし、条件がある。今、通っている学校だけは必ず卒業しなさい。高校ぐらいはちゃんと出ないと今の世の中、何かと不便だしな。』

『分かったよ。』

一斗の言葉に父はニコッとし、通帳などを渡した。


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