○慣れ?!
放課後になり、眞一郎がよってくる。
『ちゃんと、考えたか?』
ニコニコしながら話しかけてくる。
『考えた考えた。』
適当に返事をする一斗。
『考えてないだろう。返事が適当過ぎる。』
『考えたよ。だから、18時にオレの家に集合な。』
と、鞄を持ち教室から出る一斗。
『あ~、ちょっと待てって。』
慌てて追いかける眞一郎。
一斗に追いつくと、横に並んで歩き出した。
『一緒に帰ろうぜ。途中まで。』
『断る。』
即答で返事をする一斗。ただ、一人になりたいだけの理由で。
たが、眞一郎は聞いているのか聞いていないのか分からないが話を進める。
『で、どこに決めたの?』
『……………。』
黙々と歩く一斗。
『どこの、ファミレス?それとも………。』
淡々と高校生らしい飲食店の名前を言うのだった。
『じゃ、18時に。』
と、ようやく話したかと思ったら眞一郎と分かれる場所だった。
『あぁ。』
と、一斗の後ろ姿をボーっと見る眞一郎。
その表情は何か悲しそうな顔をしていた。そして、自宅に向けて歩き出した。
約束の18時より、少し前の時間。
眞一郎は一斗が住んでいるマンションの入り口前にいた。
しかし、それ以上前に進めないでいた。
中に入るには部屋番号と暗証番号の入力が必要だからだ。当然、住人以外が入るにはその部屋のチャイムを鳴らし、中から開けてもらうしか方法がない。
眞一郎は後者で中に入ろうとしたが、一斗から全く返答がなかった。
そして電話をかけたり、メールを送ったが無反応だった。
仕方がないので入り口の前で座り込んでいた。
その時、入り口が開き、一斗が出てきた。
『何してたんだよ?』
立ち上がり興奮気味に話す眞一郎。
『何が?』
何事もなかったように話す一斗。
『今まで!!』
『家で準備していたに決まっているだろう。だいたい、今、こうして時間通りに出てきてるんだから。』
眞一郎の発言に全く理解できていないものの、とりあえず答える一斗。
『家にいたのか?』
一斗の言葉を聞いて、少し冷静になる。
『当たり前だろう。じゃなかったら準備できないし、マンションから出て来れないって。』
眞一郎の意味の分からない発言にだんだん腹が立ってきたが我慢して話す。
『なら、何で部屋のチャイム押しているのに反応ないんだよ?』
『鳴ってないから。』
だんだん眞一郎が興奮している理由が分かってきた一斗はこれ以上相手にしない方がいいと思い、歩き出した。
その姿を見て、慌てて追いかける眞一郎だった。