○布団で
どんなに眠たい状態で布団に入っても少し身体を動かすことにより、寝られるはずもなく、しばらく、無言が続いた。
一斗は眠ろうと目を閉じて、何も考えないようにしていた。
しかし、眞一郎の方は耐えられなくなっていた。
『一斗。もう、寝た?』
と、一斗の方に身体を向けて話しかける。
『…………。』
ここで話しだすと長くなると思い相手にしない一斗。
『おーい。一斗。起きてるんだろう。』
しつこく話しかける。
『…………。』
全く相手にしない。
しばらく繰り返された後に、一斗が絶えられなくなり、返事をした。
『寝てるからじゃまするな。』
『やっぱり起きてるじゃん。』
と、眞一郎は身体を起こし、横になっている一斗の上に乗った。
『うわ。何してんだよ。』
と、目を開けて薄暗い中でも見える眞一郎を睨みつける。
『いいじゃん。』
と、笑顔で言う。
『何がいいんだよ。』
と、無理矢理、眞一郎の布団へと倒した。
そして、眞一郎に背を向け眠ろうとした。
倒された眞一郎は再び布団に戻り、一斗の方に向いて横になった。
『あのさぁ、一斗、まだ気にしてるだろう………。』
その言葉にハッと目だけを開ける。
『…………何を?』
無言の間をおいて聞く。
『コンビニ強盗の事件。』
『……気にするに決まってるだろう。あんなケガまで負わされたんだから。普通、心配しない方がおかしいだろう。』
一斗は自分のせいでケガを負わせてしまった事を気にしていたが、眞一郎にそう悟られたくなかったので事件でケガを負ってしまった事を気にしていると言うつもりで答えた。
『そのケガを自分のせいで負ったと思っているだろう。』
『…………。』
図星なので答えることができない。
『やっぱりな。一斗は本当に気にしなくていいんだぜ。ケガをしたのはオレのせいだし、運も悪かっただけなんだから……。』
声のトーンが段々ハリのある声から柔らかくなっていく。
『………………。』
全く言葉が出てこない一斗。
『警察の人から事件の話し聞いているんだろう?あの話しを聞いて一斗が自分のせいだと思わないはずがないからな。』
『何でそんなことが分かるんだ。』
眞一郎の言葉に一斗がようやく返事をした。
『一斗はオレの大切な友達だから。』
一斗には背中を向けていても眞一郎の表情が目に浮かんだ。
『……それはお前が勝手に言ってるだけだろう?』
『そうだよ。でも、一斗のとった行動によってオレの命はここにある。友達じゃないと必死に助けてなんかくれないよ。一斗わ。』
その言葉に一斗の目に涙が溜まる。
目に涙が溜まっていることに気が付いた一斗は、必死に堪える。
このまま泣いてしまうと眞一郎の言っていることを認めてしまうことになってしまうと、とっさに感じたからだ。
『一斗。ホントにありがとう。』
その言葉に一斗のリミットは超えた。
次から次へと涙がこぼれ出す。それを眞一郎にバレないよに必死に息を殺す。
『オレは一斗の事、今まで一番大事な友達だと思うから。』
『好きにしろ。オレは寝る。』
声を振り絞って言うと、頭まで布団を被った。
そして、自然と眠りについた。