○公園
このまま黙っていれば、この場は何事もなく終わったのに、一斗が余計な一言を言った。
『別にオレは守ってなんかもらってねぇ。』
この言葉に足を止め振り返る島田。
『弱虫の遠吠えか?』
『誰が。弱虫はお前だろう?集団でしか行動ができない弱虫共。』
さすがにここまで言われて黙っていられるはずもなく、島田は一斗に近寄り、胸ぐらを掴んで殴ろうとした。
『島田さん。落ち着いて下さい。』
と、島田をなだめる子分の一人。
『今日は許してやる。』
一斗をおもいっきり睨みつけて、先ほどと同じように歩き始めた。
『お前、アイツさえいなかったら命なかったんだからな。』
と、疑問の残る言葉を残して島田の後を追う子分。
しかし、今の一斗にはアイツと言うのが石井の事なんだろうと思っていた。
『一体、アイツらは何が目的なんだ。』
島田達の行動に理解できず、腹が立っている。
そして、家に帰るのをやめ、適当に歩き始めた。
眞一郎と約束していた時間が迫っているのを忘れて……。
かなりの時間適当に歩いていると、辺りは暗くなり街灯が照らさていた。
その中で、全く来たことのない初めて見る公園を見つけた。そして、何気なく薄暗い中を見ていると、街灯に照らされているベンチで視線が止まり、その瞬間、あの日の事を思い出した。
家を出る事を決め、父に相談した時の事を。
この事を思い出したせいか、自然と公園の中に足を運び、無意識のうちに見ていたベンチに腰掛けた。
時間も遅いと言う事もあってか、公園内には散歩で通過する人ぐらいしか居ない。
空を見上げると、うっすらと雲がかかっているので、星は見えなかった。父と見たあの日の星を見ようとしたが……。
そして、しばらくボーっとしていた。時間が気になってケータイを見るまでは……。
時間を確かめようとケータイを見ると、眞一郎から数十件の着信があった。
それを見た瞬間、一斗は真一郎との約束をようやく思い出した。
慌てて眞一郎に電話をする一斗。
『一斗。お前、どこで何してるんだ。』
電話の向で怒鳴る眞一郎。
『ごめん。いろいろあって忘れてた。』
平謝りする一斗。
『もういいけどさぁ、そこにいるんだよ?』
あっさり許した眞一郎。
『知らない公園。』
辺りを見渡し答える。
『知らない公園って……。何してんだよ。』
『とにかく今から待ち合わせ場所に行くから。』
と、電話を切った。
そして、とりあえず来た道を小走りに引き返す一斗。
しかし、ボーっと歩いていた事もあって途中から分からなくなり、迷う一斗だった。