○学校で
しばらく、一斗は眞一郎の部屋で雑談をしていた。
雰囲気を壊さないように明るく普段通りに。
そして、面会時間終了の時間が近づいていたので一斗は帰る事にした。
帰り道、一斗は買い物から戻ってきた時の眞一郎の悲しそうな顔が気になっていた。
警察の人に何か言われたのかなど、いろいろ考えたが全く分からなかった。
翌朝、学校に行くと、眞一郎の話題で持ちきりだった。
一斗にしてみれば耳障りな話題でしかすぎなかった。
当然、たまたま目撃した人物もいるわけで、一斗のことも口にするヤツもいた。しかし、一斗は自分の事は何を言われても気にもならなかったし、しなかった。
周りの人間も空気を読んでか一斗に話しかける者はいなかった。もともと、あまりクラスに溶け込んでいなかったこともあって、一斗と皆、距離をおいていた。
しかし、空気を読めないヤツはいるもので、一斗に話しかけて来た人物がいた。
『オイ。大事な友達を死に追いやった気分はどうだ?』
話しかけてきたのはクラスメートではなかった。
一斗はチラっと見るなり、教室から出て行った。
話しかけてきたヤツは一斗のその姿を見て追いかける。教室を出ると、話しかけてきたヤツの仲間らしき者が数人いた。そして、一緒に一斗の後を追った。
一斗は屋外に行き、ひと目の付かない場所で立ち止まった。
『なにかようですか?先輩方。』
一斗に話しかけてきたのは三年の島田 竜で、以前から一斗に対して目を付けていた。一斗が自分の家柄などを自慢していると、絡んできたりしていた。一斗の性格上、自慢をするはずもなく、自分から絡んだりするはずもないので、島田の一方的な嫌がらせにすぎなかった。
『お前に用事なんかねぇよ。ただ、大事な大事な友達を死に追いやった感想が聞きたくて、わざわざ来てやったんだよ。』
イヤミを存分に含んで話す。
『話しはそれだけですか?』
表情一つ変えずに冷静に話す。
『質問してるのはオレなんだから、お前はオレの質問に答えろよ。』
一斗の態度にかなりイラ立ちを見せている。
『会話ができないみたいなので、これで失礼します。』
その言葉を発すると、一斗は校舎の方へと歩き出した。しかし、当然すんなり歩いて行けるはずもなく、一斗の目の前にいつも島田の周りに一緒にいる連中が立ち塞がった。
『通れないので、退いてもらえないでしょうか……。』
相手を睨み付けながら言う。
『誰が帰っていいって言ったょ?早く質問に答えな。』
一斗の真後ろに立ち、島田が言う。
『答える義務もないし、バカとこれ以上話したくないので。』
振り返り睨み付ける一斗。
その言葉にとうとう頭にきた島田は一斗の胸ぐらを掴んだ。