○病院へ
まず、眞一郎からのメールを確認した。
『一斗。ありがとな。』
と、だけ、書かれてあった。そのメールを見て、一斗の目には涙が溢れ出した。すぐに返信したいのに、涙が止まらないので、文を書くことができない。涙を拭くが、止まらない。しかたないので、ティッシュを片手に返信文を入力する一斗。
『意識が戻ったのか?』
と、だけ……。
そして、すぐに病院に電話をした。
やはり、病院からの電話は眞一郎の意識が戻ったことでの電話だった。
一斗はすぐに病院に向かう支度を始めた。今すぐにでも眞一郎に謝らないといけないと思い……。
支度ができると、タクシーを呼んだ。
そして、病院に向かうタクシーの中で、父に電話をした。
『もしもし。父さん。』
『一斗。友達の意識が戻ったと、病院の方から電話があったぞ。』
興奮気味に話す父。
『うん。今向かってる。さっき、起きて、病院に電話して聞いた。』
父に申し訳ない気持ちで伝える。
『そうか。よかったな、大切な友達の意識が戻って。』
普段、話すときと変わらないトーンになる父。
『うん。ありがとう。いろいろ迷惑かけてごめん。』
『気にするな。それより、友達が退院したら、その友達と一斗と、父さんで食事でも行こう。父さんに、一斗の友達を紹介してくれ。』
『うん。分かった。』
少し嬉しそうに話す一斗。
『じゃあ、夜中だから、帰る時、気をつけて帰れよ。』
『分かった。ありがとう。』
この言葉を最後に電話は切れた。
やはり父からの電話は、連絡が取れない一斗に、眞一郎の意識が戻ったことを伝える為の電話だった。
そうこうしていると、タクシーは病院に着いた。
一斗は走って、病院内に入る場所を探したがどこも閉まっていた。当然、救急でない限り、夜中に病院内に入れるはずがない。
仕方がないので、病院に入れてもらう為に電話をする。
が、入れられないと、断られる。一斗は、入れてもらえないことに怒りを感じながらも、自分を責める気持ちも同時に芽生えた。
仕方がないので、病院の敷地内をウロウロし、ベンチを見つけ、そこに座った。
しばらくボーっとしていると、座っているのもしんどくなってきたので、仰向けに寝転がった。
空を見るとキレイな星空が広がっている。その光景を見ると、次第に自分を責め始めた。
もっと早く起きて、病院からの電話に気付けていれば……。
バイトの求人誌を自分でコンビニ取りに行ってれば……。
そもそも、バイトを始めようと思わなければ……。
むしろ、一人暮らしを始めなければ……。
と、眞一郎が大怪我をした原因が全て自分だと責めるのだった。
しばらくすると、一斗はそのまま眠ってしまった。
『一斗クン。一斗クン。』
一斗の身体を擦りながら起こしている。しかし、なかなか起きない。
目を覚ます一斗。
一斗の視線の先は見知らぬ天井だった。