表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/27

●ウソ


 コンコン。

『失礼します。』

ノックをし、ドアを開けて診察室に入る看護士。

『宮野様のお友達をご案内してきました。』

医者に言う。そして一斗も入る。



 一通りの説明が医者からされ、一斗の表情が険しくなった。

眞一郎は銃弾こそ貫通していたものの、出血がひどく、おまけに搬送まで時間がかかったため、治療が遅れた事も原因して、現在、意識不明の重体になってしまった。

さらに、警察官からの話しもあり、その話しにも一斗はショックを受けた。

眞一郎の家族は2ヵ月ほど前に全員事故で亡くなっていた。眞一郎の両親、弟の二人の4人で、眞一郎を除いて家族旅行に行っていた時に、大型トラックと正面衝突をしていた。

しかし、眞一郎はその事を学校の先生にまで口止めをして黙っていた。もちろん、一斗にも言わずに。



 再び一斗は眞一郎がいる集中治療室に戻った。

眞一郎に声をかける事なく、椅子に腰かけたままうつ向いていた。

どうしていいか分からず、ただただ、下を向いて、自分を責めていた。疑問を抱きながら。



 『鈴元クン。』

左肩をポンポンと叩かれる。

一斗はそのまま眠ってしまっていた。

『あ、すみません。』

そのまま眠っていた事を謝る。目をこすりながら声の主の方向を見た。

そこに立っていたのは一斗を叩いた看護師だった。

『なぜ、謝るの。謝るのは私の方なのに。さっきは叩いたりしてゴメンなさい。腫れたりしてない。』

『さっき?』

一斗は看護師の話しに対して疑問をもった。そして、ケータイを取りだし、時計を見た。かなりの時間眠っていると思っていたが、実際には数分しか眠っていなかった。

『ダメよ。病院でケータイはNG。』

『すみません。今すぐ電源切ります。』

一斗はケータイの電源を切ると、立ち上がった。

『一つ質問いいですか。』

下を向いて話し出す一斗。

『なに?』

『人は何でウソをついたり、隠し事をするんですか。』

眞一郎が自分に隠し事をしていた事に対して疑問を抱いていた。自分には何でも話してくれると信じていたのに、何も話してくれていなかった事を。警察官からの話しを聞いてから悩んでいた。

『ん~、難しい質問ね。あなたの期待している答えになるかは分からないけど、これだけは言える。』

『何ですか。何でもいいので、話してください。』

顔を上げ、看護士を見る。

『ウソには三つの種類があると私は思うの。一つ目は、相手を困らせたり、悪意を持って騙したりするウソ。例えば、振り込め詐欺。知らないはずの人の家に電話をして、身内の人間になりすまし、電話に出た人にウソをついてお金を騙し取る犯罪。二つ目は、とっさに何も考えないで、ついてしまうウソ。何か悪いことをしたり、人の悪口を言っている時にその人が現れて、それを隠そうとするウソね。一斗クンも、これならしたことがあるんじゃない。』

二つ目までを話し終え、一斗に質問をする。

『ないって、言ったらウソになります……。』

下を向いて答える。

『なら、何でウソをついたの?』

再び聞く。

『怒られたり、仲が悪くなるから……。』

『そうね。だったら、一斗クンの質問の答えは自分の中で出てきてるんじゃない。』

『いや、でも、眞一郎のウソは違うような……。』

『違うわね眞一郎クンのウソは三つ目のウソ。一斗クンも分かってるんでしょ。』

この言葉を聞いて、一斗の目から、涙がこぼれ始めた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ