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追放された無能能力者の俺、 実は一人になると最強でしたが配信事故で世界にバレちゃいました  作者: 桃山ハヤト


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6/22

露出

意識だけは鮮明だったから、恐怖が迫ったそのとき、思わず目を瞑った。

(死にたくない……!)


如月の突き立てたナイフは俺のこめかみに当たり、間の抜けた「シュコン」という音を出してそれきりだった。


「あは、これ、おもちゃですぅ」


ナイフの刃が柄の中に収納される物。

よく見ると非常に安っぽいプラスチック製の物だった。

「藤堂さんの『孤立補正』見たかったですねえ」

やっぱり演技だってばれちゃってましたかね、と笑う。

いや、そんなことはない。

俺は命の危機を感じた。

その証拠に、自由の利かない体であるのにもかかわらず、大事な部分は恐怖で縮み上がっていた。

ほら、こんなに……。

あれ?

俺の大事な部分が露出している?

俺、全裸じゃねえか!

どうして!

女性の前で!

丸出しで!

色々な物が崩れ落ちる音が心の中でした。

今まで積み上げて来た、クールな俺のイメージ。

そっけなくて格好良い、そんな主人公らしさあふれる振る舞い。

すべてが水泡となった……。


「あらら、かわいい」

如月は明らかに今、股間を見て言った!

完全に縮んでしまった俺自身を見て、かわいいと言いやがった。

くそ……。なんという屈辱。


「なんで……なんで俺は裸なんだ……」

自分でもよくわからなかったが、ここ一番声を出すことが出来た。

「あら、藤堂さん、もうお話出来るんですかあ?」

驚いているのは俺も同じだった。

ただ、それよりも男の尊厳を守りたい気持ちが湧いて来ていた。

「普段は……もう少し……大きい……」


「あら、そうでしたか。じゃあ、怖い目に遭って、それでこんなに可愛くなっちゃったんですか?」

人差し指と親指で「こんなんですよ」と見せてくる。

やめてほしかった。

「でも、最初からそこまで大きいとは思いませんでしたけどねえ……平均よりは残念ながら小さいかと」

やめてほしかった。

管理局が文字通り管理することが仕事であっても、俺のイチモツを管理、記録される謂れはないはずだ。

「ごめんなさい。少し調子に乗っちゃいました。でも、管理局の下に置かれる能力者は皆、裸にされます

。男でも、女でも」

つ・ま・り、と彼女の口癖がまた耳に付いた。

「我々にとって、能力者はモノ同然」

悪く思わないでくださいね、と加えて言った。

……モノ同然に扱われるのは御免だ。

管理局に所属することで得られるものは、そりゃ何かあるんだろうが、今のところはデメリットしか感じられない。

それに、この如月という女は、顔は可愛いが、どうも恐ろしいものを感じる。

普通にしていれば花屋のおっとりお姉さんという感じだ。

しかし、口を開くと随所でサイコパスが顔を覗かせる。

まさか、管理局というのはこんな人間の集まりなのか?

だとしたら、これはもう考える余地はない。

どのような条件を提示されたとて逃げの一手だ。


「お話出来るようになったんですから、八竜のこと、教えてほしいな、なんて思ってるんですけど」

「嫌だね」

即答してやった。

「散々人を試すようなことをやっておきながら、よくそんなことが言えたもんだ。俺はあんたのこと……いや、管理局のことを信用したわけじゃあない」

「あらあら、ご機嫌ななめ、って感じですねえ」

調子は変わらず、それでも一歩も引かないという決意のようなものは感じられた。

しかし、その意に反するように俺は、これ以上こんな所に用事はない、との思いだった。

さっさと起き上がり帰り支度を始めたかったが、やはりまだ体は僅かしか動かない。


「まだ、無理はしないほうが良いかと……」

いや、誰のせいでこうなったと思っているんだ。

反抗の意を込めて、全身の力を入れ、体を起き上がらせる。

そうだ、俺は全裸だった。

「俺の服はどこにやったんだ?」

「服は大切に保管してますよぉ。もう着ちゃいます?」

何故か名残惜しそうにする如月は、やはり何を考えているのかわからなくて、その存在感が俺の中で少し、また少しと増したような気がする。

「まだ、その可愛いの、見ていたかったですねえ」

冗談じゃない。

これ以上、誰にも見せたことのなかった大切な息子を見られてたまるか。


如月は少し席を外したが、すぐと戻って来た。

俺の服、私物がまとめられたカゴを持ってきたのだった。

俺はそれを奪い取りたかったが、そんな動きは出来なかった。

覚束ない動作で服を着る。

「ところで、さっきはどうして『孤立補正』を発動しなかったんですかあ?」

嫌な質問だった。

「まさか、自分ではコントロール出来ないとか?」

図星だった。


自分でも発動条件がわからない、それは確かだった。

先程の危険が差し迫ったとき、本当であれば発動するはずだった。

「もし、自分でコントロール出来ないのなら、危ないかもしれませんよ」

「本当に危ないときは発動する。余計な心配はされたくないな」

でも、と如月が言う。

「今、あなたの居た会社、ダブルトレードが随分と躍起になって探しているみたいですよ。藤堂さんのこと」

ダブトレが? 俺に今更なんの用だろうか。

「もしかしたらですけど、あなたを解雇したことで会社に損害が出ているなら、どのように考えているかはわかりませんけれど、あなたを連れ戻したいとか?」

その可能性はあるだろう。

なにせクビになったその足で災害級ダンジョンを単独で閉じてしまったんだからな。

もしくは、と如月がまた繋ぐ。

「あなたを消そうとしている、とか」

あは、と笑顔を向けてくる。


そうだとしたら……俺はどうするべきか。

「訓練を兼ねて、うちにもう少し居ませんか? 悪いようにはしませんよ」

もう十分、悪いようにされていると感じているのだけど……。

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