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追放された無能能力者の俺、 実は一人になると最強でしたが配信事故で世界にバレちゃいました  作者: 桃山ハヤト


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異物

取調室というのはもっと暗くて、デスクライトが眩しいイメージだった。

それが、管理局の取調室は普通の部屋だった。

ごく一般的な部屋。

そして、その部屋にあまり似つかわしくない男が居た。

明らかに異物然としている。

スカジャンのメタリックな赤は、やはり何処に居ても、合わない。


それにしても、と思った。

「取調室らしく、こちらから見えるようになっているんだな」

壁にはマジックミラーが細工されており、中は丸見えだった。

「まあ、カメラとかでもいいんでしょうけど、アナログでいいですよね」

確かに、このほうが取調室感がある。

「で、どんな感じなの?」

俺は如月に尋ねる。

「どんな感じ……まず、目を合わせませんね。警戒しています。何も知られたくないという表れでしょうね」

「挑発してみると、どうかな? いや、多分俺が話すとそんな感じになってしまう気がするんだけど」

と、そこまで言って気がついたことがある。

「如月さん」

「はい、なんでしょうかあ」

「KEYは使ってみようとしたの?」

如月の持つ能力、『KEY』があれば、人の心を開くことが出来ると言っていた。

「ですから、使いたくても使えないんですよ。もう一つは使えますけど」

もう一つとは『CUE』のことか。

「うーん、そうか……それでも、なんか操ったりする能力なんじゃないの?」

「あまりそういう風に使うことはないですかねえ……」

戦闘向きではない能力と自身を評していたが、そもそも如月が戦闘に向いていないのではと思う。

まあ、いい。

とりあえずどうなるか、奴と顔を合わせてみよう。


ガチャリと、しっかり音が鳴るタイプのドアだった。

扉を開け、顔を覗かせてみると、外山は下を向いたままだった。

確かに目を合わせないことは徹底しているようだ。

「おい、スカジャン」

「……なんだ。正体不明じゃないっスか」

「その、正体不明ってのやめてくれないか」

「でも、ネットでは正体不明があんたの名前っスよ」

対面し、椅子に座る。

「さて、不正アクセスで得た情報についてだけど……全部、坂井田に報告していたのか?」

「…………」

「あのおっさんには俺、すっかり困ってるんだよなあ」

「…………」

やはり話そうとしない。

こいつはダメだと、マジックミラーへ肩をすくめてみる。

「……あんた、管理局の一員になったのか?」

突然話し始める外山。

「……管理局は別にあんたの味方じゃないっスよ」

「どういうことだよ」

「もう、どこにも味方はいないってことっス」

「なに勝手なことを言ってんだ。どうせ、俺を困らせるための適当な文句だろ」

俺はこの期に及んで外山に同情してしまう。

味方がいないのはどちらかというとお前だ。

「……いずれ、わかるっスよ」


外山の取り調べは特に得られるものもなく終わってしまった。

管理局は味方じゃない。

その意味を考えることは、今は止した。

追求すれば、きっとそうなのだろうとは思った。

「ふむ、この話はもう終わりにしよう……」

我知らず口に出ていた言葉を聞いていたのは操だった。

「……大丈夫?」

「あっ、うん……大丈夫だ」

何故か不安げな表情を浮かべている操だった。

「……悲しそうな顔してる。私も、悲しくなる」

そんなに顔に出ていたか?

気を取り直し、口を開こうとしたとき、

「……大丈夫、だから」

と、操は言って俺をぎゅっと抱きしめた。

「あっ……あの……操……」

長い抱擁。

操は不安な俺を安定させるためにこうしてくれているのだが、俺は却ってドキドキしてしまう。

体は縮こまり、硬くなるばかり。

そして次に思ったのが、この状態を誰かに見られるとまた面倒なことになりそうだとの思い。

誰も来ないでくれよ……。


結局、タイミングの悪い侵入者は訪れず、

「……落ち着いた?」

と、ゆっくり操が離れていった。

名残惜しい気持ちがあったものの、これ以上抱き合っていてはまずいと思った。

この、まずいという気持ちはどこから来るのか。

「……アリスとデートするって、本当」

そういえばあの話をしていたときも操は一緒に居た。

「あっ……ああ、そうだな。約束だからな」

「……私ともデートしてほしい」

えっ!

これって……。

「……私と、もっと仲良くしてほしい」

「……うん、わかった。約束する」

決意に満ちたような表情が少しほころぶ。

急に背を向けた操は、

「……今、お茶淹れる」

と、言って手際良く用意している。

少し経ってから、俺の手元に運ばれてきたのは、

「……カモミールティー。リラックスできる」

良い香りのハーブティーだった。

「ありがとう」

口に運ぶ。

確かに少しほっとする感じがあった。


少なくとも、操は味方だと思う。

でも、そうすると誰が味方ではないのか、という話になってしまう。

また脳中で騒がしくなる。

思わずため息をつくと、また操が心配してくれる。

「……疲れてるのかも。お風呂入る?」

「ああ、確かに疲れてるかも……いろいろありすぎた」

バスルームに向かう操の後ろ姿を見て、結婚したらこんな感じなのかなと思う。

……結婚かぁ。

俺、結婚出来るのかな。

「……今、お湯溜めてる」

そう言った操はゆっくりとカーディガンのボタンを外し始める。

「えっ、お、おい……操、どうした」


「……一緒に入って、疲れを取るつもり」

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