禁区
能力者を束ね、コントロールする立場にある管理局。
その組織において手腕を振るう……そして、元第八所属。
やはり俺は気になって仕方なかった。
正体不明などと呼ばれている俺が言うのもなんだが、真の正体不明は如月のことではないか。
「私の、能力ですか? うーん……」
固まるようにして沈黙になる。
「……教えるくらい、別にいいじゃない」
もう、使う予定もないんだし、と口を開いたのはアリスだった。
「でも、あんまり衝撃的だと嫌がる人も居ますし……」
「そんなすごい能力なの?」
俺は興奮していた。
「ええ、あたしの知る限り、ここまで強い能力は他にないわよ」
困ったように額に手をやる如月。
「大げさな……戦闘向きじゃありませんよ」
そう言って観念したのか、ソファに腰を下ろす。
先に座っていた操が少し跳ねた。
本当に強い能力はなんであるか。
やはり能力者としては気になる。
「何から説明すればいいのやら……色々出来てしまうから」
色々?
多種多様な力を一つにしたもの、なのだろうか。
ますます興味が湧いてくる。
俺の気持ちと裏腹に、如月は困っていた。
最終的にはアリスへ説明を任せてしまった。
「まず、如月の左手はKEYと呼ばれているわ」
「……キイ。鍵か?」
「そうね。でも、それと意味はもう一つあって……『手がかり』ね」
鍵、手がかり。
これだけ聞くと推理小説みたいだ。
「説明は確かに難しいのよね。本当に、なんでもできるから」
「な、なんでもってなんだよ」
そのままの意味です、と如月が口を開く。
「例えば初めて藤堂さんに会いに行ったとき、覚えていますか?」
「ああ、俺が人気のない、橋の下に居たときか?」
「あのとき、藤堂さんは自分の意思で身を隠していましたね。しかも能力者特有のエネルギーを発していませんから、各種索敵には引っかからない。それでも私が藤堂さんを見つけられたのは能力のおかげですよ」
なるほど。
手がかりを見つけたってわけか。
「しかし、それにしたって、なんでもできるってのはちと大げさにも思えるがねえ……」
俺は素直な反応を述べた。
「すごいのは鍵のほうになるかしら。運命を変えることが出来るのよね」
アリスは不意に恐ろしいことを言うのだった。
「鍵はまるでマスターキーね。なんでも開けることが出来る。人の心を開くことも、運命の扉を開くことも。そして、閉ざすことも」
「閉ざす……」
具体的な例を聞くまでもなく、俺は想像出来た。
「……思ったよりも凶悪だな」
誰も逆らうことを許さないような能力。
彼女を前に屈服せざるを得ないような能力だと思った。
ちなみに、と如月は言った。
「この能力、タブーなんです。管理局でも知っているのはごく一部。図書室関係者は知ってますけど、他の部署は全く知りません。いや、知られてはならない。あとは局長が知っているだけですからね」
釘を差したつもりだろうか。
言われなくても黙っているつもりだ。
「でも、それだけ強い能力があれば、別に俺を頼る必要もなさそうなもんだがなあ」
俺は純粋に疑問を口にした。
「それが、大有りなのよね」
アリスはため息に似た声を出した。
「もうほとんど使えないのよ」
え?
「ええ、自分で使おうとしても使えるときもあれば、そうでもないというか。索敵くらいは使えますが、強力な使い方は……」
「そうなのか」
俺は納得したわけではなかったが、それより言う言葉が見つからなかった。
それで、と俺は話を戻してやる。
「如月さんは何か俺に用事があったんじゃないの」
はっとして、すぐに笑顔を取り戻す如月。
「そうなんです。一緒に取り調べをしてほしくて」
俺が、する側なのか?
「外山ハジメの取り調べです。あの人はあんまり話してくれないんですよね。だから、元同じ会社の同僚ということで、何かこう、化学反応でも起きればと思いまして」
そんなこと起こってたまるか。
そうは思いつつ、自分が協力出来ることならやってやりたい気持ちだった。
今回、俺が知っていたことを前もって伝えていれば起こらなかった事件かもしれないのだ。
「うん、わかった。やってみようか」
俺は、如月と共に取調室へと向かった。




