表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能能力者の俺、 実は一人になると最強でしたが配信事故で世界にバレちゃいました  作者: 桃山ハヤト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/31

情報

消灯からすぐに、美奈は寝息を立てていた。

寝付きが良いというのは羨ましかった。

俺はこの、女の子二人に挟まれた状態を喜ぶ余裕はなかった。

種類は違っていたが、女性ならではの甘い香りは常に鼻孔をくすぐった。

それらは交感神経を優位にし、心を落ち着かせることはない。

むしろ、体中が熱く、疼いているような塩梅であった。

意識しないように努めていたこの頃だったが、一つのきっかけがあり、全てが瓦解するような思い。

そのきっかけというのは、俺の右側に居る、アリスだった。


右腕の痺れが限界だった。

身動きが取れないと思うと、自身で勝手に縛り付けられたように硬直してしまう。

その弊害か、右腕はマヒしたかのように痺れた。

少しだけなら動かしても問題ない。

アリスに触れなければ問題ない。

そうして動かすことに決めたのだが、痺れがあるせいか、感覚があまりなかった。

「ひゃあぅ……」

小さな声だった。

あれだけ触れてはならないとし、慎重に慎重を重ねた結果、触れてしまった。


尻、だろうか。

俺に背を向けたアリス。

格好として、触れる可能性があるのはやはり尻、だろうか。

一瞬でそんなことを考えた俺だったが、事の重大さを思い直し、小声で、

「ごめん、わざとじゃないから……」

と囁いた。

アリスは何も言わなかった。

寝てるのか?

寝ていてほしかった。

記憶や意識が無いということは、それはすなわち起こらなかった出来事とも言える。

俺にとり、都合が良かった。

それだから、何も言わないのであれば、このまま右腕を救い出し、一度楽な姿勢になりたかった。

俺はもう一度、試みる。

「ぅん……ひゃっ……」

また、小さな声だった。

ふむ、寝てても女子は反応するものなのかもしれぬ。

ずりずりと腕を引きずり出す。

「っく……ふぅ……!」

吐息と共に漏れる嬌声はそこはかとなく、甘美な響きだった。

まあ、寝てるからこそ、こういう声を出すのかもと思う。

普段のアリスからは想像も出来ない甘い声だった。

最早、気にするほうが変だとし、また動かす。

「……っ! あんた、いい加減にしなさいよ……」

起きてた。

しかも怒ってる。

俺は反対側の美奈を起こさぬよう小声で、

「あっ、起きてた? ごめん。わざとじゃないから」

と言った。

「ちょっと、ヘンなところ触らないでくれる?」

「ご、ごめん」

でも、と思った。

「腕、痺れちゃって。もう少しだから……」

承諾を得たかった。

「ひゃ……ちょっと! 触らないようにしてよ!」

「頑張ってるんだよ! もう少しだから」

アリスは起きていながら、このようなえっちな声を出していたらしい。

それがわかると、途端に俺の中では劣情が加速していった。

美奈が寝ている隣で、というのも危うさがあって良い。

「うぅ……ねえ、ほんとダメだからぁ……美奈が居るから……美奈が居ないときにして? ね?」

すでに劣情の鬼と化した俺にはどんな言葉も届かなかった。

「……アリス……俺、もう!」

「しつこいわね! 『絶対服従!』 さっさと寝なさい! このスケベ!」

「……かしこまりました、姫」

俺は意識を失った。


翌朝。

体は磔にされたように動かない。

「おはようございまーす」

扉が開かれ、足音。

如月が来たようだった。

「藤堂さん、朝からごめんなさい。ちょっとお知らせが……あら?」

異様に膨らんだ布団は誰の目から見ても不自然に映る。

「うふふ……とりゃ!」

如月には慈悲の心というものは無いようで、布団を一気にめくり上げてしまう。

「あらあら、藤堂さんったら、お盛んなんですねえ」

両脇に女の子を携え、悠々と寝ている姿は誤解を生むのに十分だった。

「違う……違うんだ……」

「違うんですかあ? でも、二人ともぐっすりですよお? たくさん運動した後みたい」

本当に違うから悲しい。

「でも、管理局で3Pはちょっとやりすぎですね……説明、してもらえますか?」

笑顔の如月はゆるりとした怒気を孕んでいた。


俺は如月に弁明を行う。

そして、誓ってやましいことはないと、伝えるのに必死だった。

「ふーん、まあいいですけど」

わかってくれたのか、そうでないのか、如月は受け流すようにして言った。

「それより、朝から申し訳ないんですが、藤堂さんにお知らせがあります」

お知らせ?

はて、なんだろうか。

「実はですねえ……藤堂さんを狙っているダブルトレードの件なんです」

起き抜けには聞きたくない話かもしれなかった。

「まだ、はっきりとはわかっていませんが、どうもあの会社の仕業だと思ってるんですけど……藤堂さんは実際に内部に居た人間ですからね、聞いておきたくて」

「なんだよ、あの会社が悪さを働いてるのか?」

如月は抱えていたファイルを開いた。

「始まりは、災害級ダンジョン、ストーンドラゴンの巣穴ですね。その発生当日、管理局のサーバーへ何者かが侵入した痕跡がありました」

俺は如月の言葉を待った。

「これは当時誰にも気付かれぬよう、管理局内部からのアクセスを装っていましたが、本来、権限のないアクセスだったので発見出来ました」

「その侵入先、ダンジョンの発生速報だったりする?」

如月は少し驚いたような顔をし、

「その通りです」

と言った。

「それから定期的なアクセス、もとい侵入があったようです。決定的だったのは、本日未明の不正アクセスです。データベース、サーバー、果ては個人のパソコンまでが侵入されており、一部情報が漏れたと見ていい状況です」

手段を選ばないあの会社のことだから、いつか派手なことをするとは思っていたが、ついに実行し始めたか。

「どうでしょう。何か心当たりは」

「ああ、間違いないと思う。ダブルトレードの仕業だ」

あの会社はそもそも人海戦術を得意とし、あらゆる所に兵隊を常駐させていた。

ところが、管理局独自のダンジョン発生速報のシステムを模倣出来ないか、色々と開発が調べていたところ、一人の凄腕ハッカーが入社したという。

情報を得るのではなく、盗むことにした。

その話は第一攻略部隊内では有名だった。

なぜなら、第一は一番最初に手柄を上げることに特化していたからだ。

隊長の山中は、社内リークを買っていた。

部隊内機密は共有することにより、チームとしての連帯感を高めた。

まあ、俺が知っているのはこれくらいだった。

「なるほど……では、管理局の情報は以前から盗まれていたわけですね」

「ああ。ただ、俺が知っているのはダンジョン発生場所を素早く知るため、というだけ。他の情報は危険を冒してまで得るメリットもないからな」

如月は、首を横に振った。

「今は違いますからね。藤堂さんの情報が、一番知りたいことでしょうから」


俺のこと……か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ