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追放された無能能力者の俺、 実は一人になると最強でしたが配信事故で世界にバレちゃいました  作者: 桃山ハヤト


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20/23

発言

深い霧はなんのためにある?

誘いの背徳を隠すため?

それとも……。


俺は眼前の光景、その全てが嘘や偽りだと認めたくなかった。

出来ることなら、女体に埋もれてしまいたかった。

後のことを気にせぬ、自由気ままな愛が先にない関係でも良かったのだ。

若いうちはいろんな経験が必要だとし、甘美な罠にかかってしまいたかった。


しかし、どうしても解せなかった、引っかかりを覚える言葉だった。

如月は俺の大事なところを指で測り「こんなんですよ」と嬉々として言った女だった。

その女が「藤堂さんの立派なモノ」などと言うはずがないのだ。

あの女が仮に発情し、誰でも良いから男が欲しいという悲しき女の習性を発揮させたとし、

それでも、

あの女は、

間違っても言わない言葉だった。


……アリスや操はワンチャン言いそうだったのにな。

残念だぜ、レディドラゴン。

誘惑のドラゴンは、俺たちがどこまでも清い関係だと思っていたらしかった。

しかし、所詮は人知に及ばぬ魔獣風情だ。

この幻想を打ち破る。


俺は止まっていた右手をもう一度握り直す。

左手には感触がある。

幻惑の靄の中、見えてはいないが、確実にまだ俺の手の中。

勢いは幾分減少してしまったが、これでも十分だろう。

文字通り煙に巻き、この俺を馬鹿にしたその罪を償ってもらう。

右手、掴んだ左手の位置に合わせて、ここだと思った。

俺は次の瞬間、レディドラゴンをぶん殴っていた。


怒りが攻撃力に上乗せされているのか、その時、衝撃波が辺りを無音にしたほどだった。

深い霧はいつしか晴れて、現実世界。

目の前で首を反らし、喉道を見せている小さな竜。

まだ殴る。

左手は首を掴んでいるだけではない。

右手に合わせてリズム良く引き寄せ、打撃を最大限引き立たせた。


===


《反撃開始だな》

《やめて! 相手のライフポイントはもうゼロよ!》

《止まったときはどうなるかと思ったよ》


===


「……幻想を自分だけで打ち破った」

操は表情こそ変化がないものの、驚いているらしかった。

「ったく! 一時はどうなるかと思ったわよ!」

「……それにしても殴り過ぎじゃありませんか? 藤堂さんがあれだけ怒る幻想ってなんだったんでしょう」


俺はようやく一呼吸置く。

どれだけ殴ったかもわからなかった。

掴まれながら、ぐったりとうなだれているレディドラゴン。

首を反らしながら息も絶え絶えに「な……なぜ……」と言った。

「なぜ私の幻惑が効かない……?」

「……そりゃ、最初は惑わされたよ」

「では、なぜ……」

「如月はあんなこと言わない、間違ってもな」

俺は諭すように言ったが、心の炎は消えない。

「俺はな、全員にちんこを見られてんだよっ!」

左手を離し、レディドラゴンを宙へ放る。

右手は助走をつける形で引っ張った。

渾身の一撃を、今度こそ食らわす。

風を切り、圧縮された空気が音を立てた。

顔面に右ストレートが入り、自由の身になった小さな竜はどこまでも飛んでいった。


===


《ちんこ? 今ちんこって言ったよね?》

《悲報、最強の男「ちんこ」発言》

《もうスレ立ってる》


===


「ねえ、あいつ……あたしの聞き間違いじゃなければ……」

「……ちんこと言った」

赤面したアリスに心を持たぬかのように操は淡々を言った。

「どういうことなんでしょうか。藤堂さんの粗末なモノと関係のある幻想だったのでしょうか」

言いたい放題であった。


さあ、ストーンドラゴンのときはこれで終わったが、今回はどうだろうな。

ダンジョンの壁に叩きつけられたレディドラゴンを一瞥して思った。

「……公式アナウンスは流れないか。まだ、生きているな」

遠くから声がした。

「強いじゃないか……。でも、私はやられないわよ。竜の、竜族の特性をお前は知らないみたいね」

……竜族の特性?

「竜族はドラゴンからの攻撃は全て半減されるのよ」

どういうことかわからなかった。

「お前にくちづけをしておいて良かったわ」

……最初のあれか。

「そういうことか」

聞いた途端、体がより一層熱くなった。

「お前、口は災いの元って言葉、知ってる?」

レディドラゴンはあまりわかっていない様子だった。

「その情報を加味して、俺はまた強くなったぜ」

「……なに?」

次で終わりだ。


地面を蹴る。

一瞬でレディドラゴンの元へ辿り着く。

焦った様子だったが、構いやしない。

一撃だ。

「ふん、まだ終わらない」

構えた俺に対してレディドラゴンは口を開き黄色い光をこちらに放つ。

かわすことが出来なかった。

全身にそれを浴びる。

「ぐっ……!」

補正がかかり、ある程度の攻撃には耐性があるはずだったが、ダメージが殊の外大きい。

俺は我知らず跪いた。

「ドラゴンブレス……竜特効の技よ」

あの竜のくちづけはどこまでも厄介な効果を俺に付与しているらしかった。

「これでそんなになるってことは、次に私が攻撃したら死んじゃうんじゃない?」

そうかもしれない。

「どうする? 降参するなら見逃してもいいわよ」

そんなことは出来ない。

互いに距離を取り、牽制し合う。

「別に、私としてはそれでもいいわよ。人間を滅ぼそうとなんて考えていないのだから」

「どういうことだよ」

「共存出来るはずだと何年も前に提案したじゃないの。当時のことは……もう何百年も経ったかしら。それじゃ、しらない?」

一体、何の話をされているのか。

「竜族はこの世において最強よ。知能だって人間の何倍もあるわ。それだから、私たちの支配した世界に住まわせてあげるって、言ったのよ」

「ふーん、そんな戦争が昔あったのか」

「ええ、もう随分前だけれど。その時もお前のようなのが居たわ。都合良く自分のステータスを上昇させるのが」

だから、戦い方を知っている、と言いたいのだろう。

「竜族が絶滅……もとい封印されて、もう長いこと経つみたいね。竜特効の武器なんてもう残ってないんじゃない?」

「なんだよ、それは。それがないと倒せないってことか?」

さあね、とレディドラゴンは嘯く。


色々言われたが、俺は俺の戦い方しか出来ない。

だから、独立補正の能力を最大まで引き上げる。

さっきの攻撃は痛かったが、糧になってくれている。

「藤堂さん、無理しないでくださいね。ダメだと思ったら引き上げてください!」

耳元で如月が言った。


「……余裕だよ。心配いらない」


さっきのが竜特効だと言ったな。

それなら、俺も使ってやる。

右手を前に出し、構える。

「何? お前、魔法が使えるのか?」

レディドラゴンは呆れたように言った。

「さっきの……ドラゴンブレスか。俺も使わせてもらう」

これで終わりだ。

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