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追放された無能能力者の俺、 実は一人になると最強でしたが配信事故で世界にバレちゃいました  作者: 桃山ハヤト


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花道

それは竜だと呼ぶよりも「トカゲ」と呼びたくなるような風貌だった。

ピンク色のトカゲ、それがふさわしい。

その姿は操の開く古文書のような本にはっきりと描かれていた。

「これが……レディドラゴン……」

誰もが絶句していた。

これが八竜の一匹であるという事実は、疑いの気持ちに苛まれており、それは皆も一緒であった。

端的に言って、舐めていたのだ。

ただし、それはその時まで。

目を疑う光景が、モニターへ表示されるまでの間だった。

「え、なんで……? なんで皆、レディドラゴンに背を向けているわけ?」

アリスの言う通りで、わけのわからぬ映像が届けられていた。

「第七偵察部隊、聞こえますか? 各自、持ち場を勝手に離れることはなさらぬよう願います! 聞こえていますか!?」

カメラは自動追尾式のものだったので、問題なく映像が届けられていたが、困ったことに、兵隊がどんどんと帰ろうとしているのだった。

「ほう、これがレディドラゴンの真髄だな」

いつの間にかメモを片手にした広瀬が言った。

「惑わすっていうか、操るって感じ?」

俺は誰かに尋ねるわけでもなかったが、疑問を口にしていた。

「どちらにせよ厄介です。私の声は届いているはずなのに、誰も返事しませんね」

如月は諦観を言葉尻に感ぜられる言い方をした。

俺としては、これを脅威には思えなかった。

アリスの『絶対服従』という能力を身を持って経験しているからだ。

意識を奪うのがレディドラゴンなら、全てを支配するのがアリスだ。

意識的に働かせることが困難な、細胞さえもコントロール出来るのだから。

とはいえ、アリスの能力の全てを知っているわけではない。

当然、何か、アリスにも弱点があるはずである。

……弱点。

「あの、如月さん」


退却命令は出ていなかったが、次々と勝手にダンジョンを後にする部隊たち。

最早管理局の部隊もこれまでと言った具合だった。

「いやいや、これは困るな。まあ、それでも、放送はしていないから大丈夫だけどなあ」

放送していたらクレーム対応で一日潰れちまう、と広瀬は言った。

職業病だろう。

マスコミに対する弁明をすでに考えている様子。

広報という部署の大変さを慮り、気の毒に思う。

「うーん、どうしましょうねえ……レディドラゴンの戦い方を知らないうちから藤堂さんに行かせるのは気が引けますねえ」

本気で悩んでいる如月であった。

「だから、第八を呼べばいいだろ? そんなに古巣に頼るのが嫌か?」

広瀬は遠慮なしに口を挟む。

「ええ、嫌ですねえ」

意外にもきっぱりと物を言う如月に、思わず畏怖の念を抱く。

ただ、何故そうまで頑なに第八を拒むのかは想像も出来ない。

管理局最強部隊と言われるところに頼ろうとしないのは何か理由がありそうだった。

我々がそんなふうにぐずぐずしていると、ダンジョンからは兵が消えてしまった。


さて、と口を開いたのは全ての方向を定める如月であった。

「もう打つ手は……どうしましょう、藤堂さん行ってもらえますか?」

「なんか……随分気が進まない感じだな」

これが、藤堂さんお願いします、だったら違うんだけどな。

「だって、藤堂さんがこれで討伐しちゃったら、お別れなんですよ?」

……それを言うのは反則だ。

俺だって名残惜しい。

「……行くよ。俺がやらなきゃな」

「……ええ、藤堂さん、お願いします」


普段とはやはり違って、人通りもなく、車もなかった。

「災害級ダンジョンは、独りになるのにもってこいだな……」

思ってもいないことを言う。

道中はやけに静かで、進むべき道は一本。

まるで俺だけのために用意されたみたいだと思う。

人は居ないのに自動的に点く街灯や、ビルの照明。

それは異世界のように感じられ、悪くはなかった。

そんなことを思いながら進むと規制が徐々に濃くなってくる。

不思議と不安はなかった。

全てを終わらせるために。


以前もそうしたように、管理局の書類を警官へと渡す。

少し待たされてから規制線が開かれる。

俺は身一つでこの災害級ダンジョンへ潜る。

中は明るかった。

偵察部隊、攻略部隊が照明類をそのままにしていなくなってしまったからだ。

ただ、光はあっても危険な雰囲気だけは感じ取られ、自然と能力が発揮できた。


『孤立補正』発動。


力が湧いてくる。

また、髪の毛が白くなる。

「よし、公共放送開始しても大丈夫だ」

「わかりました」

俺はインカムでそう伝えた。


かなりの量だと思った魔獣の数だが、実際に訪れてみると、攻略部隊が頑張ったようで、あまり多いとは思わなかった。

それなりの魔獣の数で、俺は戦ったことのない上位魔獣と、目的の場所へと向かいながら交戦する。

「余裕だ」

攻撃をしかけてくるだけの魔獣は全く、敵にならない。

ベヒーモス、キマイラ……これらは体も大きい。

一撃が酷く重たい。

それでも、孤立補正された俺の防御力の前には歯が立たない。

ぶん殴り、蹴り飛ばし、一網打尽にしていった。


===


《あの大きさのベヒーモスが一撃……》

《こいつの火力どうなってんだよ……》

《また無双してんなこいつ》


===


最深部、ガーゴイルが待ち受ける場所。

顔を覗かせると、二体の悪魔が行儀良く座っていた。

「さあ、ここからが面倒だな」

ガーゴイルは二体同時に攻撃をしなければならない。

結局、それがどうしてなのかはわかっておらず、ただわかっているのは、そうしなければダメージが通らないということだけ。

全体攻撃といえば魔法や、居合斬りなどがあるが、そのどちらも使えない俺はどうするか。

――ただひたすらに打撃だ。

様子伺いから一転、地面を蹴り飛ばしてガーゴイルに突っ込む。

その瞬間、灰色だった二体の体が変化し、土色になる。

「なるほど、これは門番だな」

手前に居た一体目、全力で殴りつける。

「もうっ! 二体同時にダメージを与えないとダメって自分で言い出したくせに! なにやってんのよ!」

……大丈夫だ、アリス。

俺は手前の一体を殴りつけ、本来ならショットガンのようにその打撃を与えるところを、勢いをそのままにして、奥まで行く。

そしてもう一体を巻き添えにする!

一体目のガーゴイルに空洞が出来そうなくらいの打撃、というよりも押し込むと言ったほうが正しいのか。

二体目に到達しても手は緩めない。

むしろ巻き込んだ瞬間、更に空気を蹴り、足りないスピード、打撃を追加する。

自分でも驚くほど気持ちが昂っていた。

信じられないほどの「絶対に殺す」という感情。

その決意だけでこの憐れな魔獣はケシ飛んでしまうのではないか。

そう思った。


「やった! やりましたよ!」

インカムからは如月の無邪気な歓喜の声が上がった。

さあ、ここからが本番だ。

誘惑のドラゴン……。

お手並み拝見と行こうじゃないか。

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