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追放された無能能力者の俺、 実は一人になると最強でしたが配信事故で世界にバレちゃいました  作者: 桃山ハヤト


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「話? 一体なんの話ですか」

正面の坂井田は足を組み、何者にも揺るがすことの出来ぬ地位があるような余裕が見て取れた。

「第一攻略部隊は君が抜けて四名。そしてその内の二名は先の災害級ダンジョンで戦死……」

それは、知っているな、と言いながらこちらを窺ってくる。

「ほぼ壊滅……! まあ、それもこれも無能な山中なんぞに隊長をやらせた私の責任でもあるのだけれど……」

違う。

隊長は決して無能なんかじゃない。

庇うつもりじゃなく、それは本当のことだ。

「藤堂くん、君さえ良ければ、だが、ウチに戻らないか?」

「戻るって、第一にってことですか?」

「いや、違う……第一なんて糞の役にも立たぬ部隊はあの日、消滅したも同然……」

第一はあの災害級ダンジョンでの不甲斐ない戦闘により見限られてしまったようだ。

「あのグズのせいで死者を出し、あまつさえ我が社の評価まで地に落ちた……これは汚名を返上しなければならぬ……! なんとしても……!」

それで俺の活躍を知り接触してきたってわけか。

「ふーん……なるほど、そういうことですか」

これはもしや大金ゲットのチャンスかもしれない。

「いくらですか。俺と再度契約するなら相当ですよ。なにせ俺は今、管理局の仕事を請け負っているわけですからね」


「……一億」

年間で一億は安すぎる。

災害級ダンジョンも請け負えるとなると、会社にはかなりの額が入ってくるはずだ。

「……出張る度に一億……!」

え……?

「出動一回につき一億……!」

それは破格の報酬だった。

第一に居た頃は手取りで二十万円だった俺が、一晩で一億稼げるのか。

「どうだ……やる気になったかね」

悩ましいところだった。

企業所属で出動一回につき一億円。

「言っておくが、これから藤堂くんには色々なところからオファーがあるだろう……。だが、安心してほしい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

いちいち断るのも骨が折れるだろうから、あらかじめこちらで手を打っておく、ということか。

想像以上の会社かもしれないな……。


「ところで、そうなると第一は今後どうするんですか?」

俺は単純に興味から質問していた。

「そんなことを気にしてどうなる……? まあ一応教えてやろう……あのグズは片目ではわからなかったようだからな……」


「両目で手を打つと、会長が言ってくれたよ」


全身から血が引いていくのがわかった。

この会社は、どうかしている。


如月は首を傾げていた。

「あら、藤堂さん、トイレでしょうか……」

そこに広瀬が通りかかる。

「あの露出狂なら出て行ったぞ」

「ええっ? 出て行ったって、外に出たんですか?」

「ああ。なんでも俺の居場所は大塚あたりにあるはずだ、とかなんとか言ってたけどな」

「大塚? はて、大塚には何があるんでしょうか……それより、外に出たのはまずいですねえ……」

ジャケットの内側から端末を取り出し操作する。

「如月ですぅ……あ、アリスじゃなくて、みさおさんに用事がありまして」


「さて、藤堂くん。どうするか決めてもらおう……」

どうもこうもない。

こんな会社とは金輪奈落付き合うのは止すことだ。

「……残念ながら、あなたの期待には応えられませんね」

坂井田はその返答を予期していたかのように声を抑えて笑った。

「ククク……どうせそんなことだろうと思った……。良いことを教えてやろう。君がウチに利益をもたらさないということは、その分、別のところで大金が動くということだ。それは相対的に見ると、結句、我々の損害ということになるのだよ」

その理屈はよくわかる。

どうしても俺の首を縦に振らせたいということか。

しかし、どう言われたところで心は動かない。


「強情なやつめっ……! これでも首を横に振れるか?」

プロジェクターから映されたのは、古びた倉庫というのか、廃屋だった。

徐々に、腕を体ごと縛られた女の子の姿が映される。

「なっ……。どういうことだ!」

「ククク……交渉には万全を期すほうでね」

いつからそこに捕まっていたのかはわからないが、顔は薄汚れているように見えた。

俺は拳を握りしめる。

「どうして……どうして美奈が……」

坂井田がニヤリと笑みを溢す。

「君のことは全てリサーチ済みだからな……もちろん我々は常にフェア……! 何もしちゃおらんよ」

俺の唯一の家族、妹の美奈が捕まっていた。


「さあ、どうするんだ。我が社専属の能力者になるなら何も問題はない……しかし、断ればどうなるか、私にもそればかりはわからんけれどもね……」

こんな卑怯な真似、許せない。

俺がこんなとき自由に能力を発揮出来れば違うんだが、人が多すぎる。

「孤立」はしているが「独り」ではない。


「……わかったよ。俺があんたらの条件を飲めば美奈は解放してくれるんだな」

坂井田はその答えに満足なようだった。

「ククク……実に利口……! 実に人情の厚い選択……! 君は素晴らしい」

「早く、今すぐ解放してやってくれ」

「そうしたいところだが、先に契約をしてもらわなくてはな……どれ、書類一式はここにある」

以前の所属時とは違う書類の量。

ガチガチに縛るつもりだな。


情けない。

こんなときに無力な自分が情けなかった。

そして、頼ることの出来る仲間が居ないのも辛かった。

「さて、見てもらおうか。これが基本的な契約だ。君は自らの意志では契約を解除することは出来んようにしてある。それは、もしまたウチのような強行突破……もしくはウチとは違って非常にアンフェアな方法を行使されたとて、気持ちが揺らいだとて、勝手に鞍替え出来ぬように入念にしてある」

話を聞きながら、瞳に涙が溜まっていくのを感じた。

書類なんか、もう見えない。

「それから、君は今、大した金を持っていないと聞いた。会長というお人は実に寛容……今回は特別支度金なるものを仰せつかった。一億円……渡してやってほしいとのことでな。会長は本当に菩薩のような方だ。感謝するんだな」

なんだか嫌な予感がしてきた。

「さて、この特別支度金だがね、多くの企業がそうしているように、給料の前払いということになる。普通は三年ほど勤務すれば返済の義務はないとの契約がほとんどだろうが、君の給料を考慮して先に返済してもらおうと思っている。で、これがその返済計画書だ」

提示された紙を見て涙が止まった。

「な、なんだよこれは!」

「ウチは利息がちと高いかもしれんがね……」

永久に返済が終わらないような仕組みだった。

一生、飼われ続ける。

しかも、金の支払いも実質無しで。

「こんな条件、飲めるかよっ!」

「いいのかね……美奈ちゃんとやらはかわいい。すぐに良い客が見つかるだろうな……日本人は肌が白くて人気があるぞ……」

「くっ……」

この男、蛇だ。

全部、絡め取られる。


そのとき壁が一部捲れるようにして、光が差し込んできた。


「……間に合った」

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