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07 無能な妹は魔力測定を受ける

「――では、魔力測定を始めます」

そう言ったのは、帝都から招かれた若き魔導士(メイジ)だ。


今日は、アザル公爵家の新たな養女であるアリア=アザルの正式な“魔力認定”の日。義兄エルヴィンの提案により、帝都魔導院(アルカナ・アストラ)の立会いで行われることになったのだ。


この世界の皇家と貴族はみな契約星(セイラス)の加護を持って生まれ、どんな魔術が使えるかは、どの星の加護を受けているかで決まる。皇家は、天にひときわ大きく輝く黒曜星(オブシディアン)の加護を受け“支配と加護”を司る。アザル公爵家は氷星(グラキアリス)を戴き“封印と停滞”の理を受け継ぐ。それぞれの(ハウス)は固有の契約星と結ばれ、代々その加護を継承しているのだ。


魔力量の大きい者は五、六歳で自然と力が顕現し、遊びの中で魔術を使えるようになっていくらしいけど、そうでない者は十六歳になったら魔力測定を受けるのが決まりなんだって。ごくまれに庶民のなかにも契約星を持って生まれる者もいるけど、そういう人たちはほぼもれなく帝都魔導院に引き取られていくらしい。


アリアの場合、そもそも庶民だし、もしあったとしてもこの年になるまで魔力が自然に顕現してないってことは微々たる魔力量なんだと思う。髪の色も薄いしね。だから、こんな大げさなことしなくていいって言ったのになぁ……


◇◇◇


――魔力測定の1週間前。


公爵家の藤の間(ウィステリアホール)のテーブルには、最近すっかり定番になってしまった、二人きりのお茶会のためのティーセットが並んでいた。


「アリア、今日の茶葉は?」

エルヴィンは、薄い金縁のカップを指先で転がしながら穏やかに問いかけた。


「公爵家の茶庫にあった新茶ですわ。香りが軽やかで、とても気に入りましたの」

そう答えながらポットを傾けると、藤の花模様がそっと揺れ、ほのかな香りが広がった。


エルヴィンは、その香りを確かめるように目を細める。

「……やはり、おまえが淹れると一段と味わい深いな」


相変わらず、惜しみなく褒めてくる。いや、惜しむどころか毎回過剰だ。普通の貴族令嬢は義兄にここまで褒められるものなの?


「お義兄様、魔力測定の儀式のことですが……庶民の出のわたくしに魔力などあるはずがございませんわ。帝都魔導院の皆さまにご迷惑をおかけするだけです」


「アリア、“エルヴィン”と呼ぶように言ったはずだ。――おまえの慎み深さは美徳だが、遠慮しなくていい。おまえのこの美しい薄紫色の髪を見ると、何らかの魔力が顕現していてもおかしくはないと思わされる。おとなしく儀式を受けてくれ」


そう言って、彼はそっと私の髪とひと房とると、自分の唇を触れさせた。エルヴィンの動きにあわせて、その長い濃紫の髪もさらりと動き、光をはらんでゆるやかに揺れる。


うーん。ほんと改めて見てもエルヴィンってとんでもない美形だ。でも、このところ毎日のようにお茶会してるせいか、もはやその美貌に何も感じなくなっている自分が怖い。これは、まさに、慣れのパワー……。ブラック企業もこうやっていつの間に慣れて、それが普通になっていってたもんなぁ……



結局、義兄の粘り強い説得に応じて、この日を迎えることになったのだ。


読んでいただきありがとうございます。

アリアとエルヴィンの仲が良くなり書いていて楽しいです。

魔力測定のお話は次回でひと段落です。

次回は10/29 21時に公開予定です。

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