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05 無能な妹は義兄を引き付ける

エルヴィンを庇って大怪我をした私は、なんと1か月近く寝込んでいたらしい。


傷自体はその場でエルヴィンが魔術で直してくれたものの、心理的なショックなのか、目を覚まさない状態が続いたという。サラサが言うには、その間何度もエルヴィンが私の部屋を尋ねて来ていたんだとか。


目が覚めたときに義兄が私の手を握っていたのはそういうことなのね。ものすごくびっくりしたけど、やはり、公爵家の当主として屋敷の安全管理に不備があったことに責任を感じていたってことなんだろうな。

ちなみに、暗殺未遂は、公爵家と敵対するどこかの貴族が計画したものだったらしい。エルヴィンに聞いてもいまいち詳細を教えてくれなかったけど……。


でも、本当に驚いたのは回復して、歩けるようになってからだった。

あの塩対応だったエルヴィン公爵様が、なんと毎日のようにお見舞いにきてくれて「庭に咲いていた白ユリだ」だの「異国から取り寄せた菓子だ」だの「今日は体調もよさそうだから、外の空気にあたりにいくのはどうだ?」だの…それはそれは、かいがいしくお世話を焼いてくれたのだ。


週一回程度の予定だったお茶会もエルヴィンの要望で徐々に増えていき、今では週三回。領地経営や公爵としてのつとめは大丈夫なのかと心配になるほどの頻度で行われている。


エルヴィンはお茶会のたびに、傷の調子はどうだ?ほしいものはないか?困っていることはないかと聞いてくるけど、お願いを聞いてもらうと後が怖そうなので「私の願いはお義兄様が健やかに過ごされることです」と毎回答えることにしている。そうすると、なぜかいつも義兄は私から目をそらしてしまうんだけど、もしかして、いつも答えをはぐらかす私に怒ってるんだろうか。


◇◇◇


「アリア、前回の話で、隣国であるセレスティア神聖国と我が帝国の関係はどのようなものだと伝えていたかな?」

「はい、お義兄様。エリドゥ帝国とセレスティア神聖国は、同じ聖女オリアを信仰する国でありながら、国交は盛んではありません。きっかけは300年前に聖女様をめぐっておこった聖戦だといわれています」

「そのとおりだ。アリア。おまえはまったく素晴らしい記憶力の持ち主だな。心根が優しいだけでなく、聡明でもあるとは」


今日はこの週、3度目となるお茶会だ。

この広い藤の間(ウィステリア・ホール)には豪奢なテーブルや椅子、それに座り心地の良さそうな長椅子がいくつも並んでいる。なのに、なぜかいつも義兄の座る位置は、ぴったり私の隣。それになんだか距離感がバグっていませんか……?私って、そんなに耳が悪いと思われているのかな。ここまで近くなくても、ちゃんと聞こえてるんですけど。


「お義兄様、お願いですから、もう少し離れてくださいませんか」

「アリア、我らはたった二人の兄妹だ。家族が互いを大切にすることは当たり前のことだろう」


エルヴィンは私の手をとり、まるで懇願するかのように私の瞳を見つめる。う~ん。何か悪いものでも食べちゃったのかな。初日の態度と全然違うんだけど……それとも貴族の家族って、これが普通なのかな。


思わず彼を見つめ返すと、その美しい瞳に吸い込まれていきそうだ。ようく見てみると義兄の瞳はまるで夜空に星が散っているようだと気づく。


「お義兄様の瞳って、まるで星空のよう。とっても綺麗」


思わずつぶやくと、義兄は黙って顔をそむけてしまった。見ると耳に紅が差している。

やばい。怒らせちゃったみたい。この世界では「星空のよう」というのは誉め言葉じゃなかったのかな。異世界ってやっぱりわからないことだらけだよ……


「アリア、そんなセリフは私以外の誰にも言ってはいけない。いや、そもそも私の目の届かないところに一人で行ってはいけない」


――義兄が私を見る目には、なぜか疲れがにじんでいたのだった。


読んでいただきありがとうございます。

エルヴィンがだいぶ人間らしくなってきました。

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