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31 無能な妹は帝都で第一皇子を紹介される

――黒曜石が、星の光を受けて淡く煌めいているようだった。


ゆるやかに波打つ漆黒の髪は、静かな気品と冷ややかな威厳をたたえる。闇夜を映した瞳は、鋭くも穏やかな知性を感じさせた。黒と金の騎士服に身を包んだその姿は、皇家の血が紡いだ傑作と呼ぶにふさわしい。――ただ一つ、左耳の黄金の耳飾りだけが、完璧な造形の奥に潜む、彼という人間を覗かせている気がした。


「初めまして、黎明星(ルーメン・オリア)の乙女殿」

低く響くその声は、穏やかでありながら、不思議な艶と余裕を帯びていた。年のころはエルヴィンと同じくらいだろう。けれど、纏う空気の重みがまるで違う。


「私はアレクセイ=アーヴェント=エボン。この国の第一皇子だ。――黎明星の乙女は、想像していたよりもずっと清廉で、そして、美しい」


――えっ、いきなり口説き文句!?この人、皇太子殿下ですよね!? イチ貴族令嬢に営業トークが過ぎませんか!?


アレクセイは優雅な仕草で私の手を取り、その甲に静かに口づけを落とした。微笑を浮かべながら、低く囁く。

「帝国の均衡は、乙女の光にかかっている。その輝きを、誰よりも近くで支えたい――そう願うのは当然のこと」


……いや、言い慣れてる。絶対にこういう台詞、日常会話レベルで言ってるタイプだ。分かってる、ただの社交辞令……のはずなのに、顔が勝手に熱くなってしまう。恋人いない歴=年齢の元社畜には、刺激が強すぎます!


アレクセイは、私の頬の紅潮に気づき、ほんのわずかに目を細めた。だが、すぐに興味を切り替えるように、視線をエルヴィンへと移す。


「従兄殿、久しいな。ずいぶんと健勝そうだ。こんな宝石を懐に隠していたとは、罪深いことだな」

「アレクセイ、アリアはまだ帝都に来たばかりだ。あまり驚かせるな」

「相変わらず硬い。――まあ良い、いずれ親しくなるさ。星は、逃げないのでな」


挑発めいた笑みを残して、アレクセイは軽く一礼する。その所作すべてが絵のように美しく、腹立たしいほど完成されていた。


イヴァン陛下がゆるやかに口を開く。

「そなたらは知らぬだろうが、三百年前、黎明星の乙女オリアは、自らの守護星を探し、旅に出た」


陛下の声は深く、厳かに響いた。


「聖女オリアの事はおとぎ話と思われているようだが、違う。選ばれた七つの守護星の一人は、我が帝国の皇子であった。そして、二人の血は交わり、皇家の血となったのだ。乙女の血をひく皇家の者は、必ずや、そなたの助けになるであろう」


――つまり、黎明星の乙女オリアは、自分の守護星だった皇帝と結ばれたってこと?もしかして、守護星が見つかったら、私もその人と結婚しなきゃいけなくなったりするの?帝国の民を守るために聖女が必要なのは分かるけど……結局は、聖女も国にとっては駒の一つに過ぎないんじゃないか。言いようのない寂寥感がじわりと胸に広がっていくのが分かった。


ふと、エルヴィンのほうを見ると、彼はわずかに眉を寄せ、沈黙のまま二人を見つめていた。


静かな謁見の間に、侍従の声が響く。

「――これにて陛下との謁見を終える」


胸の奥が、ざわめいている。

まるで、何か大きな歯車が静かに動き出したような――そんな予感だけが残った。


読んでいただきありがとうございます。

アレクセイは、年が近いこともあってエルヴィンとずいぶん気安い仲です。

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