表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/66

18 無能な妹は窮地に陥る

「星脈が地表近くを流れています」


魔力駆動車に揺られて、数時間。そして、歩くこと1時間。

私たちは、氷花の森(クリオフォリス)の奥深くへとたどり着いた。


リュシアンが笑顔で、巨大な木の根元を指し示す。

「アリア嬢、こちらに手をかざしてください。できれば、笑顔で」

「笑顔、ですか?」

「表情筋の動きが魔力の流れを円滑に――」

「先生、それは根拠がないと魔導委員会で結論付けられたはずです」

「そうでしたっけ?」


……会話が成立しているようで、していない。漫才コンビのような2人をしり目に、巨木に近づいてゆく。氷花の森には初めて足を踏み入れたというのに、なんだか懐かしい気配がする。木の根に手をかざす。冷たい――けれど、奥底にわずかな力の流れを感じて、胸の奥がじんわりと熱を帯びる。


セレスの持っていた水晶球が、白く鈍い光を発し始める。白の光は強くなり、金、銀、紫など様々な色がその中に浮かぶ。

「魔力値、確認。……これはやはり、黎明星の乙女と同じ家彩(カラー)です……」


光が強まると同時に、私の脳裏に、ある映像が浮かんでくる。


伯爵邸の白薔薇。春の風。

少年の笑い声。

―アリア、春になったら、一緒に花を見よう


誰?誰なの、あなたは。


その瞬間、セレスの持っていた水晶球が脈打った。

「別の魔力を感知……!これは、……虚星(アストラ・ヴォイド)と思われます!」

セレスの声が震える。


そのとき、上空から黒い雲が集まり、森を覆い始めた。瘴気だ。闇は広がり、どこからか、一体、また一体と魔物の影が現れる。


エルヴィンが剣を抜いた。

「――理を開き、我が誓いを聞け。魔力剣義(グラキエス・オース)

凍てつく刃が闇を裂き、舞い散る氷片が星のように光を放った。


続いて、リュシアンが両手を掲げる。

「――理を開き、我が誓いを聞け。熾天の光環(セラフ・オーブ)

瞬く間に、空へと幾重もの光の輪が広がる。半透明の結界が天を覆い、瘴気を押し返す。降りそそぐ光は、まるで天使の羽のように白く輝いていた。


だが――それでも、闇は止まらない。瘴気は形を変え、こちらへ迫ってくる。咆哮とともに、六足の魔物が炎を吐きながら躍りかかってきた。エルヴィンの剣が閃き、黒き魔物を一閃に断つ。氷の残滓が軌跡を描く。背後では、セレスや騎士団員たちも次々と魔物を斬り伏せてゆく。だが、斬っても斬っても、影は止まらない。裂けた瘴気の隙間から、次々と新たな獣が這い出してくる。


――そのとき。騎士の刃をすり抜けた魔物が、一直線に私へと跳びかかってきた。


「アリア!」


冷気を帯びた疾風が頬をかすめる。鋭い氷刃が閃き、魔物の咢が空を裂いた。私の前に立ちはだかっていたのは――エルヴィン。私を庇いながら、そのまま魔物を一閃に断つ。砕けた氷剣の残滓が光の粒となって散り、黒い影が崩れ落ちた。見ると、紫紺の外套は裂け、腕から赤が滲み出している。


「お義兄様……!怪我を!」


駆け寄る私に、エルヴィンはわずかに首を振る。

「おまえが無事で、良かった」


「――アリア嬢、早く逃げてください!」

リュシアンの声が響く。上空では、黒い瘴気が渦を巻き、リュシアンの防壁結界を押し潰そうとしていた。


このままでは、飲み込まれてしまう。

悔しさがこみ上げる。私に、みんなを守る力があれば――


――そのときだった。


「光を、取り戻せ」

その声は、私自身のものだった。


まばゆい閃光が森を包み、そして――世界が静止した。

読んでいただきありがとうございます。

次回は、アリアの謎が明らかに。


リアクション、ブックマークしてくださった方、いつも&この度はありがとうございます!

大変励みになっております。

毎週月曜・水曜・金曜に更新しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ