14 無能な妹は客人を迎える
魔力ゼロのはずだった私・アリアは、
魔力測定の儀でなぜか眩しい“謎の光”をぶっ放してしまい、
帝都魔導院の皆様をざわつかせてしまいました。
帝国最強の騎士と名高いお義兄様のエルヴィンは、相変わらず過保護だし、
「この先どうなるの?」と不安な私を待っていたのは
――帝都からのお客様でした。
――世界の理が、またひとつ、乱れた。
帝都魔導院がある白く巨大な塔の中。何十にも封印魔術が施され、選ばれし者しか立ち入ることのできない部屋で男がつぶやいた。月明かりが男を照らし、その長く白い髪を神々しく照らす。男は手に持った石板を持ち食い入るように見つめた。
「なぜだ。なぜ星脈の乱れが止まらない。まさか、封じられたはずの“虚星”が、再び息を吹き返したというのか。やはり、あの家を頼るほかないのか――」
◇◇◇
――さて、話を現実に戻そう。
いや、戻させて。今朝から屋敷がピリピリしてるんです。
騎士団の訓練見学以来、なぜかエルヴィンお義兄さまの機嫌の悪さが天井を突き抜けてまして。
屋敷じゅうに結界魔術が張り巡らされ、近衛騎士や侍女たちにも「虫一匹入れるな。万が一入り込んだ際は焼却処分でかまわん」と指令済み。
アザル公爵領があるノルディア地方は風光明媚な観光地としても知られていて、屋敷からすぐの距離に林があったりするから、虫一匹入れるな、なんてのは無理だと思うんだけど……お義兄様がそんなに虫嫌いだったなんて、知らなかったわ。
「サラサ、なんでこんなことになっちゃったのかしら?」
「半分はエルヴィン様、もう半分はアリア様のせいですわ」
「え?私、何かしたっけ!?別にお義兄様の執務室に虫をけしかけたりとかしてないけど!?」
「……はぁ。その鈍感さがすべての元凶なのですわ」
私の当初の計画では、女性嫌いを克服したエルヴィンには心優しき妻ができて、用済みになった私は今頃、田舎の村に引っ込んで悠々自適のスローライフを送っている予定だったのに……嗚呼、どうしてこうなった……?思わず、刺しかけの刺繍を強く握りしめてしまい、針が指に刺さりそうになる。
と、そのとき屋敷の入り口で、低く通る声が響いた。
「我らが深き尊き黒曜星の命により参上いたしました。アザル公爵閣下とアリア嬢に、謁見の栄を賜りたく存じます」
黒曜星っていうのは、今の王様の家彩ってことよね?王様直々に頼むって、そんな大事な要件ってなんなの!?
こっそり螺旋階段の上から玄関ホールを見下ろすと…なんと“水晶球クラッシュ事件”の現場監督こと、魔導士セレス=ヴァルナローデンがいた。まさか、いまさら水晶球を弁償しろとか言いにきたんじゃないよね?あれは故意じゃないのよ。事故なのよ。
慌てて階段を降りると、すでにエルヴィンが玄関ホールに立っていた。
あの背中。冷気のオーラ。はい、出ました。氷刃公モード。
「……その件なら、宰相府からの通達で承知している」
「アリア嬢の魔力を再測定させていただきます。帝都魔導院院長閣下が直々に行います」
……私の魔力を再測定?そのために帝都からわざわざ“魔導院のトップ”が来るってどういうことなの?普通は部下に任せるでしょ。社長が自らコンペでプレゼンするレベルの最重要案件ってこと?
と、思ったその時、“院長閣下”が静かに歩み入ってきた。
――眼に飛び込んできたのは、まばゆく白い光。
その神々しさに、私は思わず息をのんだ。
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次回は、新キャラの登場です。
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