表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/68

01 目覚めたら、完璧すぎる義兄がいました

初めての作品です。皆様に気に入ってもらえたら、嬉しいです。

誤字脱字などありましたら、申し訳ございません。

朝なのか夜なのか、もうわからなかった。

蛍光灯の光がまぶしくて、パソコンの画面が二重に見える。


私――藤原有紗(ありさ)、22歳。広告代理店勤務。

夢もやりがいもとうに枯れて、今はただ“納期”という神に仕えている。


「有紗ちゃん、修正まだ? クライアントから催促来てるよ」

「はい……いま、データ送ります」


上司の声はいつも通り冷たくて、

社内チャットには“お疲れ様”よりも“再修正”の文字の方が多い。


時計を見ると、午前二時。

もう帰る電車なんて、とっくにない。

冷めたコーヒーの味しかしない夜。


「……あの星の下なら、もう少し楽に生きられるのかな、お母さん。お父さん」


オフィスを出て、夜風に当たった瞬間。

そんな独り言が漏れた。

空には、やけに明るい星が一つ。

どうせ明日も会社に行くだけなのに――少しだけ、それを見ていた。


横断歩道の信号が青に変わる。

歩き出した瞬間、視界が真っ白になった。


◇◇◇


まぶしい。白く、すがすがしい光を感じて目を開ける。

さらさらという感触が皮膚に伝わり、いつのまにか心地よく肌になじむ寝間着を着ていることに気づく。

どうやら私はベッドの中にいるらしい。


「……ここ、どこ?」


思わずベッドから起き上がると、立ちくらみがしてよろめいた。天蓋付きのベッド、中世ヨーロッパの貴族の邸宅にありそうな家具の数々。学生時代、フランスへの貧乏旅行でヴェルサイユ宮殿に行ったとき、こんなの見たなぁと思っていると、大きな鏡にひときわ華奢な紫色の髪の娘が映っていた。


「え……ちょっと待って。なにこれ」


紫の絹糸を束ねたような髪。光を集めるたびに淡く透ける薄碧の瞳は、まるで宝石のよう。まだあどけなさが残るけど、いわゆる絶世の美女だ。ってこれ、私?もしかして、今流行りの異世界転生ってやつですか?


ふつうなら、パニックになってしかるべきだが、通勤の電車内で異世界転生もののゲームをするのだけが楽しみの限界社畜OLをなめてもらっちゃ、困る。いつだって異世界に来る心づもりはできていたんだから。


そんなことを考え、すこしうきうきしていると、ノックの音がしてしずしずと女性が入ってきた。服装を見るからに、お付きの侍女か何かだろう。


「お目覚めですか、アリア様」


アリア。私の名前?


「まもなく、エルヴィン様がお見えになります」


エルヴィン?誰それ?


少しおびえたような彼女の表情が気になり、口を開こうとした瞬間、ドアが静かに開いた。


深く澄んだ碧の瞳に、濃紫の髪。肩へと流れるその髪は、光を受けるたびに冷ややかな艶を帯びる。線を引くように整った目元、陰影の冴えた横顔、仄かな光さえ鋭く返す頬の輪郭――。


その美貌に、思わず息をのんだ。


「気が付いたか?私は、エルヴィン=ナムタリウス=アザル。この館にきたとたん、気を失って倒れてしまうとは、ここに来るのが心底嫌だったと見える」


あれ?なんだかしゃべりにトゲがありませんか?そしてあなた様は、いったい私とどのような関係で?


冴えわたる美貌とうらはらの、冷たい表情にひやりとしたものを感じて、聞きたいことをぐっとこらえ、ひとまずここは謝っておくことにする。


「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


エルヴィンは少し怪訝な顔をしたが、すぐまた冷ややかな表情に戻り「どのみち、おまえは公爵家にとって何の役にも立たぬ。何をしようが勝手だ。だが、(ハウス)の顔に泥を塗るようなことはするな」と言い捨て、部屋を出て行った。


……塩対応って、異世界にもあるんだ……


緊張がとけたのか、急な眠気が襲ってきて、再び私はベッドに倒れこんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ