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第四章:ヒロインを助ける、不器用な悪役ムーブ

 私は、だるま(中身ってば商人の悪霊)から聞いた情報に戦慄していた。


「イザベラ様、リア様にかけられた呪いは、魔力によって少しずつ精神を蝕み、最終的には呪い殺してしまうほどの強さですぞ!」


 呪いの道具は、リアがアルベルト王子に贈った「愛のお守り」。しかし、黒幕は、それに巧妙な呪いを仕込んでいたのだ。このままでは、ゲームのシナリオどころか、リア自身が危険にさらされてしまう。


(私が断罪される前に、リアが呪い殺されるなんて、絶対ダメよ! 呪いを解くには、まず呪いの道具を破壊しないと……!)


 私は、悪霊たちに協力を仰いだ。


「そこのクマさん。あなたの力で、リア様のお守りを破壊してさしあげなさい!」


 私が呪いの力で悪意に満ちた言葉を吐くと、木彫りのクマ(中の人は猟師の悪霊)は、怯えたように私の言葉に従おうとしない。私は、必死に心の中で叫ぶ。


(違うの! 壊してほしいのは、お守りにかけられた呪いだけ! リア様に危害を加えてはいけないわ!)


 私の思いは届かない。このままでは、悪霊の力でリアに危険が及んでしまう。


 その時、脳内に穏やかな声が響いた。こけし(中に入ってるのは乙女の悪霊)の声だ。


「イザベラ様、私に任せてください。私の力で、リア様の心の奥底にある、呪いの核を探し出してみせます」


 こけしの力は、人の心の機微を読むこと。彼女の力で、リアの心の闇を読み解けば、呪いを解く手がかりが見つかるかもしれない。


(ありがとう、こけしさん! 頼むわ!)


 私は、こけしをリアの近くに忍び込ませるべく、騎士団長ライルに声をかけた。


「ねえ、ライル様。この不気味なこけしを、リア様に『呪いの道具』として贈ってさしあげなさい!」


 私の悪意に満ちた言葉に、ライルは眉をひそめた。


「イザベラ様……いくらなんでも、それは……」


「あら、ご不満かしら? 騎士団長は、私の命令も聞けないの?」


 私は、精一杯の悪役ムーブで、彼を威圧した。すると、彼は観念したように、こけしを受け取った。


「分かりました。ですが、リア様が怖がらないように、私が責任を持って説明します」


(違う! そうじゃない! そのまま渡してほしかったのに!)


 ライルは、私の言葉を「嫌がらせ」ではなく、なぜか「リア様に何かを託そうとしている」と勘違いし、私の言葉とは違う形で行動してしまった。しかし、これも「なりゆき」だ。結果として、こけしはリアの元へと届けられる。


 そして、その日の夜。


 私は、フェリックス様から受け取った呪いを解くための古書を読みながら、悪霊たちと作戦を練っていた。すると、脳内にこけしの声が響いてきた。


「イザベラ様、呪いの核を見つけました! 呪いをかけたのは、リア様の親友を装った、学園の女子生徒です。リア様の純粋な心を嫉妬し、呪いをかけたようです」


(やはり、リアが呪いをかけられていたのね……!)


 私は、呪いの解き方を読み解き、悪霊たちに指示を出す。そして、翌日。私は、呪いをかけた女子生徒の前に現れた。


「あら、あなたの顔は、まるで悪魔が取り憑いたかのように醜いですわね」


 私の言葉に、女子生徒は怯える。その背後には、だるまの悪霊が、私の言葉を補強するように、彼女の悪事を記した情報を浮き上がらせていた。


「私のことを悪役だと言うけれど、あなたが本当の悪役なのよ!」


 私の言葉は、呪いのせいで、ひどい罵倒に聞こえてしまう。


「ひぃ! 違う! 私は、ただリアが羨ましかっただけで……」


 女子生徒は、悪霊たちの力と、私の言葉の呪いに晒され、観念したように全てを自白した。そして、私の呪いの力を利用し、お守りにかけていた呪いを解く儀式を始める。


 儀式は成功し、リアのお守りから、黒い呪いが解き放たれていく。その呪いは、まるで生き物のように形を変え、私を襲ってきた。


「くっ……!」


 私は、呪いの力に耐えながら、必死に呪いの道具を破壊しようと奮闘する。


 その時、フェリックス様が私の隣に現れ、静かに言った。


「イザベラ様、あなたの呪いを解くために、これが必要なのでしょう?」


 彼の掌には、呪いを解くための聖なる石が握られていた。


(フェリックス様……! どうしてこれを……!)


「イザベラ様は、不器用な方ですから。こうでもしなければ、本当に助けを求められないと思い、探しておりました」


 フェリックス様の言葉に、私の頬を熱いものが伝った。彼はずっと、私の行動の裏にある真実を、見抜いてくれていたのだ。


 私は、フェリックス様の助けを借りて、呪いを解く儀式を成功させた。呪いが解けると、私の言葉は、やっと素直なものへと戻った。


「ありがとう……フェリックス様……」


 呪いが解けたリアは、安堵の表情で、私とフェリックス様を見つめていた。彼女は、私の真意をすべて知り、私に心からの感謝を伝えた。


「イザベラ様……あなたは、私を、世界を救ってくださったのですね……」


 悪役令嬢として断罪されるはずだった私が、まさかの「なりゆき」でリアを救い、フェリックス様との絆を深め、そして、呪いという最大の枷から解放された。


 こうして、私の「悪役」としての人生は、新たな局面へと突入するのだった。

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