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頭痛、異世界。


 ──何処かの森の中、鳥達もさえずらない静かな森。

 もう足が動かない。

 微かに開いた瞳で目の前の敵を見つめる。

 狼に角が生えた様な風貌、日本じゃ見る事の無い見た目。

 

 ──俺はどうやら、憧れの異世界に転移した様だった。

 だけど、序盤からハードな奴と出会ったみたいで。

 能力も何も無い、素の状態で敵と出会ってしまった。

 

 狼?は俺に近付いてくる、俺は必死に後ずさりするしか無かった。

 奴が遠吠えをする、仲間を呼んでいるのか、はたまたここから出ていけと言っているのか。


 出て行く気力もない、俺はただ目の前の奴に殺されるのを待つだけだった。

 憧れの異世界に行けたのに……そう思いながら、諦めて目を閉じる、そんな時だった。


「君にここで死なれたら困るんだよね……これから、面白い演目が見れそうなんだ。……君に力を貸してあげよう、この世界に『存在』した頃の君の力……その新芽を」


 何処からともなく、耳元からそんな声が聞こえる。

 すると突然、俺の体は活力に満ち溢れ始めた。


 ──目も開ける、体も起こせる。

 そう確信し、俺は立ち上がる。

 しかし状況は変わらない、目の前の狼らしき相手に為す術はない。


 そんな時、また声が俺の耳元で囁き始める。


「力の使い方は簡単さ、まずは『力を使いたい』と祈るだけ。そして手に力を注ぎ込む感覚を意識するんだ。たったそれだけ、頑張ってね」


 無責任な事を言いながら声は消えて行く。

 俺は声に従い、心の中で力を使いたいと何度も連呼する。


 そんな時にも狼はジリジリと俺に近寄る。

 焦りながらも、何度も連呼する。


 すると体が熱くなり始め、心臓がバクバクと鼓動し始める。

 呼吸を鎮め、手に意識を集中させる。


(手に意識を集中って言われても、わかんねぇよ……! でも、やるしかない……!)


 俺は手に心臓の鼓動を流し込む様なイメージで意識を集中させる。

 すると俺の掌は鈍く光り始め、そして空気を切り裂く様な風の音を響かせる。


 どうして俺はこんな事が出来るんだろうか。


 どうして俺はこんな場所にいるんだろうか。


 狼は俺の掌で鳴る風切り音に少し脅えたのか、さっきの俺の様に後ずさり始める。

 今なら少し考える余裕もありそうだ。


 ………………


──────


「クソッ……独り言しながらゲームやるの、楽しいけど集中力が微塵も無くなる……っ!」


 朝、休みの日。

 ゲームに勤しむ俺、名前はさえばれい。

 冴える、冴えないの冴。

 鳥の羽の羽。

 礼儀やお礼の礼。


 合わせて冴羽礼、親は礼儀を欠かさない優しい子に育って欲しいって名目で付けたらしい。

 そんなこんなで名乗りはこの程度にして、異世界に転移?する状況に入る前の状況の説明をしよう。


 俺はその頃、異世界転生系小説が元ネタのアクションゲーム……アイビー・ディスカバーをプレイしていた。


 異世界系小説が元ネタとは思えない高難易度、言わばメルド系。

 メルド系ってのは高難易度アクションゲームのメルドアイズが元ネタで、その派生系がメルド系……あっ、流石にオタク過ぎるか、ごめん。


 話を戻して……かく言う俺は異世界系大好き!

 異世界転生、転移小説も……日常系も、料理系も、バトル物も大好きだ。

 昔、自分でも書いてはみたが……文才が無さすぎて評価が付かず、諦めて読む側に徹する事にしたのだった。


 異世界に転移、転生したら何がしたいかを書き留めてノートに纏めるくらいには熱中している。

 まぁ、有り得る訳は無いが……夢を見るくらいは自由だ。

 

 色々話したが、結局纏めると……俺は弩級の異世界オタクって事だ。

 異世界ライトノベルも色々買ってあるし、ある程度は知っている自負はある。


 まぁ、色々言ったけど……特に何の変哲もない毎日を送っていた訳だ。

 そんな時突然頭痛がしたんだ。


 酷く頭が痛む、偏頭痛持ちだがこんな痛みは初めてだった。

 荒く呼吸をする、呼吸を整えようと必死に頭を抑えるが、効果は無い。


 何処かから声がする、知らない人の声。


「──ライアが居れば百人力だよ! えへへ、あたし……ライアが生きててくれて、とっても嬉しい!」



 痛い、頭が痛い。

 ライア? 誰だ。



「──リーベル、お前と言う奴は……ふっ、私もリーダーとしてお前の諦めない意志を見習いたいよ」



 リーベルも誰なんだよ……!

 何度も頭の中を言葉が交差する、痛い……!



「──ライア様、私は……最期まで、貴方にお供します! 貴方は私の、憧れですから……!」



「──我はライア、貴様を認める事にしよう。神としての生涯、貴様の様な者とは出会った事が無い。我が残りの人生、いや……神生を貴様と共に生きよう」



「──さようなら、ライア・リーベル。次の君は凄く良い舞台の演目になりそうだ。次の演目は、そうだな……つゆ知らぬ君、何思ふ。と名付けてみようか?」


 痛みで目を開けず、そして声を荒らげ……。

 痛みが少し引いて、もう一度目を開く。


 俺の体が魔法陣の様な物に包まれ始め、体が段々透けていく。

 その時の俺は恐怖で汗と震えが止まらなかった。


 そして、完全に身体が透明になり切った所で意識が途切れる。

 意識を取り戻し、目を覚ますと……突如そこには深い森の風景が広がっていた。


 そして、目の前には……不運にも、俺を襲って来た狼らしき奴が居たんだ。


──────

 

 ここまでが、俺がここに来た経緯。

 理由もわからない、意味がわからない。


 とにかく、今は生きる為に全神経を使わなければならないのだろう。

 

 ──俺は掌を狼に向けると、掌で球体の様な物が形作られる。

 それを鷲掴むと、狙いを定め狼に投げつけた。


 投げた風の球体は、狼に見事命中。

 かまいたちを起こしながら、狼の体に傷を付けた。


 しかし、それに逆上したのだろう。

 狼はこちらに勢い良く向かってくる。


 さっきの球を作るのにも少し時間がかかる。

 噛み付かれる、そう思った時だった。


「あぶな〜い!!!」


 活発そうな女の子の声がすると、狼の横腹を飛んで来た槍が貫いた。

 奴はぐったりとして倒れ込んでしまった。


「いえ〜い、命中〜! 君、大丈夫? ファンリルに襲われるなんて、運無いね〜。一人で森の探索は危ないよ?」


「ファ、ファンリル……?」


「昔のフェンリルって魔物の偽物みたいな見た目してるから、ファンリルって呼ばれてるの。冒険者の中じゃ一般常識だよ!」


 あまりの情報量の多さに、俺の理解が追いつかない。

 しかし……俺は、助かったって事で良いんだろうか?

「続きが気になる!」

と思ってくれた方は、ブックマークや画面広告下の☆で評価してください。してくれたら、とても、嬉しい。

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