能力を育てる?
初めて自分の意思で能力を発現させたセバスの行方は……。
物を引き寄せるよりも弾き飛ばす方が簡単らしい。
引き寄せるには物に紐を掛けて引っ張るイメージだから、手元に来るまで集中力を継続する必要がある。
一方、物を弾き飛ばすのはその一瞬に集中すれば良いらしい。
弾き飛ばす方向に指向性を持たせられるかはこれからの検証が必要だ。
セバスが初めて能力を使用した時、ナイフとフォークを俺から弾き飛ばしたのもこの力らしい。
今度の検証はセバスと俺が同じ向きに座っている。
対面だと万が一飛ばしたブロックが直撃すると危険だからだ。
今度のブロックに俺の顔写真は貼っていない、貼ってあるのは凶悪犯の顔写真だ。
その方がセバスのモチベーションがあがるらしい。
一度発現させたことがあるからかもしれないが、セバスはあっさりと発現させた。
同時に2個弾き飛ばすのは厳しいが、間を開けずに複数のブロックを弾くことには成功した。
ブロックのような軽い物から小石や金属球のような物も弾けるようになった。
まだ、弾かれたブロックは机の端から落ちてしまうくらいの威力しかないが、いずれ威力が上がることを期待しよう。
これからの検証は方向性をどうするか。
これまでに発現した2つの能力の底上げを図るか? それとも他にどんな能力があるかを検証するか?
現状は「見世物」の域を出ていない。それを「使える」能力に底上げするか、器用貧乏になるか?
天晴宗の庇護が欲しいなら、五条院が求める能力を開祖もしくはミコに発現させることが必要だ。
それにはどんな能力が発現する可能性があるかを検証する必要がある。
しかし、俺の護衛としての力を求めるなら「使える」能力に育てなければならない。
セバスの能力が周囲にバレるまでは能力を育てる方がいざという時に俺の助けになるかもしれない……。
とりあえずは能力を育てていくことにした。
セバスが初めて能力を発現してから1か月、発現の負担はかなり低くなったようだ。
発現までの時間もかなり短くなり、1秒以内には発動できるようになった。
重量物はまだ少ししか押すことができないし、引き寄せるのはできていない。
「育てる」のは筋トレと同じで、やればやるほど上達していく。
筋トレほどの成果は出ないし、プロテインやステロイドのような早道もない。
普段の生活の合間に短時間でも発現させることが重要だ。
セバスも普段はカネルに執事としての心得を教わりながら、合間合間に能力を育てている。
カネルが少し羨ましそうだが、セバスが成功したらお前への移植も検討しよう。
その場合には、カネルの細胞を使ってSP器官を作成する必要がある。
俺の細胞から作ったSP器官だと拒絶反応が起きないという確証はないからな……。
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