マイクローンが目覚める?
彼はどんな目覚め方をするのか?
例によって、彼はベッドで横になっている。
各種計測機器を身に付け、意識が戻るのを待つ。
折角のCL体だ、是非とも移植を成功させ検体L(SP器官)の機能を解明したい。
解明した暁には引き続き執事として俺に仕えてほしい。
彼の名前は……やはり、『セバス』! 執事といえば定番の名前だ。
実際には中々お目に掛かれないのだが、『セバス』と呼んでみたい。
計測機器によると体調は安定している。
数日以内には目覚めるだろう。カネルと同じで基礎代謝が高いから目覚めたときにはエネルギー不足になっているはずだ。
カネルが飲むような脂質・タンパク質・ガムシロップの特製ドリンクを用意しておく。
最初に口に入れるときはスプーンで飲ませてやるけどな。
勿論、寝てる間も点滴で栄養補給は行うが、それだけでは基礎代謝を賄えないと思う。
指が動き、瞼がピクピクしている。
いきなり目が開き、体を起こして俺を見て
「おはようございます、ご主人様。申し訳ありませんが、何か食べ物を頂けますか?」
えっ? なんで? こいつは最初から流暢にしゃべれるのか?
「おお、ちょっと待て」
準備していた特製ドリンクをスプーンで口に流し込むと、彼は目を見開き、俺からジョッキを奪い取り一気に飲み干して……むせた。
ガラス製ではなく、強化アクリル製のジョッキにしておいてよかった。ガラス製だったら割れていたかもしれない。
背中をさすり、
「大丈夫か?」
「失礼しました、ご主人様。渇いた体に染みわたりました」
「慌てなくてよいから、ゆっくり休め。お前には重要な役割が待っているんだ」
「承知しました」
彼は再び眠りについた。いきなり体を動かし、初めての食事を摂ったのだ、休むことも必要だろう。
しかし、いきなり暴れるようなこともなくて助かった。
彼の力で暴れられたら止められないからな。
でも、いきなりしゃべったのには驚いた、過去の実験ではなかったことだ。
カプセルでの教育の効果か俺への忠誠心はMAXだ。
俺のクローンということもあって記憶の一部が引き継がれているのか?
これはかなり楽かもしれない。
雑務をこなしているカネルに彼が目覚めたことを伝えた。
「彼は大丈夫でふか?」
「ああ、俺と同じ遺伝情報を持つクローンだからかもしれないが、とりあえずは優秀だ」
「ご主人様と同じなら優秀に決まってるでふ!」
「ただし、まだわからないこともあるかもしれないから先輩として彼の面倒を見てやってくれ」
「了解でふ! カネルが先輩でふ♪」
「彼の名前は『セバス』だ。」
「『セバス』でふね」
もう少しセバスの体調等を観察して移植手術の日を決めよう。
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