これは奇跡なのか?
彼女の変化は……
今日の実験に備えてたっぷりと眠った俺はマウス達に少な目の餌を与えた。
念のため、全てのマウスの前にギリギリ届かない距離でキャラメルを置く。
俺はスカーレットを集中して観察した。勿論、全部のマウスの行動を映像として記録している。
スカーレットはキャラメルを見つめながらも俺のことが気になるのか、チラチラとこちらを見ている。
(俺が見ていると気が散るのか?)
自然な状態の彼女を観察するため、ゲージの斜め上に鏡を取り付けて観察する俺が視界に入らないようにしてみた。
彼女以外のマウスの半数は前足を伸ばし続けている。残りのマウスはキャラメルに届かないことが分かっても匂いが気になるのか、鼻をヒクヒクと動かしている。
そしてスカーレットは、微動だにせず真剣に見つめ続けている。
ん? 気のせいか一瞬キャラメルが震えた気がした。
気のせいじゃない!!
キャラメルが徐々に彼女に近づいてゆく。
今、俺は奇跡を目撃している……。
とうとう彼女はキャラメルにありついたのだ。
(もしかしたら、俺は超能力者を作り出してしまったのか?)
それは世紀の大発明でもあるが、一方では
(う~ん、これは危険だ。バレたら世界中から狙われるかもしれない……)
自分の身の安全についても考えた。
まだ仮説ではあるが、あの臓器は少なくともサイコキネシスを発現する器官なのかもしれない。
これまでに何人の自称超能力者がマスコミを賑わせたことか。そのほとんどがインチキである。
しかし、全てがインチキではなかったはずだ。人間の細胞の分化の可能性の1つとしてあの器官があったのだ。
もしかすると、歴史上の偉人の中にはあの器官が出現した者がいるのかもしれない。
『超能力』英語では『supernatural power』、あれをSP器官と名付けよう。
問題は他のマウスにも能力が発現するかどうかだ。
更に、発現したマウス同士の仔に遺伝するのか。
これから綿密な検証が必要だ。
スカーレットは頭部にSP器官を移植した。
今後の観察事項は
①頭部に移植した他の3匹には能力が発現するのか。
②彼女に物体移動能力以外の能力が発現するのか。
③腹部に移植したマウスには何か発現するのか。
である。
①もしかしたらスカーレットだけがSP器官とは関係なく超能力を発現したのかもしれないので、他のマウスにも発現することが期待される。
②スカーレットは他にも超能力が使えるのか。
(これは検証が難しいな、本当は人間で実験できればよいのだが……)
③SP器官が思考に影響するのならこちらは期待できないかもしれない
まずは他のHがついたマウスの観察だ。
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