観察してる?されてる?
未知の臓器を移植されたマウスにどんな変化があるのでしょうか。
日々、マウスの観察に明け暮れていた。
頭部と腹部、雄と雌で4種類のマウスが2匹ずつ、それぞれにHM1、2、HF1、2、AM1、2、AF1、2と番号を付けた。5日に1回採血をして、健康状態の確認をしているが数値に変化はない。
しかし新たな臓器を移植したのだ、何か変化が現れるはず……。
マウスの行動は24時間カメラで記録しているが、出来る限り俺自身の目でも観察している。
何か行動に変化が現れるかもしれないからな。
少しではあるが餌を食べる量が増えているかもしれない。
腹が減るということは移植した臓器が何らかの働きをしてカロリーを消費しているのかもしれないな。
問題は消費したカロリーの使い道だ。
動きが鈍くなったのか、動かない時間があるようだ。寝ている訳ではないらしい。
しかも、カメラ目線が増えている気がする。
実際に俺が研究室にいるときは俺の行動を見ているようにもみえる。
本来、マウスの視力はそれほど良くはない、人間の50分の1とも言われているのだ。
特に俺が間食しているときは、半分のマウスに見られている気がして少し気持ちが悪い。
注意して見ていると、俺が果物を食べるときは半分のマウスに見られているが、辛口スナックを食べているときは2匹だけが見ているようだ。
そのマウスにスナックを与えると喜んで食べているように見える。他のマウスは見向きもしないな。
マウスにも好みの個体差があるのだろうか? それとも、検体L’の影響で辛い物好きになったのか?
今後はいろんな食べ物を与えてみてマウスの嗜好を調べてみるか。
果物が好きなのはわかった、ナッツ類も好きなようだ。
俺が食べるものを全て与えてみた。カレーライスに焼き魚、酢の物やポテトサラダに梅干しやイカの塩辛なども与えてみたが塩気の強いものはあまり好まないようだ。
中でもキャラメルは全部のマウスが気に入ったようだ。
与えると前足がベトベトになるのも構わずに夢中で齧っている。
見ている俺もキャラメルを口に入れる。残りはポケットに入れると溶けることがあるので机に置いておく。以前、間違って洗濯してえらい目にあったからな。
怖いくらいに真剣な目つきでマウスが机の上のキャラメルを見ている。
あまりにも真剣な目つきをしているので怖くなって、冷蔵庫に冷たい水を取りに行った。
戻ってきた俺は違和感を覚えた。
さっき与えたキャラメルは全部食べたはずなのに、HF1がキャラメルを食べているのだ。
全部食べたと思ったのは俺の勘違いだったのだろうか?
試しに残りのマウスにキャラメルを追加して与えると、HF1が抗議するかのように「キーッ!」と俺に叫ぶ。HF1にもキャラメルを追加すると大人しくなり、ゲージの隅に置いて隠しているかのようだった。
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