見たことのないもの?
人間のさらなる進化の可能性ってないと思いますか?
iPS細胞を容器に入れて培養し、順調に増殖させるのは難しくはないがそれなりに手間がかかるし、イレギュラーなことが起こった研究対象は興味がそそられる。
廃棄も勿体ないので検体Lとしてそのまま観察対象とすることにした。
勿論他にも検体があり研究は通常どおり続けている。
学生時代からの習慣で、検体には俺から作ったiPS細胞を使っている。入手もしやすく、最も見慣れていて変化に気づきやすいからだ。
検体Lに変化があった。
今までに見たこともない細胞に分化したのだ。
これはどの臓器になるのだろうか?
特製培養液の中で通常とは比較にならないスピードで細胞が増殖し、臓器っぽい形になりかけている。
カネルが留学する前に臓器として機能してくれればよいが……。
検体Lが何かの臓器っぽい形となったが、こんな臓器は見たことがない。
iPS細胞は人間の全ての細胞に分化することができる。
しかし、既知の臓器にしか分化しないのか?
もしかしたら、人間には今まで知られていない臓器が発現する可能性があるのではないか?
検体Lの観察が最重要課題となった。
この未知の臓器の機能を調べるにはマウスの細胞で検体L’を作り、出来た臓器をマウスに移植することで臓器の機能を発現させるしかない。
問題はマウスの細胞で検体L’が作れるかどうかだ。
何が他の検体と違う分化をさせたのか?
何かが混入したわけではない。可能性は『衝撃波』と『電流』のどちらなのか、それとも両方か?
実験で確認するしかない……。
とりあえず『衝撃波』で検証してみよう。
あの嵐の日と同じようにiPS細胞を入れた培養容器の側で蛍光灯を破裂させてみる。
しかも、蛍光灯に過電圧を流して破裂させるのだ。さすがに雷と同じ1億ボルトは準備するのに設備費が掛かり過ぎるので、市販品の10万ボルトの高電圧発生器を買って試してみることにした。
これでだめなら特注で頼むしかない。
通販で買い物するにも一苦労なのだ。ダミーで借りているアパートに届けてもらい、それを船で島まで運び自分で設置しなければならない。
これも研究の秘密を維持するために必要なことだからあきらめるしかない。
装置はかなり重く、カネルがいなければ途方に暮れるところだった。
研究室に装置を設置し、早速検証に取り掛かる。
あ~、これはカネルの留学にかかってしまうな。
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