いきなりの昇進……?
カネルは無事に就職できそうです
カネルは「ハイクラス」でオーガさんやメイドの動きを学んでいた。
俺はカネルの復習に付き合っていたが、メイドとしてのスキルがかなり上がったのではないか?
閣下から連絡があり、またあの前室へと行き、メイドさんに髪型を整えられ、数日前に閣下と会談した部屋に入って閣下を待つ。
「金剛寺さん、書類ができあがったよ」
書類を手渡され、ゆっくりと中身を見る。カネルはどこの職員になるのかな?
うん? 見間違いか? 再度、書類を見直した。「外務省?」それは分かる。国外で仕事をするなら、妥当な役所だ。
問題は役職だ、『参事官』と書いてある。
「閣下、『参事官』って外交官ですよね? これは何かの間違いでは?」
「うん? カネルの存在はなるべく秘匿したいのだろう? 妥当な役職だと思うが不満かね?」
「いいえ、不満なんて、でもあまりにも待遇が良いので……」
「君の仕事上、機密を扱うこともあるだろう? カネルが外交特権を持っていた方が良いかと思ってね。だから、大使館の組織には組み入れずに私直轄の特命参事官という扱いにして、その行動は大使にも秘匿する」
確かに何かあっても、外交官と単なる外国人ではあらゆる対応に違いが出るだろう。
カネルには最適な役職かもしれない。
「ちなみに、給料も払われるが今度の依頼料の分割払いだと思って欲しい」
対外的にも問題はなさそうだ。
唯一の問題が、公的には俺は職業不詳の不審人物でカネルの方が偉そうなことだが……。
研究室に引きこもっている俺には大した問題ではない。それよりもカネルが国の権力への対抗手段を得られる方がはるかにメリットがある。
もし、もし万が一、カネルがトラブルに遭って反撃したとしても日本の官憲に手は出せないし、大使館に逃げ込めば絶対に安全だ。
それよりも通常はカネルが外交官であることは秘密にしないといけない、外交官がメイドをしているなんてその主人は何様かと思われかねない……。
「なんなら、金剛寺さんの研究室を在外公館にしても良いが、君はそこまでの庇護を求めてないだろ?」
分かったように閣下が笑顔で言う。
「そうですね。私はそこまでの庇護を求めていませんし、なるべく自由でいたいのです」
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