面接、即採用?
国家元首と話すことなんて普通はありえませんよね
「ドルグ閣下、ご機嫌麗しくご尊顔を拝し……」
通常、俺に依頼するのは担当者であり、国家元首と話すなんて初めてだ。
「金剛寺さん、あなたの研究により世界に我が国の偉大さを知らしめることができた。そんな堅苦しい挨拶は無しにして、もっと気軽に話して欲しい」
「最高権力者でいらっしゃるドルグ閣下に対して、私のような一研究者が気軽になんて……」
「私が良いと言っているのだ、誰も咎めはせん」
「不敬罪に問われるとかは?」
「金剛寺さんはどこの国の人なのかね? 今時、そんなことをしていたら国が立ち行かなくなるわ!」
閣下は大きな声で笑った。
これは本当に気軽に話しても良いかもしれない。
「実は内密のお願いがありまして……」
「全員、退室せよ!」
ボーガさんやメイドさんが部屋から出てゆく。
「これでよいかな? それで頼みとは?」
「電話でご賢察いただいたように、ここにいるカネルについての話です」
「ふむ、彼女が金剛寺さんが作り出した家人なのかね?」
「はい、それゆえ日本においては戸籍も住民票もなく活動に不自由する恐れがあります。ついてはこの国の住民としていただければ日本での活動に不自由はないかと思いまして」
閣下が少し考えた上で、
「ふむ、実際にカネルを初めて見たがトラブルを起こすこともないだろうし、彼女に我が国の身分を与えるのは構わないが、それだと滞在期限のない外国人になると思うが、それだけで自由に活動できるようになのかね?」
「そこは大人しく暮らしていればなんとかなると思います」
「物は相談だが、こちらからもう1件金剛寺さんに依頼をしたい。受けてくれたら、彼女を政府で雇用しよう。公的身分があればより安定した活動ができるのはないかね?」
「それはそうですが……よろしいのですか?」
それなら、カネルはこの国カニキスタンの公務員ということになり、業務として日本に滞在することになる。パスポートも公用旅券が発行され、いろいろ自由度が増すだろう。
「ドルグ閣下、依頼を受けさせていただきますのでカネルの件、よろしくお願いいたします」
「2、3日あれば準備ができると思うので今いる施設でのんびりしてほしい」
「ありがとうございます! ドルグ閣下」
「依頼については対象者を選抜している最中なので、追って連絡する」
これで、カネルはこの国の公務員ということになり、しっかりした身分ができた。
「金剛寺さん、カネルのことは安心してほしい」
「ありがとうございます」
俺は部屋を後にした。
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