機内食は出ますか?
パスポートを持たないカネルは本当に出国できるのでしょうか?
ベンツが専用ゲートに近づくと事前連絡がなされていたのか、守衛がゲートを開けてくれる。
本当にノーチェックで空港敷地内に入ってしまった……。
車はそのままフェンスに沿ってゆっくりと進み、プライベートジェット専用駐機場の端に停まっているいかにも富裕層が使っていそうな飛行機に向かっている。
飛行機から10mくらいまで近づいたところで停まった。
既に搭乗口は開いており、手前には男女の客室乗務員が立っている。
クロードが素早く後席のドアを開けてくれたのでカネルと共に駐機場に降りた。
ネットでしか見たことのない光景が目の前にある現実に頭が追い付いてこない……。
クロードがトランクからスーツケースを降ろして男性の客室乗務員へと手渡した。
客室乗務員たちが笑顔で俺たちを迎えてくれる。
機内に入ると機体中ほどに機首を向いた二つのゆったりとしたシートが並び、対面には少し小ぶりなシートが二つ並び、間には大き目のテーブルが鎮座している。
後方の開いたドアの向こうにベッドが見えた。勿論、客室乗務員たちの座席は前方にあり、後方に向いている。
スーツケースも所定の位置に収まったようだ。
俺たちの為だけの機内アナウンスが流れる。
「これより、当機は滑走路へと向かいます。シートベルトをしっかりとお締めください。ご用の際はいつでもお声をおかけください」
流石プライベートジェット、機内アナウンスも飛行機会社のものとはちょっと違う。
カネルのシートベルトも確認し、離陸を待つ。
滑走路へと向かい、1分も経たずに飛行機が加速を始めた。
たくさんの乗客が乗るのとは違い、短い滑走でフワリと離陸した飛行機はいつもより長く上昇を続ける。
旅客機よりも高い高度を飛ぶようだ、かなり下に雲が見える。
水平飛行に移るとシートベルト着用のサインが消える。
早速、客室乗務員から飲み物を聞かれ、アフタヌーンティーのセットとともにサーブされた。
お昼をビュッフェで済ませたためお腹は減っていないが、このセットは全部が美味い!
小さなサンドイッチから小さなスコーン、苺のショートケーキまでが光っている。
口直しのピクルスや小エビのカクテル、ローストビーフも上質なものだ。
それを交互に食べていると気が付いた時には完食していた……。
ちょっとお腹が苦しい……。
カネルには少し物足りないようだ。
「申し訳ないが、もう1セットあれば彼女に頼む、育ち盛りでね」
「かしこまりました、フルーツもお出ししましょうか?」
「多くの種類があると嬉しいな」
「承知いたしました」
フルーツはかなりの量が出されたがカネルは完食し、ようやく満足したようだった。
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