プライベートジェットだと?
カネルの身分が確定しそうです……。
いつもより長めです。
おもむろに電話を掛ける。
あの国のトップだ。(第1章 参照)
この前の仕事で偉く気に入られた俺は異例ではあるが、独裁者直通の連絡先を貰っていた。
国外の人間で知っているのは数十人もいないらしい。
何回か呼び出し音がなり、
「私だ」
低めの声が聞こえる。
「お久しぶりでございます。金剛寺です」
「おお、金剛寺先生ですか! その節はお世話になりました」
「ダルマンは頑張っているようですね」
「ええ、国際大会でもメダルを取っています。今度のオリンピックは期待できますぞ!」
ダルマンの活躍は気にかけていたが、順調なようだ。
「実は折り入ってお願いがありまして……。」
何かを感じたのか、スマホの向こうの雰囲気が変わる。
「面倒ごとですかな? できるだけ相談には乗りますが……」
「人間ひとりの身分が欲しいのですが……」
「先生の家人ですかな?」
「えっ? ご存じなのですか?」
なぜ、彼はカネルのことを知っている? もしかして、俺は見張られていたのか?
「いいえ、先生の技術なら人間を作り出すことも可能かと……。他国からの依頼なら、その国で対応するでしょう? 私にその相談ということは、とうとう作り出してはみたものの扱いが困るかと……」
「ご高察、恐れ入ります。メイドを作ったのですが、身分がないと不都合が生じまして……」
「そうでしょうね。では、私の方で身分を準備しましょう。先生の都合に合わせてプライベートジェットを向かわせます。メイドと二人で来てもらえますか」
「ありがとうございます! 今月中であればいつでも良いのですが」
相手の都合もあるから、少し余裕を持たせた予定を伝える。
「では明後日、お近くの空港に向かわせます。詳しいことはセカンデューから伝えさせます」
「それは助かります、ご連絡お待ちしております」
ふぅ~、流石にトップダウンの国は話が早い。
かの国とは大した国交もないし、身元保証が国のトップだ、これで安心できる。
机の上のボタンを押す。
「ご主人様、ご用でふか?」
すぐにカネルがやってくる。
「明後日、俺とちょっと飛行機で出かけるから準備をよろしく」
「かしこまりましたでふ!」
セカンデュー氏から連絡があり、俺の指定した場所まで車が迎えに来てくれることになった。
待ち合わせはいつもの草原ではなく、ちょっと離れた街なかを指定した。
折角だから、街で美味しいお昼を食べてカネルに経験を積んでもらおう。
夕食時に、カネルに提案してみた。
「カネル、明後日だけど朝早くここを出て、街でランチでも食べないか?」
「それは素晴らしい考えでふね!」
「多分、数日~一週間くらいだと思うから荷造りはしっかりしてくれ」
「了解でふ!」
俺も初めてのプライベートジェットで浮かれていた……。
国際線に乗るには空港で出国審査があるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
誤字・脱字の指摘、感想は大歓迎です。




