side カネル①
視点が変わります。
全身が温かい何かに包まれている。
身体が軋むような感じだ。
向こうにぼんやりと動いているものが見える。
この環境に馴染んでから一回包まれているものが無くなった。その後、口の周りに何かが着けられ、身体が求めているもので口の中が満たされる。飢餓感が薄れてゆく……。
◆◆◆
頭の中に様々な情報が流れ込んでくる。今の思考言語は日本語だ。
私は何者なのか?
創造主であるご主人様に仕えるために生み出された、ご主人様に絶対の忠誠を誓う者。
あらゆる知識が頭の中に渦巻く。全てはご主人様のために……。
◆◆◆
ご主人様は身の回りのお世話をされることを望んでおられる。醜いものを身近に置きたくはないだろう。私はご主人様に好かれなければ存在する意味のないもの。私の全てはご主人様のもの……。
寵愛を受けるために可愛らしく在らねばならない。
私の能力はご主人さまが与えてくれたもの、ご主人様の快適な生活のために……。
◆◆◆
私がいたのは培養カプセル、今はそこから出されて横になっている。
私に名前は無い。
◆◆◆
空腹感で目が覚めた。
隣ではご主人様が私を見ている。
私は碌な衣服も身に付けず、十分に身体が動かせない……。
「ゴシュジンサマ コノヨウナ スガタデ……」
「まだ、休んでいなさい。体の感覚が十分ではないだろう?それと、君の名前は『カネル』だ」
「カネル……」
創造主であるご主人様から頂いた大切な私の名前……。
歓喜に打ち震えながら、意識が薄れてゆく。
◆◆◆
飢餓感が本能に警鐘を鳴らし、意識が戻る。
目を開けると、
「俺のことはわかるか?」
「ハイ ゴシュジンサマ」
「体の調子はどうだ?なにか不具合はないか?」
「エネルギー ノ ホキュウガヒツヨウデフ」
朦朧とする意識の中でご主人さまに好かれるよう可愛らしさを演出する。
透明な液体の入ったカップをご主人様にいただいた。
甘くて濃度がついている。
飲み終えると濁った液体の入ったカップと交換していただいた。
こちらはかなりの濃度でドロッとしている。体が欲している全てが満たされる。
ご主人様の手を煩わせてしまった……。
「ありがとうでふ。ご主人様」
私はご主人様のために可愛らしさを前面にだすのでふ!
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