冷めたお茶?
今回は発熱のため、ちょっと短めです。
「ここから先は今まで以上に他言無用でお願いしたいのです」
「無論、依頼人の秘密は絶対に漏らすことはないが……」
「実は、男性に酷い目に遭わされたとはいえ、信者の大半は成熟した大人です」
「そりゃそうだろうな」
「お恥ずかしい話ですが、それなりの欲求というものから切り離せないこともあるのです」
「日本の寺でも厳しい戒律に隠れて『衆道』などの文化がある宗派もあるからな」
「女性同士で道具を使用しても満たせない部分もあるのです」
「それを皇皇子に満たして欲しいと?全信者を相手にするとミコの身体が持たないぞ?」
「ええ、まずは執行部役員限定とします。そうすれば役員の結束が一層盤石なものとなるでしょう。それに、秘密が漏れることは絶対にありませんから」
五条院が微笑むが、瞳の奥に冷たいものを宿しているように感じる。執行部役員代表としての覚悟は決まっているようだ。
納品物がどのように扱われようと俺が口を出すことではないからな。
酷い目に遭ってなければそれでよい。
「納品した物について俺が口を出すことはないから安心してほしい」
「はい。そうだろうと金剛寺様を信頼してお話しいたしました。皇皇子様を思いやってくださっていることが感じられましたので……ご心配されているかと」
「いや、俺は納品物に対して感情を抱かないようにしている。場合によっては臓器移植に使われるクローン作製などの依頼を受けるからな」
五条院が微笑む。
「抱かないようにしている。つまり、感情を抑えていらっしゃるのですね?」
(特に意識したことはなかったな……研究室にいたころからモノとしか見てなかったから……今回なぜ、俺は感情を抑えようとしたのだろうか?)
「ああ、そうかもしれない。今までは臓器や体のパーツの一部の納品だけだったからな。成人態で納品するとしても完全なクローンだから、そんな感情はなかったかもしれない。しかし、今回は初めて俺が作り出した精子と卵子を受精させて誕生から成長を見守ったので少し親のような感情が湧いたのかもしれない……」
すっかりお茶が冷めてしまった……。
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