さて、どのパーツからつくるか?
拙い文章ですが、リハビリなのでご容赦ください。
文系の人間ですので細かい描写や技術については片目を閉じていただければ幸いです。
「まずは足からつくるか・・・」
研究室についた俺は、保存びんの中の細胞からiPS細胞を作り出す。
さまざな薬品や処理を加えて筋肉や骨に分化させてその細胞を増やしてゆく。
三日後、培養カプセルの中に足の指が一本だけ浮かんでいる。
一週間後、くるぶしから先の部分が指が生えそろった状態まで成長した。
一か月後、太ももまでが完成したようだ。この状態は中々グロテスクな感じもするが、段々と慣れてくるものだな。
この程度まで成長すれば依頼人の要望を満たすことだろう。
片足だけでオリンピックに出場するのは難しい。
当然のことだが、培養カプセルには左右の脚が一本ずつ入っている。
あの依頼人と日程調整をしなければ・・・
依頼人の直通番号に電話をかける。
幸い、この案件は最優先事項らしいが移植先の準備もあるので一か月後以降にしてほしいとのこと。
移植後のトレーニング期間も必要なので、一か月後に依頼品を納入する約束をする。
それまでに過酷な負荷をかけて人類史上最高の脚に仕上げて見せよう。
各種コードが接続され、筋肉が脈動している。溶液自体は栄養で満たされていて疲労物質は速やかに排除され、循環経路の中で取り除かれる。このシステムによって人間には不可能な頻度でのトレーニングが可能となるのだ。
一か月後、太ももの周囲が95センチにもなろうかという足2本を培養液につけたまま、車に積み込む。今回の待ち合わせ場所は極秘の研究所、移植を受ける人間は準備万端で手術台の上にいるようだ。
俺が依頼を受けてからは、その選手は上半身のトレーニングのみに集中していたらしい。下半身の訓練に使う時間も含めてだ。つまり、常人の2倍の効率でトレーニングが進んだ。
さて、指定された場所へ行くと高い塀に囲まれた怪しい施設があった。中がどのくらい広いのかうかがい知れない。正門らしき場所に行くと銃を持った兵士が待機していた。連絡がされていたのか車のナンバーを確認の上、手に持った書類と俺の顔を見比べてそのまま中に進むよう指示される。
分厚い鉄の門を抜けて中に入ると中はかなり広い、まるで地平線まで敷地かと錯覚するような広さだ。あらゆるスポーツの競技場がこの中にあるようだ。いくつもの建物や体育館がある。その中でもひときわ大きくひときわ警備が厳重そうな建物に近づくと、ここでは守衛が持っているタブレットに掌を乗せるよう求められた。しかし、俺への対応は丁寧である。あの依頼人からそのように指示されているのだろう。俺はかなりの重要人物らしい。守衛の確認が取れるとシャッターが上がり、車ごと内部へ進む。
中では依頼人が待っていた。
荷台から大きなケースを下し、台車に乗せて依頼人の後ろについていく。
いくつもの扉を抜ける。その度にセキュリティチェックを受ける。それでも依頼人のおかげでかなりスムーズに進めているらしい。長い廊下を何回か折れ曲がり、研究室らしき場所で中身の確認を受ける。依頼された細胞から作られた物かの確認だ。培養液の中からサンプルを採取され検査機器にかけられる。
結果がでるまでしばらくかかる様なので、依頼人の案内で応接室で茶菓子とお茶をふるまわれた。
「品物のデキはどうですかな?」
「勿論ご要望以上のデキだと保証しますよ」
「それは楽しみだ!先生にも成果を見ていただきたいので、しばらくは滞在していただけますかな?」
暑苦しい肉体の依頼人に誘われる。遠慮したいところだが、失敗した場合の秘密保持を考えているのだろう。ここで拒否はできない。
「勿論、先生の生活にご不自由はさせません。この施設の中なら私に準じた待遇を保証しますよ」
「ほう、そこまでおっしゃっていただけるなら、お世話になりますか」
内心を隠し笑顔で握手をする。
「はあ~、しばらくは籠の鳥か・・・」
ま、次の依頼はないから良いけどさ。まあ、ここでの生活を楽しむとするか!
そうこうしているうちに検査結果が出たようだ。勿論、移植を受ける患者とDNAは一致している。
早速、移植を行うようだ。リハビリは短くてすむだろうが、その後にトレーニングが待っているからな。
移植はかなり順調に済んだようだ。本人の足を付け替えるだけだ。某空手家の切断された右手を繋いだ医師のような人間もいるからな。ここは国家最高の技術を持つ人間の集まりで設備も最高だ、失敗するわけがない。(もし、失敗したらその医師はクビだろうな、物理的に・・・)
三日もあれば感覚が戻り、一週間で動かせるようになるだろうな。二週間でリハビリが始まり、本格的なトレーニングは一か月後かな?その間も足を特製培養液につけて電気刺激によるトレーニングは継続されるようだ。
もしかすると三か月後には世界記録を出せるかもしれないな。
まあ、それまでいろいろ観察させてもらうか・・・
読んでいただき、ありがとうございます。