1号を納品?
ようやく納品にこぎ着けました。
まだ終わりではありません。
誤字脱字の指摘、感想は大歓迎です。
1号を睡眠薬で眠らせ、車椅子に座らせた。
体調は落ち着いており、すでに酸素マスクや計測機器は外されている。
苦労してクールーザーと小型船を乗り継ぎ、あの草原へ1号を運ぶ。
五条院涼花が既に待っていて、車椅子ごと運搬できるように専用の車両も用意していた。五条院も付き添うようだ。
「金剛寺様、本当にありがとうございました」
降りてきた運転手共々深々と頭を下げる。
「これで私たちはこの先も存続し、発展し続けることができます。引き続きの納品をよろしくお願いいたします」
車椅子を移動した1号は意識のないままお付きの女性により髪をまとめられ、身支度を整えられる。
五条院に「1号にはまだ流動食しか与えてないこと、しばらくは消化の良いものから与えること。言葉を認識できるかもしれないがレベルは不明、発声はまだ慣れていない。トイレの使い方を教えるまではオムツを使用すること」などの注意事項を伝えた。
1号は五条院と共に教団本部へ向かった。
得も言われぬ感情が湧いてくる。一年以上も見守ってきたのだ、これは親のような感情なのだろうか?
さて、気を取り直して2号以下も納品しなければ。♂の納品依頼は18年物だ、♀の納品が終わってから4か月後になる。先は長い。
研究室に戻った俺は一日だけ休養を取る。別にセンチメンタルになった訳ではないと思う。
そして2号をカプセルから出した。1号と同じ手順を踏み、ベッドへ寝かせる。2号以下は全く教育らしきものを施していないので若干心配だ。
微妙に個人差があるかもしれない、同じ手順で対応しているのに反応が違う気がする。双子みたいなものだから完全に同じとはならないのだろう。
数日して2号を五条院に納品する。
その際に1号の様子を聞くと教団にある隔離された孤児院のようなところで生活し、様々な常識を教わっているようだ。1号は聡明でとても新生児並の知能とは思えないとのこと。彼女のことを知る人間は一握りだ。
3号4号5号とそれぞれを数日おきに納品し、これで依頼の半分は達成だ。残りも概ね目途はついている。
あと4か月、♂の成長を見守る。
現在14歳相当に成長した♂は第二次性徴を迎え、髭も生えて体つきも成人に近くなった。これから先どんな環境が待ち受けているかわからないので、念のためにEМSの強度を上げて負荷を強める。目指すは細マッチョだ。
教団がどのような教育を施すのかわからないので、頭部の電極とカプセル内への音声により食事を摂ることと弱者を労わること、女性に関心を抱くようにすることだけは教育を施す。粗暴な性格でカプセルから出た途端に暴れだしたら堪らない。
女性ばかりの教団で唯一の男性だ。どのような生活が待っているのか?気にはなるが俺にはどうしようもない。
お読みいただきありがとうございました。