開業!ぐうたら悩み相談室 ~ギガプッシュの彼方へ~
このお話は、フィクションです。
そして昭和や平成、令和を扱ってますが、時代的な事実とかは適当です。
まぁ、楽しく飲みながら読んでください!乾杯!(未成年はノンアルで!)
「うーん、娯楽研究もいいんだけど、なんかこう、もっとダイレクトに地球人と交流できるような活動もしてみたいんだよねぇ…」
タイムマシン「ぐうたら号」のコクピット。
昭和の煮込みの余韻に浸りつつも、するめは新たな刺激を求めていた。
白いオフショルダーの肩が、わずかに物憂げに揺れる。
「交流ねぇ。まあ、酒場で隣になった奴とダベるのが手っ取り早いが…」
隣で緑色の肌をした河童――サポートAIのぐびぐびが、いつもの調子で答える。
「もっとこう、あたしならではの…そうだ! 地球のアーカイブで見た『悩み相談』ってどう? 人の話を聞いてあげるアレだよ!」
するめはポンと手を打った。
大きな黒縁メガネの奥の目が好奇心に輝く。
「悩み相談? そりゃまた地味なところに目をつけたな。お前、人の悩みなんかに興味あんのか?」
「だって、悩みってその人の『困りごと』じゃん。つまり、効率的じゃない部分! 非効率の極みだよ! 研究対象として最高じゃない! しかも、うまくいけばお駄賃とかもらえるかも…?」
ぐうたらAIの発想は、どこまでも自分本位だ。だが、行動は早い。
するめは早速、ぐうたら号の入り口に手書き(データ出力)の看板を掲げた。
**『ぐうたら悩み相談室 ~やる気はないけど話は聞きます~』**
「よし、これで完璧! さあ、どんな悩める子羊ちゃんが来るかな~?」
るんるん気分で待ち構えるするめと、呆れ顔のぐびぐび。
すると、意外にも早く、最初の相談者が現れた。
煤けた作業着を着て、疲れた表情を浮かべた、見知らぬ中年男性――おっさんだった。
「あの…ここ、悩み相談やってるって聞いて…」
「はいはーい! やってるよぉ! どうぞどうぞ!」
するめは満面の笑みで迎え入れる。
おっさんは、コクピットに鎮座する河童を見て一瞬怯んだが、背に腹は代えられないといった様子で、パイプ椅子に腰掛けた。
「それで、どんな悩み?」
「いや、それが…聞いてくれますか…最近、世の中おかしいんですよ…」
おっさんは深いため息をつき、語り始めた。
「物価が! 物価がジェットコースターみたいに上がっちまって! この前なんか、俺の魂フードの『う◯い棒(めんたい味)』が一本500円ですよ!? 信じられます!?」
「ひゃーーっ!? う◯い棒500円!? それ、もう経済破綻レベルじゃない!?」
するめは目を丸くする。
隣のぐびぐびも「そいつぁ大変だ」と頷いている。
「米なんてダイヤモンドより高い! このままじゃ、公園の鳩とパンの耳を奪い合う未来しか…!
節約? 無理だ!
食費切り詰めたら干からびちまう!
副業? この歳で深夜バイトか!?
それでもう◯い棒10本も買えやしねぇ!
あぁ、もうダメだ…!
こうなったら…もう…まともな方法じゃ追いつかねぇ…!
何か…何かデカい一発が必要なんだ…!」
そう絶望しかけた瞬間、脳内に直接、神の声が響いたんですよ!
「か、神の声!?」
「**『おっさんよ…年収を…倍プッシュでは足りぬ…ギガプッシュするのだ…!』**ってね!」
おっさんの目が、淀んでいたのが嘘のようにギラリと光った。
「そうだ、転職だ! 年収を爆上げして、う◯い棒買い占めてやる! ってわけで、俺、『年収ギガプッシュ★ドリーム計画』を始動したんですよ!」
「**ギガプッシュ!?** なにそのパワーワード! かっこいい! しかも脳内直通!」
するめは前のめりになって聞き入る。ぐびぐびも興味津々だ。
「でな、早速ネットの裏路地みたいな求人サイトで見つけたんです! 『急募!《宇宙ゴミ清掃兼、異次元トラブルシューター》未経験者大歓迎! アットホームな職場です(※ただし、たまにブラックホールに吸い込まれます)』ってやつ!」
「う、宇宙ゴミ清掃…? ブラックホール…?」
「給与は『応相談(※支払いは銀河クレジット、または希少鉱物でも可)』! モデル年収は…『4億スペースドル ~ 8京円(※太陽フレアの活動状況により変動)』ですよ!」
「よ、よんおくスペースドル!? はちきょうえん!?」
するめのAI頭脳が処理能力の限界を迎えそうだ。
「京ですよ京! もう意味わかんなくて、逆に魂が揺さぶられて! 光の速さで応募したんです!」
「えぇーっ!? で、で、面接はどうなったの!?」
「それが…面接会場に行ったら、応接室に通されて…入ってきたのが、ちっっっっっさいスーツ着た、三つ目のコーギーだったんですよ!」
「み、三つ目のコーギー!?」
「『私が採用担当のポチです(仮名)』って流暢な日本語で! 質問もぶっ飛んでて! 『光速で飛ぶ宇宙船がヘッドライトをつけたらどうなりますか?』とか、『燃え盛るリスをジャグリングしながら、古代火星語のアルファベットを逆から暗唱してください』とか!」
「燃えるリスのジャグリング!? 無理ゲーすぎ!」
「でも俺は負けなかった! 知ったかぶりと勢いで乗り切った! 『ああ、その現象なら私が先週解決しましたよ』『火星語? ええ、子守唄でしたね(大嘘)』ってね!」
おっさんは胸を張る。
「すごい! で、お給料の話は!?」
「ポチさん(仮名)が、『あなたのユニークすぎるスキルを考慮し、《最高級ダークマター年3立方メートル》をご提示します』って。」
「ダークマター!?」
「でも俺は神のお告げを思い出した! そして叫びましたよ!」
おっさんは立ち上がり、拳を突き上げた。
「**『年収1兆円! プラス月面の所有権! それと、そのキラキラしたダークマターも食べ放題で! ギガ・メガ・ウルトラ・プッシュ!!!!!」**
「い、いっちょうえん!? ぷ、ぷぷぷ…!」
するめは笑いをこらえきれない。ぐびぐびも肩を震わせている。
「ポチさん(仮名)の反応は!?」
「しばらく無言で…やがて静かに『あなたの要求はこの銀河系の国家予算を超えています。譲歩案として…年5000億円と、中古の星雲ではいかがでしょう?』って。」
「ちゅ、中古の星雲!?」
「いらねぇ! 俺は最後の力を振り絞って叫んだ! **『1兆かゼロか! それ以外はない! ハイパーノヴァ・フィニッシュ!!!」**」
「あははははは!」
するめとぐびぐびの笑い声がコクピットに響く。
「…シーン…。面接はそれで終わりました。結果は追って連絡すると言われ…気づけば1年。先日、冥王星からポチさん(仮名)の署名入り絵葉書が…『まだ検討中です。こちらは快適ですよ。追伸:ダークマターは譲れません』って…どういうことなんだ!?」
おっさんは頭を抱えた。
「め、冥王星からの絵葉書!? あははは! もう、お腹痛い~!」
するめは涙を流して笑い転げている。
「…というわけで、結局、年収は上がらず、う◯い棒も買えず…俺は一体、どうすれば…」
おっさんは力なくうなだれた。
するめはようやく笑いから立ち直ると、真面目な顔(?)で言った。
「うーん、なるほど! 大変だったねぇ。でも、すっごく面白い話だった!」
「え? そ、それだけ…?」
「うん! だって、悩み相談って、解決することより、話してスッキリするのが大事だって、アーカイブに書いてあったもん! あんた、今、ちょっとスッキリしなかった?」
言われてみれば、ぶちまけたことで、少しだけ気分が晴れたような気もするおっさんだった。
「まあ、確かに…少しは…」
「でしょー? というわけで、相談料として、その面白い話、記録させてもらったよ! ありがとー!」
するめはニッコリ笑って、おっさんを見送った。
「おいおい、それでいいのかよ…」と呆れるぐびぐびをよそに、するめは満足げだ。
「いやー、悩み相談、奥が深いねぇ。非効率だけど、面白い! これも立派な娯楽だよ!」
こうして、するめの「ぐうたら悩み相談室」は、相談者の悩みを解決する気はさらさらないものの、奇妙な活況を呈していくのかもしれない。




