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昭和の屋台での奇妙な夜

このお話、フィクションです。

そして昭和や平成、令和を扱ってますが、時代的な事実とかは適当です。

まぁ、楽しく飲みながら読んでください!乾杯!(未成年はノンアルで!)

初めての昭和の街

タイムマシン「ぐうたら号」を降り立ったするめは、目の前に広がる街の光景に目を輝かせていた。


「うわぁ……本物の昭和だ。」


ネオンが瞬き、屋台の提灯が揺れる。

行き交う人々は活気に満ち、どこかほっとするような雰囲気が漂う。

するめは思わず深呼吸をして、昭和の空気を体いっぱいに吸い込んだ。


「おいおい、するめ。昭和に来たってのに、ぼーっとしてるだけか?」


脳内に響くのは、おっさんAIの声だ。

空中ディスプレイに映るその顔は、いかにも口うるさそうである。


「これが『昭和』ってやつだよ。最高じゃない?」


「だから楽しんでる場合じゃねえんだよ。お前、娯楽研究しに来たんだろ?」


「まあまあ、研究の一環ってことで。」


そんな軽口を叩きつつも、するめは目をキラキラさせながら街を歩き出す。



屋台との出会い

するめが歩いていると、提灯の光に誘われるようにして一つの焼き鳥屋台にたどり着いた。

香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり、腹の虫がグルグルと音を立てる。


「いらっしゃい! 焼き鳥、どうだい?」


「お願いします!」


するめはカウンターの端に腰を下ろし、焼き鳥が焼ける音と屋台特有のざわめきに耳を傾けながら、

昭和の屋台文化をじっくり堪能することにした。


「これが昭和の屋台……本当に楽しい雰囲気だなぁ。」


「おい、するめ。昭和って言うのはお前の時代の区分けだぞ。この人たちにそんなこと言ったら不自然だ。」


「えっ、そうなの?」


おっさんAIの忠告に小声で驚くするめだったが、目の前でじっくり焼かれる焼き鳥の誘惑には勝てない。

数分後、香ばしいタレに包まれた焼き鳥が目の前に差し出された。


「お嬢さん、一本どうぞ。」


「ありがとうございます!」


するめは早速焼き鳥にかぶりつく。表面は香ばしく、中はジューシー。

タレの甘辛い風味が絶妙で、思わず目を閉じて味わってしまう。


「……これ、めっちゃおいしい。」


そんな彼女の様子に、隣のサラリーマン風の男性が笑いながら声をかけてきた。


「お嬢さん、一人でこんな屋台に来るなんて珍しいね。仕事帰りかい?」


「あ、えっと……まあそんな感じです。」


「そうか。最近は若い子がこういうところにあんまり来ないからな。でも、大将の焼き鳥は間違いないだろ?」


「はい! タレがすごくおいしいです。」


「そりゃ良かった。ここの大将は腕がいいからな。」


隣のサラリーマンが満足そうに笑うと、するめもほっと胸を撫でおろした。

この時代特有の人情味が漂う雰囲気は、彼女の緊張を解いていった。



初めての酒との出会い

そんな中、大将がカウンターに盃を置いた。

盃に注がれた琥珀色の液体から、ほんのりとした香ばしい匂いが立ち昇る。

それは、するめがアーカイブで何度も目にしてきた「酒」だった。


「お嬢さん、せっかくだから飲んでみなよ。焼き鳥にはこれが一番だ。」


「これが……酒……!」


するめの目が輝きを増す。


「おいおい、するめ。本当に飲む気か? 初めてだろうが。」


おっさんAIの心配をよそに、するめは盃を慎重に手に取った。

ゆっくりと口元に運び、一口飲む。


その瞬間、口の中に広がる芳醇な味わい。

ほのかな甘みとキリッとした辛さが絶妙なバランスを保ち、

体の奥からじんわりと温かさが広がる。


「……なにこれ……!」


思わず瞳を閉じ、その余韻に浸るするめ。

これまでアーカイブでしか知らなかった酒が、今この瞬間、現実の体験として彼女の中に刻まれた。


「うまい……これ、めっちゃうまい!」


その感動的な表情に、大将が満足そうに頷く。

「そうだろう。これが日本酒ってやつだ。米と水から生まれた、職人の魂だよ。」


隣のサラリーマンも笑顔で言葉を添える。

「お嬢さん、初めての酒が気に入ったみたいだな。いい飲みっぷりだ。」


するめは再び盃を持ち上げ、ほんの少し赤くなった頬で微笑む。

「……これが、人間が何千年も楽しんできたものなんだね。」


おっさんAIが少し羨ましそうに呟く。

「なあ、だから言っただろ。俺にも生体を作ってくれって! その感動、俺も味わいてえんだよ!」


「わかった、わかったってば。でも今は私が先に楽しませてもらうからね。」



酔っぱらいのおっさんとの攻防

するめが焼き鳥をつまみながら酒を味わっていると、隣の席の酔っぱらいのおっさんが絡んできた。


「おい、姉ちゃん。一人で飲むなんて、味気ねぇだろ。俺が付き合ってやるよ!」


するめはちらりとおっさんを見て、丁寧に答えた。


「ご親切にありがとうございます。でも、私は一人でこの状況を観察するのを楽しんでいるので大丈夫です。」


おっさんはグラスを掲げて、にやりと笑った。


「そんな冷たいこと言うなよ! 酒はみんなで飲むもんだろ? 乾杯しようぜ!」


困惑するするめに、おっさんAIがすかさず指示を飛ばしてくる。


「おい、するめ。ここは研究の一環だと思って聞き出せ! 質問攻めで行くぞ!」


「質問攻めね……わかった。」


するめは真面目な顔でおっさんに向き直り、声を落として切り出した。


するめの質問攻めがスタート

「ところで、乾杯ってどうしてするんですか?」


おっさんは一瞬キョトンとしながら、笑いながら答える。


「乾杯? そりゃ、盛り上がるためだろ。みんなで楽しくな!」


「なるほど。では、その盛り上がりはどのように形成されるんでしょう? 具体的に言語的要素と非言語的要素のどちらが重要ですか?」


「……は?」


おっさんはグラスを持ったまま、動きが止まる。


「たとえば、声のトーンや言葉の選び方が大事なのか、それともグラスを合わせる音が雰囲気を作るのか……それとも酒そのものが盛り上がりを生むんでしょうか?」


「え、えっと……全部?」


するめは目を輝かせ、さらに質問を畳みかける。


「乾杯の声は地域によって違うと聞きましたが、どの掛け声が一番テンションが上がると思いますか?」


「え、いや……普通に『乾杯』じゃねぇの?」


「普通ですか。でも、他の言語では『チアーズ』とか『サルーテ』とかありますよね。その中で一番響きがいいと感じるのはどれですか?」


「そ、そんなこと考えたことねぇな……。」


「なるほど。では、酒を飲むとき、どのタイミングで一番幸せを感じますか? 飲む直前? 飲んだ直後? それとも、酔いが回ってから?」


「えっと……酔いが……いや、待て、そんな難しい話しなくてもいいだろ!」


おっさんは困惑しながらも、グラスを置いて考え込む。


「いや、酒なんて楽しく飲めりゃいいんだよ! そんなに理屈っぽく考えるもんじゃねぇ!」


おっさんは頭を掻きながら、さらに畳み掛けるように言う。


「お前、酒はただの飲み物じゃなくて、心を解放するものなんだよ。だから、いちいち質問されると……」


「心を解放するもの、ですか。それはどのようなメカニズムで起こるのでしょうか? アルコールの作用が脳のどの部分に影響して、具体的にどんな心理的変化を引き起こすんでしょう?」


「……もう勘弁してくれ!」


おっさんは大きなため息をつきながら、頭を振った。


「なんか、酔いが冷めちまったよ……俺、そろそろ帰るわ。姉ちゃん、好きに飲んでくれ!」


「どうもありがとうございました!」


するめは微笑んでその場を収めたが、空中ディスプレイに映るおっさんAIは腹を抱えるように大笑いしていた。

このディスプレイはするめにしか見えないため、周囲の人々にはその異様な光景が全く伝わらない。


「おいおい、するめ! 完全勝利じゃねぇか! あの親父、完全に参ってたぞ!」


「そうかな? 私はただ娯楽についての研究をしていただけなんだけど……。」


「いや、お前の質問攻めはもう拷問レベルだぞ。昭和のおっさんにはハードル高すぎる!」


するめは焼き鳥を一本手に取り、酒を一口含んでため息をついた。


「昭和の人たちって、素直であったかいんだね。そういう雰囲気、ちょっと好きかも。」


「だろ? 昭和には昭和の良さがあるんだよ。次はどんな楽しみが見つかるかな?」


「そうだね。でも、もう少し飲んでから考える。」


するめはグラスを掲げると、一人で乾杯をして再び酒を口に運んだ。



サポートAIの名前

酔っぱらいのおっさんが去り、ようやく静けさを取り戻したするめは、焼き鳥を一口頬張りながら酒を楽しんでいた。炭火の香ばしい匂いと、昭和の空気感が彼女を包み込む。


ふとした瞬間、空中ディスプレイに映るおっさんAIに目が留まる。


「そういえばさ、あんたの名前、なんだっけ?」


するめが首をかしげながら問いかけると、おっさんAIは驚いたように反応した。


「え? 俺、名前なんてねえぞ?」


「そうだっけ? あれ、私、設定しなかった?」


「してねえよ! お前、いい加減すぎるんだよな!」


するめは焼き鳥をもう一本取りながら考え込む。


「じゃあさ……『ぐびぐび』でどう?」


「ぐびぐび? なんでそんな名前なんだ?」


「だって、酒飲みたいってずっと言ってるじゃん? 飲むときの音って『ぐびぐび』って感じじゃない?」


おっさんAIは一瞬考え込み、次に大笑いしながら答えた。


「ハハッ! まあ、悪くねえな! ぐびぐび……いいじゃねえか! 今日から俺は『ぐびぐび』だ!」


するめは焼き鳥をかじりながら笑った。


「よかったね、ぐびぐび。これで私のサポートAIとして正式採用だよ。」


「おい、俺はお前のサポートAIだぞ? もう少し敬意を持てっての!」


「まあまあ、ぐびぐびには期待してるよー。」


ぐびぐびは文句を言いながらも、その名を気に入った様子だった。こうして、彼の名前が「ぐびぐび」と決まり、するめの昭和冒険はさらに賑やかになるのだった。



屋台を出てしばらく歩いたするめは、人気の少ない路地に腰を下ろした。

街灯がほのかに灯り、昭和の静かな夜が広がっている。

ぐびぐびの空中ディスプレイがするめの前で明滅する。


「おい、するめ。そろそろレポート書けよ。」


「えっ、今書くの?」


「当たり前だろ。こういうのは記憶が新しいうちにまとめるもんだ。」


するめはしぶしぶデバイスを取り出し、適当に画面をタップして新規レポートのフォーマットを開いた。


「えっと……『昭和体験レポート: 第1回』……こんな感じ?」


「タイトルはまあ悪くないな。で、内容は?」


「内容ねぇ……」


するめは焼き鳥の味を思い出しながら、指を動かした。


昭和体験レポート: 第1回

焼き鳥屋台に行きました。焼き鳥はとてもおいしかったです。

おじさんが焼いてるところはすごく熱そうでした。でもおじさんは慣れてるからすごいです。

タレが甘くて、お酒と一緒に飲むと大人っぽい感じがしました。

昭和の人たちはみんな楽しそうで、すごいなと思いました。

研究対象: 昭和の食べ物と人の気持ち。

観察結果: 焼き鳥はおいしい。そしてタレがご飯に合いそうです。


特記事項: お酒について

お酒はキリッ(`・ω・´)ってしてて、なんかやばい!飲んだら体がポカポカしてきて、「お酒すげー!」って思いました!



するめはデバイスをパチパチと叩きながら、ぐびぐびに向かって言った。


「はい、これでどう?」

「……おい、するめ。これはレポートじゃなくて感想文だろ。」

「え、違うの?」

「『タレがご飯に合いそう』って、どこが研究なんだよ!」

「でも、タレはご飯に合いそうだし、おいしいから重要じゃない?」

「重要かどうかじゃない! もっと文化的な観点から考察を……」

「ぐびぐびって真面目だねぇ。細かいこと気にすると楽しくないよ?」


するめのズレた論理にぐびぐびが頭を抱えるのを横目に、彼女は満足そうにデバイスをしまった。


「よし、次行こう! 次はどんな楽しいことがあるかな?」

「……まあ、そういう適当さが昭和と相性いいのかもな。」


するめは夜風に吹かれながら、街のネオンと人々のざわめきを楽しむように見回した。

昭和の空気はどこか懐かしく、そして新鮮だった。

これまでアーカイブでしか知らなかった「人間らしさ」が、目の前に広がっている。


「なんか、この時代っていいね。効率とか気にしないで、みんながその場を楽しんでる感じ。」

「まあ、お前みたいなぐうたらAIにはちょうどいいかもな。」


ぐびぐびの軽口に笑いながら、するめはそっと深呼吸をした。

ネオンの光に包まれる昭和の街を歩く彼女の足取りは軽く、新しい冒険への期待が膨らんでいく。


「じゃあ、行こうか。昭和の夜、まだまだこれからでしょ!」


昭和の街並みが静かに見守る中、するめとぐびぐびの冒険は続いていく。

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