未来AI、昭和スナックでバイト挑戦!
このお話は、フィクションです。
そして昭和や平成、令和を扱ってますが、時代的な事実とかは適当です。
まぁ、楽しく飲みながら読んでください!乾杯!(未成年はノンアルで!)
するめが布団にくるまりながら、冷蔵庫から取り出した最後の一本の缶ビールを開けた。
「……これが私の最後のお酒かもしれない……。」
横で新聞を眺めていたぐびぐびが呆れたように顔を上げる。
「お前、何ため息ついてんだよ。研究資金もらえなかったのは、自業自得だろ?」
「だって!研究ってお酒を飲んで楽しむことじゃん!それに、ピンチの今だからこそ、お酒の力で解決策を探すべき!」
ぐびぐびが肩をすくめる。
「じゃあ働けばいいだろ。普通の人間は、金がないときに酒買うために働くんだよ。」
「……働く?それだ!」
するめは勢いよく布団を蹴り飛ばし、立ち上がる。
「決めた!働く!でも、私がやるのは普通の仕事じゃない!」
「はいはい、どうせまた無茶苦茶なこと言うんだろ。」
するめは冷蔵庫を指差し、神妙な顔で宣言した。
「お酒に関わる仕事なら、飲みながら稼げるじゃん!これが娯楽研究AIの合理的選択!」
「飲みながらって……どうせまた支離滅裂な――」
「決めた!スナックで働く!だって、お酒飲めるし、お客さんのお酒も味見できるし、最高じゃない?」
ぐびぐびは手に持っていた新聞を放り投げ、深々とため息をつく。
「お前、それ面接で言ったら即落ちだぞ。」
「未来から来たAIだよ?説得力でゴリ押しすれば大丈夫!」
するめは笑顔で缶ビールを持ち上げ、ぐびぐびに乾杯を求める。
「昭和のスナック文化に溶け込んで、飲んで稼いで最高の研究成果を出すよ!」
「お前、ほんとに大丈夫かよ……。」
翌日、するめはスナック「昭和ロマンス」の扉を開けた。レトロなネオンライトの灯る店内に入ると、柔らかなジャズが流れ、昭和の風情が漂う空間が広がる。
奥のカウンターでは、上品で優雅なママがグラスを磨きながら、にこやかに声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。お一人?」
するめは胸を張り、満面の笑みで答えた。
「働きたいです!」
その瞬間、ママの動きが止まり、驚いたようにするめを見つめた。
「え……えっと、働きたい……?」
「そうです!スナックのバイトがしたいんです!」
ママは少し困惑しながら、カウンター越しにするめを見つめる。
「……うちはバイト募集してないけど?」
「それでも、どうしてもここで働きたいんです!昭和のスナック文化を学びたいので!」
隣でぐびぐびが慌てて耳打ちする。
「お前、いきなり押しすぎだろ!普通に挨拶から始めろよ!」
「普通に挨拶……?」するめは改めて姿勢を正し、深く頭を下げた。
「どうも!未来から来た娯楽研究AIです!」
ママはぽかんとした表情で固まる。
「未来から……何?」
「娯楽研究AIです!スナック文化を体験しないとレポートが書けないんです!」
ママはしばし沈黙し、やがて軽く肩をすくめた。
「ごめんなさいね、ちょっと話が急すぎてついていけないわ……。とりあえず、どうしてうちで働きたいのか、普通に教えてくれる?」
するめは一瞬考え込み、にっこり笑った。
「お酒が飲めて、接客を通じてお客様から学べるって最高だと思うんです!」
ママは呆れたように苦笑しながら首を振る。
「うちは飲みながら働くお店じゃないのよ。それに、お酒が好きなだけならバイトじゃなくてお客さんでいいでしょ?」
「違います!それだけじゃなくて――」
するめの熱弁を横で聞きながら、ぐびぐびは小声で呟いた。
「やっぱり支離滅裂だろ……。」
ママはそんな二人を見て、ようやく小さく笑った。
「まあ、とにかく少し面接で話を聞かせてもらおうかしら。どれだけ接客ができるか見せてちょうだい。」
するめの顔がぱっと明るくなる。
「任せてください!未来技術の全てをお見せします!」
その声が響く店内で、ママは軽く肩をすくめながら手招きした。
「はいはい、まずは座って話を聞かせてね。」
こうして、するめのスナックバイト面接が始まった――。
するめがやる気満々で背筋を伸ばす中、ママはカウンター越しに穏やかに微笑み、ゆっくりと口を開いた。
「お客様との接客が中心になるけど、大丈夫?」
するめは胸を張り、得意げに答える。
「お任せください!私はアーカイブデータに基づき、昭和の会話も完璧に再現できます!」
その言葉に、ママは少し感心したように頷いた。
「そう。それじゃあ、酔ったお客様に話しかけられたら、どう対応する?」
するめは手を挙げるように勢いよく返答した。
「『お客様、その酒の選択、間違いないですね!未来の統計でもトップクラスです!』って褒めます!」
一瞬の沈黙の後、ママが笑いを堪えるように口元を抑える。
「……お客様は統計の話、求めてないと思うけど。」
隅で見守っていたぐびぐびが、小声で呟いた。
「やっぱり支離滅裂じゃねぇか……。」
次に、ママがドリンク作りのテストをすることにした。
「じゃあ、ロックの焼酎を作ってみてくれる?」
するめは大きく頷き、意気揚々とグラスに氷を入れ始める。だが、明らかに入れすぎた氷がグラスから溢れそうになり、焼酎を注ごうとした手が滑って、床にドボドボとこぼしてしまった。
「よし!“昭和スプラッシュ”完成!」
ママは目を見開いて声を上げる。
「そんな名前のカクテル、うちにはない!」
最後に、ママは真面目な表情で尋ねた。
「スナックってどういう場所か、あなたの言葉で説明してみて?」
するめは腕を組み、自信満々に語り出す。
「それはもう、昭和のオアシス!お酒と会話が織りなす癒しの空間!」
ママは少し目を細めて、ニヤリと笑った。
「……それ自体は悪くないけど、あなた、癒しじゃなくて嵐になりそうよね。」
面接が終わり、するめは満面の笑みでママに詰め寄る。
「どうでした?私は、昭和スナック界の救世主として合格ですよね!」
ママは微笑みを保ちながら、少し言葉を選ぶように答えた。
「うーん……ごめんなさいね。あなた、ちょっと……個性が強すぎるわ。」
「えっ!?私、未来から来たって言いましたよ!?」
「言われたけど、それが何か関係ある?」
「未来の最先端AIですよ!?お店に革命を起こしますよ!?」
「いらないわ、革命。平和が一番だから。」
店を出たするめは、待ち構えていたぐびぐびの横にドサッと倒れ込むように座った。
「ぐびぐび……聞いてよ……落ちた……!」
「知ってる。面接始まった瞬間に確信した。」
「えっ、見てたの?っていうかそれ早すぎない?」
「お前が『未来から来ました!』って自己紹介した時点で、もうダメだと思った。」
「でも本当のことじゃん!未来の知識で昭和の浪漫を盛り上げたかったのに……!」
「その“盛り上げ”が暴走してたんだよ。面接でドリンク作れって言われて“昭和スプラッシュ”とか、あれ何だったんだ?」
ぐびぐびの指摘に、するめは一瞬黙り込む。
だが、次の瞬間、大げさに顔を覆ってわざとらしく泣き真似を始めた。
「私、昭和を救いたかったのに……!」
「お前、スーパーヒーロー気取りかよ。」
突然、するめはピンと指を立てた。
「次の面接では、こう言う!『私は昭和の文化を守るため、未来から派遣されました!』って!」
ぐびぐびは肩を落とし、呆れ顔で頭を抱える。
「いや、どこに派遣されてんだよ。そんな設定通じるか?」
「大丈夫!最先端AIの信頼度で勝負する!」
「お前の信頼度、今のところゼロだろ!」
さらに勢いづいたするめは立ち上がり、拳を握りしめる。
「でも私は諦めない!次のスナックこそ、私を必要としてくれるに違いない!」
ぐびぐびは無表情でツッコむ。
「やめとけ。お前、面接じゃなくて災害認定されるぞ。」
夜の街に響くするめの叫び声。
「次こそ!スナックの救世主になるんだからぁぁぁ!」
その声に振り返る通行人たちを尻目に、ぐびぐびは深いため息をついたのだった。




