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第2話 1歳

 俺が生まれたのは温かく過ごしやすい季節だった。暑くなり、涼しくなり、寒くなって暖かくなった。つまりBirthday、俺はたぶん1歳になったんだと思う。


 今のところ特にイベントは無いんだが暑くなる前に何かあるんだろうか?


 この一年で色々と理解が進んだ。簡単な言葉を覚えて喋れるし歩くこともできる。というか普通に会話しているし走り込みもしている。


 1歳にして腹はシックスパック、大胸筋はピクピクと脈打っている。低い身長を利用して深夜にベッドの縁にぶら下がって懸垂を繰り返す天才赤ちゃんだ。太腿に大きな石を挟む事で重量を確保しながら内転筋群も鍛えている。自重トレーニングだけでは我が身が軽すぎる。




 睡眠ってなんですか?休憩中に一瞬意識が飛んでしまうアレのことかな?


 同年代が揺り籠でスヤァ…してる間に俺は鍛えまくる。ここが大きな差になるんだよなぁ。




 頭の方もしっかり鍛えている。前世の事を思い出そうとするとすぐに知恵熱が出るのだ。


 知恵熱が出る=脳を酷使している=脳が成長する。完璧な理論、素敵な方程式だね。


 今必要なのは下地、知識を溜め込むのではなく知育を重視する。


 そのためにも色々なものをよく見て観察するようにした。虫を追いかけて爆走したり、魚を追いかけて爆泳することで観察眼磨きに勤しんでいる。


 暗算も積極的に行っている。脳というCPUの演算能力を上げる訓練になる、はず。


 本格的な勉強はそのうちやればいいからいつかやろう、きっとやる。未来の自分を信じる心。





 だが全てが上手く行く事などなく、既に親子仲は最悪。化け物を見る目で俺を見ており、食事は用意してくれない。


 産んでくれた事に感謝しているんだけど、動けない間は随分お世話になりましたと礼を言ったら卒倒されてしまった。


 これについても放置する気はなく、ちゃんと稼いで恩返しをする予定だ。





 まぁ今の状況はこんなとこだな。それよりこれからの事だ。


 実は昨日母者と会話する機会を得てステータスを見る方法を聞き出す事に成功した。


 言語はある程度理解しているんだけど知らない単語はどうしようも無いから説明するのが大変だったよ。「ステータスボード」っていう言葉があるわけじゃないしな。


 まぁそういう訳で手に入れたステータス。これを見て俺は絶望したね。




 ―――――――――


 名無し


 1歳


 ジョブ 無し


 レベル 1




 体力 1


 魔力 1




 スキル


 無し


 ――――――――――




 なんと俺は名無しなのだ。それはいい、それより問題なのは体力1だ。


 生まれて意識を取り戻してからずっと鍛えているのに1。


 実際には1.9かもしれないが、それでも1だ。


 ちなみに母者のステータスがこちら。




 ――――――――――


 ペコリーヌ


 18歳


 ジョブ 薬師


 レベル 6




 体力 6


 魔力 12




 スキル


 調合α


 家事α


 ――――――――――




 お分かりいただけただろうか?


 ぷにぷにボディの母者だが俺の6倍の体力を持っているのだ。


 ステータスの読み方は母者にしっかり聞いたので間違いないだろう。母者の体力は6で俺の体力は1。これは紛れもない事実。


 これについて俺は深く考えた。




 前向きに考えよう。ここは異世界、ファンタジーでマジックでエキサイティングなのだ。ぷにぷに幼女が大剣を振り回したり、たおやかなシスターがローリングキューブスープレックスからのナパーム・ストレッチを決めて冷静で的確な判断力を見せつける事もあるはずだ。


 母者は一見ぷにぷにボディの若奥様だが、実は足の間に100㌔の石を挟み込んだまま懸垂100回をラクラクこなせるキュアなプリティ若奥様なのだ!。


 見た目は問題じゃあない、鍛え上げる肉体に限界は無い、膨れ上がる筋肉に悩むことなんて無く、スマートボディに無限の力を詰め込めるのだ!!





 ウルトラポジティブシンキングで気合を入れ直した俺は、超イケメンなスマートマッチョを夢見てガンガンに体を痛めつけた結果、3歳にしてガチムチはち切れ寸前の筋肉の塊と化した。

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