ジングルに宜しく ~next week~
応募テーマが影響を受けた同性の同級生か、僕にとっては今それを話しているきみがそうだよ。
小学校時代のきみと僕は、大人しくよくいじめっ子達にからかわれていたね。でもきみはいつも笑顔を絶やさず楽しそうにしていた。僕の家は厳しくゲームは何も買ってもらえなかった。だからきみの家に遊びに行っては一緒にファミコンやゲームボーイをやったね。僕は運動はまったく出来ず、家の方針で勉強ばかりやっていたから成績だけは良く先生たちに褒められていた。だからそれが気に入らないいじめっ子達から妬まれていた。そんな僕の成績をきみは自分のことの様に友達や家族に自慢していた。きみは勉強は苦手だったけど読書が好きで、運動は苦手だったけど走るのがすごく速かったね。あの当時、きみだけが僕にとっての唯一の友達だった。だからきみが引っ越すあの日に会いに行ったんだよ。でも何も言えずにただ黙っていた僕にきみがまたねと、手を振ってくれた。あれから会うことはなかったけど、このラジオを通じて友達であるきみが、元気にやっているのが分かって凄く嬉しいんだ、本当に。
応募テーマが影響を受けた同性の同級生か、僕にとっては今それを話しているあなたがそうだよ。
中学校時代のあなたは、大人しく目立たない人だったね。部活の陸上部でも遅いほうで、よくいじられていたね。僕は顔が良くモテていたから、今でいうスクールカーストでは上位にいて、あなたの事は本当に何とも思わなかった。そんなあなたは2年生になる頃には、陸上のタイムが急激に上がり関東大会までいった時には凄く驚いたよ。いつの間にか、周囲によるあなたへの扱いが変わっていた。3年生になると顔も明らかに変わり人気俳優に少し似てきた。その頃にはあなたをいじる人はいなくなり、むしろ告白されていたことは知っていた。胸が張り裂けそうだったよ、もしOKされてしまったらと。そう、あの当時、僕からあなたへの告白は冗談ではなく本気だったんだ。いつからかは分からない、でもいつの間にか、あなたを目で追っていた。部活で関東大会にいこうが、顔が人気俳優に似てこようが、周囲の評価が変わろうが、あなたは何も変わらず、ただ優しかった。
応募テーマが影響を受けた同性の同級生か、俺にとっては今それを話しているお前がそうだよ。
高校時代のお前は、人気俳優似のイケメンで声も良く、気づいていなかったようだけどモテていたよ。それなのに、アニメや漫画が好きで、俺達オタクとつるんでいたよな。クラスの一部の女からも盗撮されていてお前の隣にいたオタク友達は一緒に写っただけなのに、めちゃくちゃ非難されていた。ふざけんなよ、お前らが盗撮しといて一緒に写るなってなんなんだよ。むかついたわ女どもに、そしてお前にもな。中学校からずっと好きだった姉ちゃんの友達が家に遊びに来て、俺と遊び来たお前を見た時のあの人のあの顔、お前と話していくうちにお前に惹かれていくあの表情、姉ちゃんがお前に友達がカッコいいって話していたと言われた時のあの困惑した表情。ふざけんなよ、オタクはいつだって馬鹿にされる存在なんだよ。なのにお前は、いつでも俺達と楽しそうにアニメや漫画の話をしやがった。あの当時、よくラジオパーソナリティーになりたいって言っていたよな。良かったな、夢が叶って。そうだよな、そうあるべきだよな、良い奴は幸せになるんだ。だから、くそ、俺は、いつまでたっても。
応募テーマが影響を受けた同性の同級生か、俺にとっては今それを話しているあんたがそうだよ。
大学時代のあんたは信じられない存在だったよ。一人で映画に行くなんて信じられない。一人で学食に行くなんて信じられない。飲み会に来ないなんて信じられない。一人旅なんて信じられない。周囲に流されず評価を気にせず自分のやりたいようにやるあんたが信じられなかった。今度こそ、大学では絶対変わると決めたんだ。中学高校と必死に背伸びして目立つ奴らとつるんできた。慣れない言葉使い、上がらない成績、どうにもならない運動神経、似合わない染髪、吸いたくもないタバコ、まったく美味くない酒、それでも必死につるんできたのにーーー。『あいつ、何か本当に惨めだよな』、『え~、そんなこと言ったら可哀そうだよ。一生懸命やってんだよ、あれで』、『いや、本当に惨めだよ。私、告られたけど。いやお前マジかよ、まず鏡を磨けって』、『ギャハハハ、童貞君は必死だよな』、『いやあいつはカッコいいよ、昨日言われたぜ。「ライターある?」って』、『アハハハ』『マジかー』『ギャハハハ、ライター、サイコー』
今度こそ目立つグループに認めてもらうんだ。入学式で隣同士になった人気俳優に似ているイケメン、話しかけたら声も良かった。絶対あんたの属するグループに入り周囲に認めてもらう。そう思っていたのにあんたはほとんど一人でいた。ある時、コンビニで前売り映画チケットを購入して一人で行くと聞いた時は驚いた。一人って何だよ、一人でいるやつなんて周囲に馬鹿にされるじゃないか。それなのに、そうに決まっているのに、そんなこと興味がないようにみえた、そんなあんたが、心底羨ましかったよ。
「さて、今週もそろそろお別れの時間となりました。今週のテーマで、影響を受けた同性の同級生をエピソードを交えて皆さんから教えてもらいました。たくさんのハガキやメール、ありがとうございました。年上でも偉人でもフィクションでもない影響を受けた同性の同級生。なかなか認めるのも難しい関係性もあるように思います。僕自身も同年代の友人に影響を受けました。まぁ、今更なかなか照れ臭く言いづらいですが。アハハハ、募集しといて何だよと、お怒りになるリスナーさんもいるかもしれませんね。ご容赦ください。それではまた来週、聴いてくれてありがとうございました」