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ジングルに宜しく

あの子の番組を聴く。テーマがいつかまた会いたい人か、あの子にとって私はどうなのかな?

大人しく勉強も運動も出来なくて、いつも一人ぼっちでいたあの子が今じゃ人気のラジオパーソナリティーだ。私が教師として勤めていた小学校にあの子が転校してきたのは小学校5年生の時だった。転校前の小学校からの引継ぎ通り、学力は低く運動も苦手な大人しい子だった。いつも一人で本を読んでいて、遠足のお弁当も一人で食べていた。一番気になったのは、あの子がそれを何とも思っていないように見えていたことだ。今では教育の場でこんな言葉をつかうと問題になるが、普通なら、友達や誰かと一緒に食べようとするだろう、一人でいることを恥ずかしいと思うからだ。だからこそすごく気になって色々気にかけた。明らかに勉強が出来なかったから、休み時間や放課後に呼んで勉強を教え、私達教師が一部分だけ音読する読書会では、その感想文を読むと興味を持っていたそうだから貸してあげた銀河鉄道の夜。

このラジオではあの子が好きな本を紹介するコーナーがある。

いつか、面白かったですと返してくれたあの本を、紹介する日を楽しみにしている。


彼の番組を聴く。テーマがいつかまた会いたい人か、彼にとって私はどうなのかな?

中学校時代、あんなに大人しく、何を話すのにもドギマギしていた彼が今じゃ人気のラジオパーソナリティーだ。同じ部活に後輩として入部してきた彼はすでに変声期がきており、あの低い声の片鱗はあった。ただ応援もある陸上部においてその声ではオクターブを上げないと聞こえないと思っていたら、顧問から直々に言われていた。まさかその声の仕事をすることになるとは、本当に何がどうなるか分からないな。学生時代は言わば常に一軍であった私が、今では引きこもりニートであることを含めて。そういえば後輩から聞いたが、彼は2年生の時は関東大会までいったらしい。凄いな、入部当時のタイムは遅いほうで、惰性で練習している様子だったのに。

このラジオでリスナーは彼に対して様々な呼び方をするが、彼はそれを読みながら楽しんでいる。

いつか、唯一、彼のことをメガネ君と呼んでいた私の話をする日を楽しみにしている。


あいつの番組を聴く。テーマがいつかまた会いたい人か、あいつにとって私はどうなのかな?

あいつが将来はラジオパーソナリティーをやりたいとか、似たような奴らとたしか言っていた高校時代。

確かに低くて良い声だったけど、あいつは顔もまた良かった。しかしイケメンには珍しくオタク達とつるんでいて、絡むことはなかったけどそれがまさか風俗で会うとは。向こうはまったく気づいていなかったけど、しかし普通本名でくるか?風俗は初めてだと言っていたが、明らかに慣れていなかったから本当だろう。結婚していると教えてくれた時は、本当に男ってのはしょうもないなと改めて思った。あいつは何か良い人みたいなキャラだから、風俗に行った話なんてしないだろう。このラジオも下ネタはまったくないし、客で来た時は感じている演技までさせて申し訳ないと思った。私は仕事だけど、客のあいつは演技なんてしなくて良かったのに。まぁ、何とか終ってくれて良かった。

このラジオでは無理だと思うが、いつか、初めて行った風俗の話をするのを楽しみにしている。


あの人の番組を聴く。テーマがいつかまた会いたい人か、あの人にとって私はどうなのかな?

あの当時、コンビニでアルバイトをしていた私は、彼の声を聴くのが楽しみだった。当然、店員とお

客の関係だから、お弁当を温めますか?と尋ねた時の、「はい」「いいえ」くらいだった。ただ稀にあの人が映画の前売り券を購入する時があった。「インファナル・アフェアのチケット下さい」「ミリオンダラーベイビーのチケット下さい」「指輪物語のチケット下さい」等、本当に良い声だなと思った。それに顔も人気俳優と似ていたから本当に役者の卵なんじゃないかなと思っていたけど、友人らしい人と来店した時の会話の内容では大学生のようだった。その時に「このコンビニで映画の前売りチケットを購入すると、その映画は面白いという俺のジンクスがある」と話していた時は持っていかれそうになり、とっさに彼氏の事を思い浮かべて勝手に謝った。

このラジオではあの人が好きな映画を紹介するコーナーがある。

いつか、私が売った前売チケットの映画を紹介する日を楽しみにしている。


「さて、今週もそろそろお別れの時間となりました。今週のテーマで、いつかまた会いたい人をエピソードを交えて皆さんから教えてもらいました。たくさんのハガキやメール、ありがとうございました。そういえば何かで読んだんですけど、これまで出会った全ての人と最後に会えたらどれだけ幸せだろうみたいな言葉がありましたが、良い言葉だなと思いました。もちろん二度と会いたくない人もいますが。いや、どっちだよ、アハハハ。子供の頃の友達や先生、部活の先輩後輩、同級生、知り合いや優しくしてくれた人達、いつかまたお会いしましょう。それではまた来週、聴いてくれてありがとうございました」

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