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3話で完結します。はじまります!

こんな仕事はもうやってられない。

パロル氏が会社勤めにストレスを溜めていたのは今に始まったことではない。

しかし、今日こそついに限界がきたのだ。


パロル氏は、会社から逃亡することにした。


まずパソコンや電話の配線類を力任せに引き抜いた。

そしてそれらの機器を張り手やチョップでなぎ倒し、デスクの上から叩き落した。

気分は爽快だった。


パソコンのディスプレイが倒れるのに巻き込まれ、書類の山は崩れ落ち、文房具は床にぶちまけられた。

パロル氏と同じ島のメンバーたちの、キーボードを叩く手が止まった。


彼らは息を呑んで、パロル氏が暴れる姿を盗み見ていた。

しかし、皆一様にすぐに各自のパソコンのデスクトップに視線を戻した。


パロル氏から発せられるオーラが険しすぎたこともあるし、それぞれが納期に追い立てられ忙しかったから、いちいち気にしていられなかったのだ。


パロル氏はネクタイを襟から抜き取り、頭に巻いてハチマキとした。

それから、デスクの天板に革靴のままあがった。

四つん這いになって天板の角にしがみつく。そして、念を送った。


「さあ、デスクよ。俺を森へ連れて行ってくれ」


デスクは、前足、天板、後ろ足とを順に小刻みにふるわせ、鉄の脚をぐにゃりとしならせた。

そうやって伸びを終えると、動物のように歩きだした。


こんな大きな天板でドアをくぐり抜けられるのかと、パロル氏は危ぶんだが、デスクはくるりと回れ右をして、迷わず窓へと向かっていった。


そっちへ行くか、とパロル氏は感心した。


デスクはパロル氏を乗せたままブラインドに突っ込み、勢いよく窓の外へ飛び出した。

ブラインドからは、白い埃が煙のように弾ける。

パロル氏は、大きなくしゃみを一つした。


このデスクは、空中を駆けることができるらしい。

パロル氏の目には何も見えないが、まるで下に透明な地表があるように、両脚でその地面を蹴り走っていく。


森の方角も、デスクはわかっているらしい。

ぐんぐん速度が上がり、パロル氏のあたまのネクタイがたなびいた。全身に心地よい風を感じる。

会社にいる時には想像することもなかった爽快感に、パロル氏は思わず叫んだ。


「ついに俺はやったぜ! 仕事なんて、やってられるか。ちくしょう!」


ありったけの快哉かいさい。天板を握る両手にぐっと力が入る。

よろしくお願いします^_^

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