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第九話 ストレイン観光①

「オーリ、見て見て!大きい門。」

「城門だな。凄いな。中世を舞台にした映画とかに出てきそうな感じだな。」

「えいが?なにそれ?」

「気にしないで。独り言だから。」


俺達は、ストレインの街に入るための列に並んでいる。

州の一番の都市だけあって、出入りは厳重にしているらしく、通行税も取られる。

レーネは珍しい行商を見つけては騒ぎ、アストラネさんがその都度説明をしてくれている。


列に並んでいる人達は、荷馬車か引き車を持っている。

手ぶらで並んでいるのは俺達ぐらいなものだ。

そうやって周りを観察していると、列はどんどん進み、イケメンな金髪のお兄さんが見えてきた。


「次の人、どうぞ。」

「ほら、お前ら行くぞ。冒険者証、出しとけよ。」

「身分証の提示と目的を教えてください。」

「マラ村のギルド職員のレグナだ。ギルド訪問と買い付けが目的だ。」


レグナさんが冒険者証をイケメンに渡したので、俺達もそれに倣って渡す。


「提示ありがとうございます。ゆっくりしていってください。」

「おう。お疲れさん。」


冒険者証を返してもらうと、レグナさんが「ほら、行くぞ。進まないと邪魔だ」と内門を通り抜ける。

内門を通り抜けると、そこは映画で見るような中世ヨーロッパの街並みがあった。

道は石畳で綺麗に舗装され、家も石造り。統一感があって、住んでみたいと思わせる街並みだ。


「よし。とりあえず馬車が通るから端によろうか。」


レーネも初めて見る大きな街に衝撃を感じているようで、ぽけーっとしている。


「さて、これからの予定だが、今日はこのまま休息。明日、明後日と俺は買い出しに行くから自由行動だ。で、明々後日にここを出発するから、ギルド集合な。」

「分かりました。宿も自由でいいんですか?」

「ま、同じ宿でもいいんだが、俺のとこはギルドの経費だから安宿だぞ?嬢ちゃん達もいるんだし、そこそこ金も持っているんだから、良いとこ泊ってこい。」

「そうですね。では、明々後日の朝、ギルドですね?」

「おう!じゃあゆっくり楽しみな、坊ちゃん達。」


そういうとレグナさんは内門から真っすぐ伸びる道ではなく、左に曲がって行ってしまった。


「よし。それじゃ宿を探そうか。」

「オーリさん、それならいいところを知っていますよ。」


アストラネさんはこの街にも来たことがあるそうで、まずは街の中心に行ってみることにした。

街の中心に近いほど治安が良く、外壁に近いほど治安が悪いのだという。


「なので、とりあえず中心にある宿で探しましょう。興味あるのでしょうが、スラム街に行っても万が一のことはないでしょうが…夜にうろつくのは、いい気分じゃないですよ?」

「ねぇ、オーリー!おいしいもの!」

「分かったから。まずは寝るところ探しに行こう。」


メインストリートを歩いて街の中心に向かってみる。

メインストリートだけあって、高級そうなお店が並んでいる。

服屋、喫茶店、レストラン…

こういったところは貴族御用達なのだろう。

ただ、同じような業種がこんなに近くにあって競合しないのだろうか…


「こういったお店は貴族の格で入るお店が違うのですよ。」

「な!?読まれた?」

「お顔に出てます。不思議そうにしていましたから。」

「そうか。それにしても、貴族の格、ね…」


そういったお店を過ぎると、目の前に教会が見えてきた。

教会の前には大きな噴水があり、ここが街の中心のようだ。


「この辺りで宿を探しましょう。」

「オーリ、あの宿がいい!」


レーネがさしたのは、教会と噴水が窓から眺めることができる、高そうな宿だった。


「とりあえず聞いてみるか。宿泊料が高すぎたら、他を探そう。」

「行ってみよ~!」


レーネが宿泊したい宿に入ってみると、1階は食事処のようだ。

日も暮れ始めているので、そこそこの賑わいである。


「いらっしゃい。『銀狼の宿』にようこそ。食事かい?それとも泊りかい?」


俺達が入り口でキョロキョロしていると、恰幅のいい女将さんが声をかけてくれた。


「泊りでお願いしたいんですけど、2部屋空いてますか?」

「2部屋だね。空いてるよ。1部屋1泊200ギルだよ。朝食・夕食付ならプラス20ギル。身体を拭くためのお湯と布で5ギル。お風呂に入りたいんなら、1回10ギルだよ。」

「お風呂あるんですか?」

「お!なんだい。そんなところに目をつけるのかい?で、どうするんだ?」


確認のため、レーネとアストラネさんを見る。2人とも頷いてくれたので、ここにしよう。


「それじゃお願いします。2泊する予定なので、僕は460ギルで。」

「私とレーネは相部屋ですね。そしたら、私もお風呂に入りたいので260ギルです。」

「私もアストラネさんと同額だね。はい。260ギル。」

「まいど!夕飯は好きな時にここで食べておくれ。おーい!サヤ!お客様案内しておくれ!」

「はーい。」


配膳をしていたのだろう。

奥から元気に返事をして現れたのは…


▲▲▲▲▲▲


ストレインの街には週2~3の頻度で帰っている。

ただ、実家にはあまり顔を出さないようにしていた。


「相変わらず、嫌な空気していやがる…」


俺、レグナはこのストレインで生まれた。

親父は運送業をしていて、その姿が俺は嫌いだった。

大した稼ぎにもならないのに、いつも全力で仕事をしようとするその姿が子供だった俺には気に食わなかった。

そして俺は『洗礼の儀』で«戦士»を選んだ。

親父と同じ«スカウト»だけは選びたくなかった。

それだけの理由だったからか、俺はクエスト中に大怪我をして長期間の療養が必要となった。

それからの俺は散々だった。

クエストも失敗続きになり、冒険者として活動もできなくなってしまった。

そんな時に今のギルドで運送担当を募集していると知り、生きるために親父と同じ仕事をすることになった。

最初は嫌々、生きるためと割り切って仕事をしていたが、そのうち村の役に立っているという実感が湧いてきて仕事が楽しくなった。

それがつい最近のこと。


(親父とそろそろ話をしなきゃなんねぇよな…)


「ただいま。」

「あら、おかえり。あんた、荷馬車の音しなかったけど、どこかに置いてきたのかい?」

「いや。ちょっと訳あって荷馬車は今回持ってきてない。」

「もしかしてクビにされたんじゃないだろうね?」

「クビになんてされるかよ。話は親父と一緒にするから。」

「父さんならもう少しで帰ってくると思うよ。」

「そうか。あとは…あれ?サヤは?」

「サヤなら今週から中央広場の宿でウエイターやってるよ。」

「へぇ、そうか。あいつも働く気になったんだな。」


妹もいい年なんだし、そろそろ親の脛をかじるものどうかと思ってたから一安心だな。


「帰ったぞ。」

「おかえりなさい。レグナが来てるわよ。」

「お帰り、親父。」

「元気にしてるみたいだな。」

「あぁ。それで、今日は話が合ってきたんだ。」

「なんだ?」


親父と俺の前に酒が置かれた。

母親はニコニコと笑って親父の隣に座る。


「今まで親父の仕事を馬鹿にしてた。ごめん。」

「……」

「ただ、俺も親父と同じ仕事をしているうちに楽しくなってきたんだ。だから、ごめん!」

「…ふん。そんなことか。そんなことはどうでもいい。今、楽しいか?」

「あぁ。楽しいよ。あと、これを見てくれ。」


俺は『アイテムボックス』から親父用に買ってきた酒を取り出す。


「お前…まさか…」

「奇跡だよな。『アイテムボックス』だとよ。」

「…どうやって?」

「その話は、酒でも飲みながらしようぜ。それと、これからは1日かからずにマラ村から来れるから。時々、顔を見せるようにするよ。」

「…そうか。飲むか。」


▲▲▲▲▲▲


「あれ?レグナさん、小さくなった?」

「お兄を知っているんですか?」

「お兄?」


レーナは状況を呑み込めないのか、首を傾げている。


「レグナさんの妹さん、かな?」

「はい。サヤと申します。よろしくお願いします。」


レグナさんの背を低くして、纏う雰囲気が丸くなった感じの人が俺達の前にいる。

制服が女性物だったので妹と判別できたけど、どっちとも分からないような服装をされたら「弟」と間違ってしまってもしょうがないと思える。


「俺達はレグナさんのギルドを拠点としている冒険者なんだ。オーリだ。よろしく。」

「本当にレグナさんそっくりですね。アストライネと申します。2日間、よろしくお願いします。」

「レーネだよ。よろしく。」

「では、部屋にご案内しますね。後、お風呂は時間によって男女が入れ替わりますので、注意してくださいね。食事を部屋で撮りたい場合は、下で注文するときに申し出てください。」

「説明ありがとう。これから街を少し見て回りたいんだけど、大丈夫かな?」

「中央広場の近くなら、そんなに危なくないですよ。お店も中央広場近くに多くあるので、あまりほかの場所に行く必要もないんですけどね。」

「そうなんだ。始めて来たから色々見てみたくて。荷物置いたら、ちょっと外出てみようか。」

「分かりました。お付き合いしますよ。」

「レーネも行く~。」


3階まで上がり、一番奥の部屋に案内された。


「こちらがオーリ様のお部屋になります。アストラネ様、レーネ様は上の階になりますので付いてきてください。また、うちの宿は6階建てになりますが、5階から上は女性フロアになりますので、男性は入れませんので、ご承知おきください。」

「安全面はばっちりなわけですね。じゃ、また下で落ち合おう。」


そういって俺は案内させた部屋に入った。

部屋はそこそこ広い。

シングルより少し大きいベッドがあるだけのシンプルな部屋掃除も行き届いているので過ごしやすそうだ。


俺は特に荷物もないので、窓から少し外の景色を眺めてみる。

今は日が落ちているのだが、魔道具による街灯で明るく照らされている。

街から離れた所から見たらさぞ綺麗だろう。


窓から見えるのは、噴水と教会。

教会で思うのは、アストラネさんのことだ。

彼女は自主的に付いてきてくれているが、内部的には大丈夫なんだろうか。

教会絡みの厄介事は、異世界の定番なだけにそこも怖いところだ。

この2日間で、時間があるようであれば少し訪ねてみてもいいだろう。


噴水の近くには手で持って食べ歩きできるような屋台が出ている。

これから少し歩くなら、レーネが食べたいとか言いそうだ。

まだ商店もそこそこ開いているし、これなら少し見て回る分には楽しそうだ。

もしよかったら「いいね」、「感想」をお願いいたします。誤字・脱字は発見次第訂正をいたします。


登場人物早見表

○オーリ(小松 毅)

この物語の主人公

年齢 7歳 人族

ジョブ ①導き手②使徒③剣士

∟○キース

 オーリの父親。農家

 年齢 34歳 人族

 ジョブ 農夫

∟○マリエラ

 オーリの母親。専業主婦

 年齢 29歳 人族

 ジョブ 平民

∟○スイレン

 オーリの妹

 年齢 3歳 人族

 ジョブ 未設定


リーネ

この物語のヒロイン

年齢 7歳 ハーフエルフ

ジョブ ①精霊術師②精霊召喚師

∟○オブライエ

 リーネの父親

 年齢 254歳 エルフ

 ジョブ 薬師

∟○スズ

 リーネの母親

 年齢 27歳 人族

 ジョブ ①村薬師②薬師


○アストラネ=エレネスト

教会に所属する人族。果たして第2ヒロインになれるのか…

年齢 24歳 独身

ジョブ ①僧侶②神官


○シグルス

この世界を担当している女神

年齢 ??? 神族


○ソフィア

マカ村のギルド長代理

年齢 23歳 人族

ジョブ ①平民②文官③高等文官

∟○ギル

 マカ村のギルド専属解体屋

 年齢??? 獣人

∟○スティング

 マカ村のギルド専属解体屋兼料理場担当

 年齢 ??? 人族

∟○マリ

 マカ村のギルド受付担当

 年齢 ??? 獣人

∟○レグマ

 マカ村のギルド運搬担当

 年齢 34歳 獣人

 ジョブ ①戦士②拳闘士③重戦士④騎士

 ∟〇サヤ

 レグマの妹。ストレインで給士の仕事をしている

 年齢 ??? 獣人

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