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第三話 伝承と家族会議+α

「魔王…復活…?」


母さんはいきなりの質問に困惑しているようだ。


「お母様におかれては、何のことかさっぱりですよね。それに比べて、オーリさんは冷静でいらっしゃる。」

「僕も多少は困惑してますよ。なんでこんな話を振ってきたのか、とか」

「これには理由があります。教会にある伝承に、《導き手》現るとき、魔王が復活する、と。簡潔に言えばこんな伝承があるんです。」


なるほど。俺のジョブを見てここまで連れてきたのか。


「《導き手》は勇者とそのパーティを魔王に対抗できる力がつくまで、サポートするジョブであると伝承にあります。」

「…それで、俺をどうしようと?」

「緊急事態なので、貴方を教会で保護し、勇者を見つけ次第、その役割を全うしてもらうことになります。」


いきなり面倒事が舞い込むか〜…

ただ、俺は勇者がいないことを知っている。魔王の復活もある程度いつ頃かは知っている。

ただ、話しても納得してくれるかどうかは別だ。


『話して構いませんよ、小松こまつ たけしさん。』

(お久しぶりです。納得するか分かりませんよ?)

『そこは女神に任せてほしいものですね。これでも管理者ですよ?』

(分かりました。)


「では、俺が知っていること全部お話します。」

「お願いします。」

「魔王の復活は遅くとも7年後です。また、今回の魔王復活に際して、勇者はいません。」

「!!」

「俺が女神様から依頼を受けているのは、魔王に対抗しうるメンバーの育成です。とはいえ、私は魔王に対して無力なので、そのメンバーが今回の希望になります。」


隣に座っている母さんの手が震えている。

前に座って話を聞いているアストラネさんは、今の話を聞いて青くなっている。


「…オーリ。あんたはいつからその事を知っていたんだい?」


母さんが絞り出した声で俺に問いかけてきた。


「…生まれる前から。そして、ついさっき記憶が戻った。」

「そうかい。これからどうするつもりだい?」

「何も決まってないよ。」

「そうかい。…じゃ後で家族会議だよ。今は司祭様にちゃんとお話しな。」


母さんはそう言うと「私らは席を外させてもらいますね」といい、一礼して部屋を出ていった。


「いいご両親ですね。」

「そうですね。親不孝な息子で申し訳ないです。」

「色々と驚く内容ですが、再度確認させてください。勇者は、現れないんですね?」

「はい。現れません。」

「ここからは一個人として聞かせてください。この世界は……滅亡するでしょうか?」


アストラネさんは今まで我慢していた恐怖を吐き出すかのように泣き出した。

魔王は復活するけど、勇者はいない…

それは神々から見捨てられてるとほぼ同義と捉えたのだらう。

だから、俺はこう言う。


「そうならないように俺が来ました。」

「!!」

「最後の最後まで足掻いて、足掻いて、足掻ききってみせるので、今は泣き止んでください。」


▲▲▲▲▲▲


それからアストラネさんが落ち着くまで待った。


「お見苦しいところをお見せしました。すみません。」

「いえ。大丈夫ですよ。」

「ご存知だったらで構わないのですが、何故勇者は現れないのでしょう?」

「簡単に言えば、平和になりすぎて、皆がこの状態に満足しちゃって、それぞれの可能性を諦めてしまったから、ですかね。」

「可能性?」

「例えば、アストラネさんは司祭様、ジョブで言えば僧侶ですね、」

「…!!ステータスが見えるんですね?」

「勝手に見てしまい、申し訳ありません。例えば、僧侶の場合、最上位は《聖女》ですね。もし、必死にレベルを上げて、ジョブチェンジして、聖女になれるとしたら?」

「…ありえません。ジョブは一度のはずです。」

「それは誰が決めたのですか?ちなみに真実は、レベルを上げて、条件さえクリアすれば転職できます。」


そう。誰が作ったのか分からないが、このジョブに関しては悪意があると思う。

それが例えば、上流階級が決めたのであれば、それこそこの世界は自分達で首を締めてることになる。


上流階級と言ったのには理由がある。あの《神具》は国で管理している。国が管理することにしたため、満足に転職できず、この制度は廃れたわけだ。


「オーリさんはこれからどうするのですか?」

「まずはメンバー集めですね。限られた時間で育成しなきゃいけませんから。後は、俺の手が届く範囲で、夢見る人達の手助けですね。」

「そうですね。時間は限られていますもんね。」


そこで言葉を切ったアストラネさんは立ち上がり、深々と礼をしながら、

「この世界を、どうかこの世界のためにお力をお貸しください。」

と言ってきたので、

「もちろんです。世界を救います。」

と宣言したのだった。


▲▲▲▲▲▲


アストラネさんとの会談が終わったので俺は一人、家に向かっている。


(母さんが家族会議って言ってたからなぁ…気が進まねぇ…)


重い足取りで家に着き「ただいま〜」と言って、リビングに入る。


「オーリ、おかえり。母ちゃんから話は聞いた。ちょっと話そうか」


父さんと母さんが既に座った状態で待っていた。

俺は二人の前に用意してあった椅子に座る


「オーリ。お前、行くのか?」

「行かなきゃ、世界滅亡だから。行くよ。」

「そうか……母ちゃんから聞いた。勇者がいないんだって?」

「うん。だから、勇者の変わりを育てないとならない。」

「…検討はついているのか?」


俺は首を横に振る。


「魔王討伐なんだ。死ぬかもしれない。そんな簡単に見つからないよ。」

「……父ちゃんじゃダメか?」

「あなた!!」

「父さんには家にいてほしい。」

「自分の子供を喜んで死線に送り出す、そんな親がいるわけないだろ!」


父さんはそう言うと同時に机を叩いた。

父さんの頬を涙が流れる。


「なんでお前なんだ。なんで……」

「ごめん、父さん。」

「いや、お前が悪いわけじゃない。悪いわけじゃない…」


前世の時も親不孝をしたと思ったけど、今回もまた親不孝をしてしまった。

でも、俺だって死にに行くわけじゃない。絶対に生きて帰ってくる。だから、


「父さん。生きて帰ってくるから。だから、俺が女神様から言われている、魔王討伐以外の案件に協力してくれない、かな?」


俺は二人に女神様からのお願いをそのまま話した。

何故このような状況になっているのか、その状況を少しでも変えるためには何をすべきなのか。


「なるほどな。神様達から見たら、俺らは怠けていたって判断なわけか…」


説明しているうちに、父さんは冷静になったみたいだ。


「なんて評価の仕方だい!まぁ、平和ボケといわれりゃその通りなんだろうけど。」


母さんも母さんで理解はしてくれたみたいだ。


「それで父ちゃんと母ちゃんを強化して、その『スキル』っちゅうのを与えるわけだな?」

「まぁそうだね。だから、今から二人には俺のパーティに入ってほしいんだ。いいかな?」

「おう!父ちゃんは問題ないぞ。」

「母ちゃんも協力するさね。」


『キースとマリエラがパーティに参加しました』


「ありがとう。パーティに参加できたみたいだ。それじゃ、二人の希望を聞いておきたいんだけど、いいかな?」

「希望?」

「なんのこっちゃね?」

「今、父さんは農夫、母さんは平民だよね。なりたいジョブとか、こんな事ができたら嬉しいなってことがあったら教えてほしいんだ。」


本人が希望してない事を与えても、多分『貢献度』は上がらない。本人が十全にスキルを使う事が重要なんじゃないかと俺は思っている。


「んじゃ、俺はもっと農作業が上手くなりたいし、上手い作物を作りたいな!」

「母ちゃんは料理とか裁縫とか、その辺が上手くなりたいもんだね。やってみたい職業は商いかね。」

「分かった。その方向で明日から強化するね。」


とりあえずはこれで少しでも『貢献度』を稼がなきゃいけない。魔王復活を遅らせつつ、今後の方針も考えることにしよう。


家族会議も終わりだと思って席を立とうとした時、父さんが「もう一人、話さなきゃいけない子がいるだろ?」と言ってきた。


「…いつか話すよ。そう約束したし。」

「う〜ん…いるんだよ。そこに。」


父さんが指さした先にリーネがいた。


「えっと…こんばんは。どうしたの?」

「さっきの話ってホント?」

「…う〜ん。どの話かな?」

「最初から全部、かな?」


この両親は〜〜!!!

居るなら居るって最初に言ってくれたって良いのではないだろうか。リーネの後ろには、リーネの両親もいるし…

家族会議って何よ?


「話は聞かせてもらったよ、オーリ君。」


リーネのお父さんのオブライエさん。村の薬師であり、純エルフ。


「リーネが心配しちゃってね。話、聞いちゃった。」


悪戯が成功した子供のように、てへっと笑顔を見せてくれるのは、リーネのお母さんのスズさん。


「私達家族も協力するよ。是非パーティに入れてくれ。」


『リーネ、オブライエ、スズがパーティに加入しました。』


「オーリ。私、言ったよね。ずっと側に居るって。だから、私に魔王を討伐させて!」

「えぇ〜!!いやいや。リーネは《薬師》になったんじゃないの?夢だったじゃん。」

「なんかね、オーリに嫌な予感がしたから、私、《薬師》じゃないんだよ?」

「…えっと…何になったの?」

「私がなったのはね…」


《精霊術師》!!!

もしよかったら「いいね」、「感想」をお願いいたします。誤字・脱字は発見次第訂正をいたします。


登場人物早見表


○オーリ(小松 毅)

この物語の主人公

年齢 7歳 人族

ジョブ ①導き手②使徒③剣士

∟○キース

 オーリの父親。農家

 年齢 34歳 人族

 ジョブ 農夫

∟○マリエラ

 オーリの母親。専業主婦

 年齢 29歳 人族

 ジョブ 平民

∟○スイレン

 オーリの妹

 年齢 3歳 人族

 ジョブ 未設定


リーネ

この物語のヒロイン

年齢 7歳 ハーフエルフ

ジョブ 精霊術師

∟○オブライエ

 リーネの父親

 年齢 254歳 エルフ

 ジョブ 薬師

∟○スズ

 リーネの母親

 年齢 27歳 人族

 ジョブ 薬師


○アストラネ=エレネスト

教会に所属する人族

年齢 24歳 独身

ジョブ 僧侶


○シグルス

この世界を担当している女神

年齢 ??? 神族

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