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第十四話 

ストレインに来て2日目の朝。

今日は朝からアストラネさんと教会に行くのが最優先となる。

昨日と同じように朝食を食べに下に下りると、他の3人は既に朝食を食べ始めていた。


「おはよう、オーリ。」

「おはようございます、オーリさん。」


ベアトリスさんだけはまだ眠いのか、手を上げて挨拶してきた。

俺も着席しつつ、近くの給仕さんに朝食をお願いする。


皆集まっているので、今日の予定を話す。

まずは教会。

目的はアストラネさんの上位職要件であるハイヒールの習得だ。

ただ、それ以降については今のところ決まっていない。

俺とアストラネさんの武器は結局、修理となってしまった。

新しい武器を買うにしても、昨日見て回った感じでは、これと言って引かれるものがなかった。

ミスリルの剣とか、RPGでは良く出てくる鉱石系の武器もあったのだが、何というかイマイチだったのだ。

見た目はちゃんと武器なのだが、性能は本来ならもっと高いはずの物が、性能を活かしきれていない、そんな感じを受けた。

この辺がスキルを持たない者によるものだとしたら、早急に鍛冶屋関係の人材も育てなければならない。

ただ、本人が売っているわけではないので、確認のしようがないのだ。


そんなわけで、俺とアストラネさんは武器を買わずにいる。

明日には新しい武器も手に入るし、それを見てからでも遅くないという結論に至った。

なので、教会の後、何がしたいかを皆に聞こうと言うわけだ。


「私はダンジョン!オーリは休んでていいよ。」

「私もダンジョンに行きたいですね。武器がなくとも、魔法でどうにかします。」

「私も2人と同じかな。新しい武器の感覚を確かめたいし。」


と、ベアトリスさんは昨日買ったのだろう腰に差している短剣を撫でる。

それにしても、全会一致でダンジョンとは…

格闘系のスキルを取れば、肉弾戦を挑めるかな?


全会一致で決まってしまったものはしょうがないので、とりあえず朝食を食べ終わった俺達は教会に向かった。


朝早い時間のため、教会には人が少ない。

そんな教会の中を俺達はアストラネさんの先導で中庭へと進む。

教会の中庭に出ると、そこにはラーマさんの姿があった。

ラーマさんは俺たちが来たのを確認すると、背を向けある建物に歩いていくので、俺達もついていく。

辿り着いた建物は、教会が管理している療養所だ。

ここには冒険や病、呪い等、教会の治癒魔法を求めてやってきた、もしくは保護した人の中で、特に重症であり継続的な治療が必要な人が入院させられている施設だそうだ。

その施設の中をラーマさんは進み、ある病室の前で立ち止まった。


「この病室にいるのは、先日奴隷として売買されそうになっていた者の部屋です。元冒険者だったのですが、魔物に右足を切断され、冒険者を引退したそうです。ただ、実家の借金を冒険者の稼ぎで返済していたところの事故だったので、自身を売り、借金返済に充てたそうです。その事故の際に適切な処置をしてなかったために、衰弱し、奴隷商から保護を依頼されたのです。」

「そんな個人情報、俺達に教えてもいいんですか?」

「先に説明しておかないと、かなり衝撃的なことを目の当たりにするので、事前に説明したまでですよ。」


これ以上の説明は終わりというように、ラーマさんはその部屋へと入っていった。

俺達も習って部屋に入るとそこにいたのは、かなり痩せこけた性別すらも分からない人様の何かだった。

ラーマさんはその人の隣まで歩を進めると、杖を出し、呪文の詠唱を始めた。


(あとは、アストラネさんがかいせきできるかどうか、だな)


呪文の詠唱を終え、ハイヒールがその患者を癒す。

患者はハイヒールが聞いたのが、少し楽になったようにも言える。


「これがハイヒールです。アストラネ、これでいいですか?」

「はい。ありがとうございます。」


部屋を出るとラーマさんはこの後もを続けるとのことで、俺達とはここでお別れとなった。

アストラネさんは、さっき見たハイヒールを解析・再現しようとしているのか、ラーマさんと別れてから独り言をブツブツとつぶやいている。


「どう?再現できそう?」

「できると思います。試しても?」


俺が頷くと、アストラネさんはさっき出てきた部屋に入り、例の患者にハイヒールを施す。

2回目のハイヒールの影響なのか、それともアストラネさんの回復魔法がよく効いたのか、患者の顔色が少し良くなった。

俺は念のため、アストラネさんをステータス鑑定し、習得したかどうかを確認する。


「うん。無事に習得できている。おめでとう。」


とりあえず、この街であわよくば達成したかったものが達成されたのだ。


▲▲▲▲▲▲


その後俺達は、岩のダンジョンに潜ることにした。

今日は6階からのスタートである。

6階からはリトルでない、普通のゴーレムが出現した。

ここでRPGおなじみのミスリルとかだったら喜べたものの、アースゴーレムが相手とか、ドロップ品が渋いダンジョンである。

しかも、今日は前衛をしていた俺が武器なしなので、昨日に比べるとかなり戦力ダウンした状態である。

なので、前衛はベアトリスさんが受けもち、俺は遊撃として前衛に出ないでいる。

朝考えた格闘系スキルの習得は、今更習得したところでなのと、そもそも物理が効きにくいゴーレム相手に格闘系はナンセンスだと考え直し、習得を見送った。


6階のボス部屋まで到達できずに昼を迎えたので、俺達は一度ダンジョンから中央広場へと戻ってきた。

前衛が一枚欠けている状態で、さらに耐久値の高い通常ゴーレムとなので、一度皆で話し合いをしたかったというのもある。

そんなわけで、俺達は手頃なお店に入り昼食を食べているところだ。

リーナとベアトリスさんはステーキ、アストラネさんはパスタ、俺はサンドイッチだ。


「俺が前衛にいないとやっぱりなかなか進まないけど、このまま午後もダンジョンに行く?」

「そうですね…あまり6階は旨みがないので、次の階層に進みたいところですけど…」

「…私の攻撃じゃなかなかダメージ与えられなくてごめんね…」

「いえ、相手も耐久値が高いですし、しょうがありません。やはりオーリさんに前に出てもらうのが一番ですね。」

「…武器を買うかぁ…」


俺としても6階はさっさと突破したい。

6階に今のまま挑むのであれば、5階でリトルを狩り続ける方がまだ旨みはある。

あとは…


「…俺以外の前衛をいれるか、か」


俺が発した言葉に皆反応してしまった。

ベアトリスさんの加入で前衛が増えたが、ジョブがスカウトのため手数で勝負するタイプだ。

そうなると、ゴーレムのような耐久力がある相手だとかなり不利になってしまう。

俺は魔王討伐に同行で期待となると、強力な一撃を持つ前衛はやっぱりほしいところなのだ。


「誰か候補はいるのですか?」


アストラネさんが痛いところついてきた。

ただ、考えていたことがある。


「俺としては強要しないで魔王討伐に協力してくれる仲間がいいんだけど。とはいえ、今の皆がかなり成長した後に追加加入となると、かなり実力差が出てくると思うんだ。それだと連携もうまくいかないし、逆に皆に合わせると追加加入した人が危ない目に合う。だから、ベアトリスさんも加入した今であれば、追加加入しやすいと思うんだ。それで、考えていたのが奴隷なんだけど…」


そう。初日に街を観光したときにあった奴隷商。

あまり気は進まないが、このパーティを裏切ることはない。

そういった面では俺はありな選択だと思っている。

ただし、本人に魔王討伐を強要することになるので、それだけが気がかりではあるが…

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