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第十一話 お約束と初ダンジョン

あまり寝れなかったのは久々だ。

まだ公務員だった頃、予算編成の都合で夜中まで書類を集め提出し、終電をすぎることもしばしばなので、タクシーで家に帰り、着いたら出勤する2時間前とか…

それと同じぐらい、今日は寝れなかった。


原因はベアトリスさん。本人は悪気なく答えたんだろうけど、その後のアストラネさんとの話し合いを考えてもう少し言い回しを考えてほしかった。


ただ、俺達のパーティ的には嬉しい人材であることは確かだと、アストラネさんとの話し合いでも結論が出たように、今日のダンジョン攻略で相性や適正を見る予定だ。


ベアトリスさんのステータス鑑定はまだしていないが、ステータス差は明らかなので、そこは追々強化していくしかないだろう。

ステータス鑑定もやろうと思えば出来るのだが、本人の了承を得てからの方が、やっぱりいい。


頭も寝不足でぼーっとしていたのが、覚醒してきたので、レーネとアストラネさんが待つ1階に降りてみる。


「おはよう、オーリ!遅いね。」

「おはようございます、オーリさん。」


案の定、2人は起きて既に朝食を食べていた。

パンにウインナー、スクランブルエッグと日本でもよく見た組み合わせだ。こういったところは世界共通なのかもしれない。


「おはよう。2人とも早いね。今日はまず予定通り、ストレインのギルドに行くよ。ソフィアさんに挨拶しとくよう言われてるからね。」


俺は2人のいるテーブルに座りながら、近くにいた給仕さんに朝食をオーダーする。


「その後はどうするの?」

「時間があれば岩のダンジョンに挑みたい、かな。」

「りょーかい!」


リーネはダンジョンに少なからず興味があったようだし、俺としても経験しておきたいところだ。

ただ、事前情報にない、もっと良さげなダンジョンがあればそっちに行くことは考えている。


「アストラネさんは何かある?」

「今のところはないですね。昨日の方、ベアトリスさんの実力がどの程度か、そのが気になるぐらいでしょうか。」

「それじゃ、食べ終わったら行動開始で。」

「「はーい!」」


▲▲▲▲▲▲


昨日、一度訪れたものの入るのを止めたストレインのギルド。

朝一番ではないため、クエストの受注が終わったパーティがいなくなっているので、そこそこの人数がいる程度だ。


(この視線…なんか嫌な感じがするな…お決まりのあれか?)


俺達がギルドに入ってから、色んな感情が籠もった視線を残っている人達から向けられている。

好意的な視線もあるにはあるが、邪な視線が多いように感じる。

奥の方ではヒソヒソ話もしているし、何とも居心地が悪い。


「さっさと挨拶して出ようか。」

「そうですね。ここまでとは。」


ソフィアさんに言われた通り、まずは受付に冒険者証を渡して、後一日、ここに居ることを告げる。

流石にギルドの受付さんは表情に出すことなく、冒険者証を受け取り、俺達の現状の確認をしてきた。


「現状は、護衛クエストの最中ですね。道中は問題ありませんでしたか?」

「特段、魔物・魔獣に襲われることなく、ここまで来れました。」

「報告ありがとうございます。明後日の帰りもどうぞお気をつけて。」


これでこのギルドでやるべきことは終わった。

2人に「出よう」と目線を投げると、茶髪ロン毛の細身なお兄さんが進路を遮ってきた。

ここで騒いでも面倒なだけなので、避けて通ろうとしてもしつこく遮ってくるので、流石に頭にきてしまった。


「何か御用ですか?」

「子供がこんなところに何の用だ?」

「冒険者として護衛クエストの行きの報告をしただけだ。邪魔だからどいてくれ。」


たぶんこれはお約束かなと思ったので、リーネとアストラネさんに目配せして、後ろに下がらせる。


「こんな子供が冒険者だって?どう見ても冒険者証貰えない年齢だろ。どんな裏取引したんだ?そもそも冒険者として先輩の俺が道を譲る必要なんてないだろ?」

「俺はここのギルドにたまたま寄っただけだし、正当な理由で冒険者証は受け取ってる。先輩後輩はこのギルド所属のヤツにだけ言え。」

「入ってきたところから生意気そうなガキだと思っていたが、やっぱりか。少し付き合えよ。」


あぁ。こうなるのね。なんて面倒くさい。

俺はアストラネさんに目配せすると、頷いて返されたので準備に問題ないことを確認する。


「そしたら、地下の訓練所でいいですか?一応許可もとってますし。」

「あぁ。どこでもいいぜ。」


周りもワラワラと立ち上がってる様子からするに、これを待っていたんだろうな。

さっさと終わらせて、ダンジョンに行きたい…


▲▲▲▲▲▲


地下の訓練所は観客席と中央の舞台で構成されたものだった。

通常であれば、冒険者ランクの昇格試験で使う場所なのだが、訓練所が使われてなく、かつ、事前に使用を申し出ていれば使うこともできる。


「冒険者ってもんを教えてやるからさっさと来いよ。土下座して謝らせてやる。」


腰から自慢の剣を抜きワンワン煩いチャラ男君の事は気にせずに、俺も舞台に上がる。

さっきまでギルド内でこっちを見ていた人達もほぼ、観客席に着いたようだ。


「降参したらそこまで、でいいですよね?」

「あぁ、好きにしたらいいさ。」

「コインを投げますので、地面に着いたら開始で。」


こんな茶番に付き合う気は毛頭ないので、さっさと終わらせる。初撃で決める。それだけだ。

相手も了承したみたいなので、俺はコインを空中に弾く。


地面に着いたと同時に、俺は相手の懐まで入れた。


(…ま、ステータス低いし、反応はやっぱりできないのね。)


相手は青い顔になっているが、お構いなし。武器を使うと殺してしまう可能性もあるので、掌打を相手のみぞおちめがけて打ち込む。

俺の攻撃をモロに受けた相手は、訓練所の観客席前にある壁に激突して、気絶した。


(はい。おしまい。)


しーんと静まり帰った訓練所から、俺は足早に出ていくのだった。


▲▲▲▲▲▲


訓練所を出たところで、レーネ、アストラネさん、ベアトリスさんが待っていた。


「まさか一撃とは。お見逸れしました。」

「あの程度の相手なら、レーネやアストラネさんでも一撃ですよ。」


実際、ステータス鑑定をした結果、武器なしのレーネでも問題無く手加減して勝てる相手だったのだ。

俺がどれだけ力加減を工夫したか、分かって欲しい。


「とりあえずこれからダンジョンに行くんですが、来ますか?」

「もちろんです。どちらに向かいますか?」

「岩のダンジョンがマシかなと思っていますが、何か情報でも持ってます?」

「私の力も見てみたいと言うのであれば、岩の方が私としては楽ですね。この辺りは新しいダンジョンも出来ていませんし、特にこれといった情報はありませんよ。」


リーネとアストラネさんも頷いているので、そこに行くので全会一致だ。


「それで、いきなりなんですけど、道案内お願いできます?」

「あら、場所は知らないんですね。それでは、街の南端まで移動しましょうか。」


ベアトリスが居なかったらギルドで聞いてただろうけど、ね。詳しい人が仲間になるなら、その人に任せればいいわけだし。

俺達はこうして初ダンジョンに向けて出発した。


▲▲▲▲▲▲


「ここが岩ダンジョンの入口です。」


そういってベアトリスさんは、洞窟の入口を指さした。


ベアトリスさん曰く、この世界のダンジョンは下に下に広がっているらしい。

らしいと言うのは、下に下に階段が繋がっているものの、空間は魔導具で制御されていると仮説が立てられているので、実際には、下にダンジョンはないとされている。


また、ダンジョンから魔獣・魔物の類が出てくることはない。

これもまた、ダンジョンが魔導具であるとの仮定から、ダンジョンからダンジョン産の魔物・魔獣が出てしまうと消滅するとされている。

この仮定は昔の冒険者によって立証されたので、ダンジョン自体は安全なものという認識が広がっている。


ただ、ダンジョンの不思議としてダンジョンは成長すると仮定する説もあるそうだ。これも立証をしたと報告した研究者がいるとの事だが、立証不十分として信憑性がない話だそうだ。


(ま、聞いた限りはありえない話じゃなさそうだな。今はそんなことより、ダンジョン探検だな。)


「ダンジョンに入るときに、冒険者証の提示をそこにいる門番にしてくださいね。」

「わかった。それじゃ、初ダンジョン出発!」

「「お〜!」」


▲▲▲▲▲▲


「オーリ、1階は人多いよ?」

「オーリさん、次の階、行きませんか?」


2人が言うように、1階は歩けば冒険者に遭遇するぐらい、結構なパーティがこのフロアにいるようだ。


「初心者の狩り場ですからね。ほぼ毎日こんな感じです。」

「出てくる魔物はリトルアースゴーレム…次の階層に行くか。」


リトルアースゴーレムは、小さな土人形。よくアニメとかで見たゴーレムが子供の背丈位になった魔物だ。

相手してみて思ったのが、遅い・柔らかい・弱いの三拍子揃った初心者用の魔物だろう。

ベアトリスさんも軽く倒せる魔物だけに、ここに長くいる理由はない。


「アースゴーレムのレアドロップで、銅や鉄が落ちるので、それを求める初心者ってわけですね。装備が揃うまで、ここで頑張るのが、ストレインの冒険者の基本です。」

「なるほど。工賃分位は、この通常ドロップの粘土を売ればいいわけだ。」

「粘土は工芸品、お皿とか作るのに使いますし、そこそこ需要もあるんですよ。なので、冒険者もそこそこ苦労せず頑張れます。」


いきなり詰んでいる状況に比べれば、この方がいいんだろうな。

武器・防具も強くしても、ステータスが弱ければ意味がないのに、とは言わない。


「次の階に行くためには?」

「1階のフロアボスを倒す必要があります。」

「それじゃ、フロアボス討伐しますか。」


初日にして俺達は、1階を攻略することを決意したのだった。

もしよかったら「いいね」、「感想」をお願いいたします。誤字・脱字は発見次第訂正をいたします。


登場人物早見表

○オーリ(小松 毅)

この物語の主人公

年齢 7歳 人族

ジョブ ①導き手②使徒③剣士

∟○キース

 オーリの父親。農家

 年齢 34歳 人族

 ジョブ 農夫

∟○マリエラ

 オーリの母親。専業主婦

 年齢 29歳 人族

 ジョブ 平民

∟○スイレン

 オーリの妹

 年齢 3歳 人族

 ジョブ 未設定


リーネ

この物語のヒロイン

年齢 7歳 ハーフエルフ

ジョブ ①精霊術師②精霊召喚師

∟○オブライエ

 リーネの父親

 年齢 254歳 エルフ

 ジョブ 薬師

∟○スズ

 リーネの母親

 年齢 27歳 人族

 ジョブ ①村薬師②薬師


○アストラネ=エレネスト

教会に所属する人族。果たして第2ヒロインになれるのか…

年齢 24歳 独身

ジョブ ①僧侶②神官


○ベアトリス

ストレインの街で出会った夢魔。オーリに一目惚れ

年齢 ??? 独身

ジョブ スカウト


○シグルス

この世界を担当している女神

年齢 ??? 神族


○ソフィア

マカ村のギルド長代理

年齢 23歳 人族

ジョブ ①平民②文官③高等文官

∟○ギル

 マカ村のギルド専属解体屋

 年齢??? 獣人

∟○スティング

 マカ村のギルド専属解体屋兼料理場担当

 年齢 ??? 人族

∟○マリ

 マカ村のギルド受付担当

 年齢 ??? 獣人

∟○レグマ

 マカ村のギルド運搬担当

 年齢 34歳 獣人

 ジョブ ①戦士②拳闘士③重戦士④騎士

 ∟〇サヤ

 レグマの妹。ストレインで給士の仕事をしている

 年齢 ??? 獣人

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