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三限目の国語  作者: 理科実験室
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ぼくはどんなアトも見逃さない

結局ぼくはうんちするどころか、ズボンとパンツさえとさえ脱げないまま、個室の前で時間が流れた。前の時計を見るとあと二分だった。

これから仮に全部脱いでうんちして全部はくというようなことをやっていたら、次の3限にはもう間に合いそうもなかった。

そんなことを考えながら便器を見ていたとき、ぼくはその便器の後ろの水の流れる穴の付近に誰かがうんちしたあと流しきれないで残ってしまった小さな汚れを見つけた。この休み時間には誰も個室に入らなかったし、その前の休み時間も確かにこの汚れはなかった。

きっと、2限の授業中に「先生、おしっこ!」と言って教室を抜け出して、本当はうんちした子の残していったものだろう。

入学以来、いつの間にかこんなふうにぼくは休み時間に「男子児童便所」におしっこに行くたびに個室の方をさりげなく観察する習慣ができていた。それは、その休み時間の前の授業中に誰かがその個室でこっそりとウンコマンになったアトを探すためだった。

入学してはじめの頃は誰がその個室を使うんだろうなと気にかけながら、何気なく見ていただけだけど、やがてトイレットペーパーの切り方が前の休み時間と違ったり、だんだん減っていることに気付いた。先生が授業中にトイレにいくわけがないので、どこかのクラスの子がウンコマンになったアトであることは確実だった。

そうしたアトを何度か目撃するうちに、ぼくは自分が教室で教科書を読んだり字を書いたり計算をしている間に、この授業中の「男子児童便所」で誰か知らない子がウンコマンになっていることを確信した。ぼくはこの個室に残したアトを探す遊びをひそかに「ウンコマンはっけんごっこ」と名付け、自分一人の秘密の遊びとして楽しんだ。

ときどき確かに流し忘れのうんちは見つかることがあったが、ぼくの「ウンコマンはっけんごっこ」はそんなクラス中、いや学年中の男子が集まってくるような派手なものばかりでなく、もっと細かな「ウンコマン」が出現した証拠もまたぼくのひそかなターゲットだった。

トイレットペーパーの減り具合やそれを切った跡だけでなく、残っているニオイとか流し損ねて便器についたままになっているヨゴレとか、それらの前の休み時間との違いはみんな「ウンコマンはっけんごっこ」のターゲットとしてぼくは見逃さなかった。

これらは間違いなく授業中の時間の「男子児童便所」にウンコマンが現れた証拠だった。休み時間に個室のベージュのドアが閉まっているは見ないのに、授業中のウンコマンの証拠は不思議なことに本当によく見つかった。みんないつもは朝学校出るときにうんちをすませているよ、学校ではしないよ、という顔をしているけど、本当はしているんだ!

だからぼくは授業中時々いた「先生、おしっこ!」と言って席を立つ子がいたら必ず耳をすました。授業中、教室を出るとしたらそれが唯一の方法だった。

その後、たいてい「男子児童便所」に急いでいることが分かる廊下をパタパタと走る足音が聞こえるけど、足音が止まりバタンとあの個室のベージュのドアがしまる音が聞こえたらウンコマン発見!だった。そんな子は決まって帰りは「ぼくはおしっこだよ」という顔をして戻ってきて、先生に「トイレに行ってきました」と報告すると、何もなかったように授業を聞いていた。クラスのみんなも気にする様子はなかった。

でも、ぼくだけは知っていた。その子は本当はぼくたちが授業を受けている間に学校はしないうんちをおしっこというウソをついてまでするヒキョーでズルいウンコマンなんだ。しかもその子はうんちが出たばかりのおしりを平気でみんなの学校の椅子に乗せて授業を受けているんだ、汚ねーな。

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